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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン1 chapter6
51/364

序奏-3

3月一週。弥生賞 (GⅡ 皐月賞トライアル競走 中山競馬場 芝2000m)。

本番の皐月賞と同競馬場の同距離で行われるトライアルレース。

ファンタジスタは一番人気。ここまで3戦3勝の実績を見せている。

二番人気にはシンザン記念の勝ち馬フォークギア。


三番人気にはフサイチギャラン。



俺たち三人はいつものようにテレビの前だ。


『電撃の末脚ファンタジスタ!滝豊を背にターフに降臨しました!』


瑤子が言った。

「凄い綺麗な馬…」

たしかにファンタジスタの馬体はツヤがよく日差しに反射して光っている。


『各馬ゲートに入りました!


スタート!』


ファンタジスタはいつもの中団待機だ。


『フォークギアとファンタジスタが並んで馬群の中程にいます!

レースを引っ張るのはフサイチギャラン!』


「このフォークギアって馬は長くいい脚つかいよるんで注意ですわ」

宝田の解説は小坪さんより信頼できる。


『最終コーナー手前!フォークギアとファンタジスタが同時に動いた!

フサイチギャランが先頭で直線に入る!

これはフサイチギャランはキツイか!?

200mをきってフォークギアが先頭!ファンタジスタは半馬身遅れている!』


「こりゃフォークギアの方がプレッシャーですわ!」

と宝田解説員。


『ムチを入れる藤岡!フォークギア先頭!

このままいけるか!?

滝のムチはまだ入らない!』


まだか?早くかわせよ!


『さぁ残り100!ここで豊のムチが入った!

ファンタジスタがフォークギアを…かわした!

電撃炸裂!伸びているフォークギアをさらに上回る脚で一気にかわして2馬身差!

このスピードは並じゃない!』


しかし…いつもながらハラハラする…。

もっと派手に勝ってほしいもんだ…。



「ま、重賞2勝目って事で今日はパーっといきまひょ!」

「賛成!」


その夜、瑤子と宝田とバイトの二人とで居酒屋・純ちゃんでしこたま飲んだ。


3月三週、土曜日。若葉ステークス(OP 阪神競馬場 芝2000m)。

皐月賞トライアル競走。


一番人気はドラゴンウイング。2戦1勝。

前走ラジオNIKKEI杯を二着。精神面の成長も見られ一番人気に押された。安東勝己騎乗。


二番人気ドリームメーカー。2戦2勝。

デビューから2連勝で挑む。浦河美幸騎乗。




瑤子はいつものように阪神競馬場へ。


龍田は電話で勝利宣言を10回もしてきた。あいつ…うざい…。



テレビにドリームメーカーが映った時…俺と宝田は絶句した。

「社長…ドリームメーカーって…たしか栗毛でしたよね?」


はい…栗毛だったと思います…。


「社長…ドリームメーカーの体が赤いのは気のせいですか…?」


俺にもハッキリ赤に見えます…。


「社長…今日の競馬新聞に…ドリームメーカー【赤鹿毛】って書いてますが…」


初耳です…。



ドリームメーカーは毛色まで進化した…。

てか赤鹿毛って…いったい…。


『さぁ芦毛の逃亡者ドラゴンウイングが返し馬!今日はチャカついたところもなく落ち着いてます。


そして出てきました超ヘビー級の暴れ馬!赤い暴走列車ドリームメーカー!白毛に匹敵するプレミアな毛色!赤鹿毛!

覚醒された馬体から今日はどんな伝説を作ってくれるのか楽しみです!』



真っ赤なボディーのドリームメーカーはいつものようにレース前の儀式の如く、空に向かって吠えだした。


「ウホウホウホ!」

メス猿がたくさん寄ってきそうだ…。



アップで映るドリームメーカー。

なんて目をしているんだ…。まさに獣の目。草食動物の目じゃない。



『クラシックの有力馬ドラゴンウイングにドリームメーカーが挑みます!

16頭がゲートにおさまって…



スタートしました!』


好スタートしたドラゴンウイングとドリームメーカー。



『2頭が前に出る!競り合いになるか!?


ドラゴンウイングは抑えます!


