鎮静歌-4
NHKマイルカップ(GⅠ 3歳限定 東京競馬場 芝1600m)はユリノアマゾンが直線一気の追い込みで圧勝。
日本ダービーでGⅠ3勝目を狙う。
これで3歳馬の有力所が日本ダービーに名を列ねた。
デビルカッターがシンガポールICを勝ちワールドツアー2勝目を飾ったころ、うちの牧場は種付けシーズンで忙しかった。
ファンタジア亡き後、牧場の繁殖牝馬の筆頭になったのはフォーリンレイン。重賞を制したドリームメーカーの母である為、評価が上がったのだ。
トウカイテイオーを付けた。
オークスをプリンセスプリンが制して迎えた翌週。
運命の日本ダービー当日を迎えた。
1番人気は皐月賞馬
ロンバルディア
2番人気
ファンタジスタ
3番人気
(外)ユリノアマゾン
4番人気
ドラゴンウイング
5番人気
ドリームメーカー
6番人気
フォークギア
壮絶な戦いが幕を開ける…!
日本ダービー(GⅠ 東京競馬場 2400m)。
日本中の競馬に携わる者が、この日の東京競馬場を最大の目標に日々苦難や逆境と戦っている。
ダービーと言う名のステータスに勝る栄誉や名声はないと言っても過言ではない。
その舞台に俺はやってきた。
馬主として…生産者として…そして新たな時代の証人になるべく。
そりゃもう落ち着かね~。
瑤子なんてのは堂々としたもんで、知り合いの馬主に挨拶にまわったりして。
俺はさっきから隅でプルプル震えちゃってる…。
春文が近づいてきた。となりにいかにもお嬢様な女性がいる。
春文が来月結婚する女だ。
一応これからご近所になるから挨拶はきちんとした。
だが、俺はこのお嬢様に心の声で一言添えた。
馬しかいない、なんにもない所だから覚悟して来い……と。
パドックが始まり俺は下見場に向かった。
瑤子は馬主席に残った。レース前にコナンに姿を見せられないからだ。
さっきから俺に絡んでくる龍田仁。こいつは意外と馬主に友達が少ない。知り合いの俺を見つけて尻尾を振って寄ってきた。
「どうだ~あの芦毛の素晴らしい馬体は?
気品に満ち溢れた風格はまさに華麗なる一族にふさわしく…」
こいつウゼェ~
「おっと?1頭牛が混ざってるな?
(係員に向かって)ちょっとキミ!早くあの牛を外に出してくれ!
ん?馬!?あ~良く見れば飛田の馬じゃないか~。」
むかつく…。
「いや~何を食わせばあんなに…」
喋り続ける龍田をシカトして俺は高橋氏に近づいた。
「ロンバルディアはいい出来ですね?」
俺が話しかけると
「やぁ飛田社長。ちょうどよかった。ちょっと相談があるんだ。また後日そちらに伺うよ。」
なんだろう相談って…。
その後も高橋氏と話をしていた。
ふと龍田の方を見ると一番隅で淋しげに立っていた。
一方、飛田雅樹をパドックに送りだした瑤子は馬主席でターフをひとり眺めていた。