ドリームメーカーはドラゴンウイングの3馬身前でレースを引っ張ります!』


ドラゴンウイングが抑えた…。


「こういう時の安東勝己は怖いでっせ…」

宝田が静かに呟いた。


『ドリームメーカー本能の赴くままに!先頭をひた走ります!


2馬身後ろにドラゴンウイング!

今日はじっくり攻めるか安東勝己!』


(大丈夫!ペースは乱れてない!本当に賢い馬だわ!)

浦河美幸は一見暴走馬にしか見えないこの馬に競馬を教わっていた。

(ここでも勝って、絶対皐月賞に出るわよ!…私は乗れないけど…)

浦河美幸は通算14勝なのでまだGⅠには出られない。


『レースも後半に入ります!ドリームメーカーは快調に先頭を走ります!

ドラゴンウイングはまだ動かない!』


突然、浦河美幸に見えない緊張が襲った。

(ドリームメーカーの雰囲気が変わった…なにかを警戒してる!?)


『さぁ第3コーナーを通過!後続が差を詰めてきた!

最終コーナー手前でドラゴンウイングが動いたぞ!』


安東勝己はここで勝負をかけてきた。


『さぁ直線に向いた!

ドラゴンウイングがドリームメーカーを捕まえるぞ!

ドラゴンウイングここでこの脚が使えるのか!?

安東のムチが入る!』


浦河美幸は焦った。

《乗っているだけ》の自分にできる事はドリームメーカーをドラゴンウイングに併せる事だけ。この馬にムチなんて意味がない。


浦河の誘導でドリームメーカーはドラゴンウイングに併せられた。


「ウガーーー!」


ドリームメーカーは叫びドラゴンウイングに食らいついた。


『2頭並んで200を通過!ドリームメーカーはちょっとキツイぞ!

ドラゴンウイングが前に出た!

しかしドリームメーカー離されない!


残り100!ドラゴンウイングにさらにムチが入る!

ドリームメーカーは1馬身遅れた!


ドラゴンウイング1着でゴール!


ドリームメーカー惜しくも破れた!しかし皐月賞への出走権は手に入れた!


ドラゴンウイング素晴らしいレースでした!本番に夢膨らみます!』


レース後、ポツンと立ち尽くすドリームメーカー。目線の先のドラゴンウイングにメンチをきっていた。


浦河がレース中感じた緊張感は、ドリームメーカーが初めて感じた危機感であった。


ドラゴンウイング

安東勝己騎手のコメント

『今日は八割程度。道中は抑えたが、特に不利には感じなかった』


龍田仁氏のコメント

『見たか!我が華麗なる一族の走りを!

1頭牛が走っていたが、目障りでしょうがない!』



ドリームメーカー

浦河美幸騎手のコメント

『敗因は私の未熟さです。』


武田調教師のコメント

『まだまだ本格化は先だ。現段階でのこの結果には満足している。

この敗戦は馬にとっていい刺激になったかもしれない。』



瑤子はいつものようにターフに降りてコナンを迎えにいった。

しかし今日はいつものように呼んでも帰ってこない。


(負けたのがショックだったのかしら…)


すでに瑤子もドリームメーカーを馬とは思っていないようだった。


「惜しかったな~」

俺はレース見終えて宝田に言った。


「いや、完敗ですわ。着差は1馬身ですけど、力の差はもっとありますな。もうちょっと肉体的な成長をせなあきませんわ。」



肉体的な成長って…まだデカくなれって事か?


「いや社長違いまっせ。あれ以上デカくなってまったら大変ですわ~」


そりゃそうだ。



これから本格化すればまだまだスピードがついてくる。

武田調教師の見解通り爆発的な勝負根性だけでは勝ち続けるのは難しいって事だ。



「まぁ皐月賞は楽しみですな~」


ファンタジスタとドリームメーカーが揃って出るんだ!

楽しみだ!



その後、瑤子から連絡でドリームメーカーは暴れる事なく馬運車に乗り込み栗東へ帰ったとの事。

負けた事を理解していると瑤子は言っていた。

そんなバカな…とはもう思わない。

ドリームメーカーは次の戦いへ復讐に燃えているのだろう。



ドリームメーカーは、まさに俺たちの夢となった。

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