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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン1 chapter6
49/364

序奏-1

年明け瑤子が帰ってきた。

久々に三人揃った飛田牧場で緊急ミーティングが開かれた。

ファンタジアを今年の出産を最後に繁殖を引退させる事に決まった。うちの牧場の功労馬としてゆっくり余生を過ごしてもらうためにファンタジア専用の厩舎を建てる事も決まった。

とにかく我が牧場の最高傑作となるディープインパクトとの仔を無事出産させる事が我々の最重要目標となった。



ドリームメーカーの次走が迫り、瑤子の機嫌もいい。


今年からまた繁殖牝馬が6頭増え、忙しくなりそうなのでアルバイトを二人雇った。

これで瑤子も気兼なくドリームメーカーの応援に行けるだろう。



牧場も活気づき、ビッグレースにうちの生産馬が走る…順風満帆に思えた。




ドリームメーカー第2戦目。

京都3歳500万下

芝2200m。一番人気。


村木は全治一ヶ月の怪我である為、この日も浦河美幸が鞍上を努める。


瑤子は京都で観戦。

俺と宝田はホースチャンネルだ。


パドックでは前回同様にイレ込んだ様子を見せるが浦河美幸を背にした瞬間、ガラリと雰囲気を変え戦う戦士の目となった。


ターフに出ると、全力でゲートの位置に疾走し、

「アウアウアウーー!」

と空に吠える。


俺はもうドリームメーカーがなにをしても驚かなくなっていた。


だってこいつは馬じゃない……

ドリームメーカーっていう新種の生き物なんだ。


『さぁ!荒ぶる魂ドリームメーカーの2戦目!全12頭枠入り完了…


スタートしました!』


…出遅れた!?

前走の好スタートが嘘のような出遅れ!


『これはドリームメーカー出遅れた!

2馬身遅れたシンガリスタートです!』


宝田は無言だ。

俺も驚いたりしない。


なぜならヤツはドリームメーカーだから…。


(うわ…かなり怒ってる…)

浦河美幸はゲートに入った時、わざと手綱を揺さぶりドリームメーカーの集中をそらし出遅れさせた。

武田調教師の指示である。


『出遅れたドリームメーカー!おっと浦河騎手、今回も立ち上がり馬を抑えている!』


(本当に大丈夫なのかしら?)

浦河美幸は武田の指示通りシンガリの位置で前に行こうとするドリームメーカーを力一杯抑えた。


レース前日に武田が浦河に言った事、

「あの馬は短距離では使えん。スピード勝負になったら600㎏の馬体は邪魔だ。

しかし中~長距離でも前走のような根性だけで勝負するのは、この先通用しない。

《我慢》する事を教えるわけじゃない。《レースに勝つ》事を教えるんだ。

常に先頭でなくちゃ気が収まらんあの馬に、思いっきりストレスを溜めてやれ。

脚を溜めるんじゃない。

《怒り》を溜めるんだ。


直線に入ったらビンビンに貼った弓矢のように、一気に爆発させてやれ。

まぁ明日のレースは負けてもかまわんから、直線に入るまではどんなに離されても絶対に手綱を緩めるな。」


(でもあんまり怒らせちゃうと、走る気なくしちゃわないかしら…?)


浦河美幸は疑問に思ったが、とにかく武田の指示通り直線に入るまでは手綱を抑える事にした。


『さぁドリームメーカーはシンガリで…暴れております!

先頭集団は1000mを通過!』


「ブホーーー!!」

ドリームメーカーが吠えた。超怒っている。


(もうちょっと…もうちょっとだから我慢して!)

浦河美幸も不安でたまらない。


「バウーーー!」

ドリームメーカーの怒りは頂点に達しようとしていた。


『先頭集団の11頭はほぼ団子状態!

最終コーナーを回って直線に入った!』


(さぁ!行くわよ!)

浦河美幸は手綱を緩めた。


「プヒーー!」

ドリームメーカーは雄叫びとともに頭を低くした。

『ドリームメーカー凄い脚だ!一気に先頭集団に詰めよった!』


(なんてパワーなの!?)

浦河美幸もプロの騎手である。しかしそのプロすら振り落とす勢いの加速をみせた。


ドリームメーカーは一直線に団子状態の馬群に突っ込んでいく。


(ダメ!!ぶつかる!)


「バーーー!」

なんとドリームメーカーの一吠えで脅えた前の馬が道を開けた。


(もうむちゃくちゃね…)


『残り200をきった!

ドリームメーカー馬群の真ん中を一気に追い込んでいく!』



『ウリリリーーリーーー!』


奇声を発しながら爆進するドリームメーカー。密集していた集団の真ん中に道ができていた。

『残り100!ドリームメーカー凄い脚だ!凄い脚だ!

迫力の馬体を堂々に、直線で11頭を一気に差し切って1着でゴール!2連勝です!』


(武田先生…たぶん普通に走らせた方がいいと思います…)

この馬にはレース展開など関係ないと浦河は思った。



向こう正面で立ち止まったドリームメーカー。

「ガウーーー!」

突然、騎手の浦河美幸を振り落とそうと暴れ始めた。

「ごめんなさい!ごめんなさい!もうしません!」

浦河は必死に謝罪していた。



しかしなにかを思い出したかのようにスタンド前に全力疾走。


もちろん…瑤子が待っていた。



武田調教師のコメント

『今日は後ろから行かせたが…意味がなかった。次からは本能のまま走らせる』



浦河騎手のコメント

『馬ってウリリリーーって鳴きますか?(意味不明)』



俺と宝田は握手。


テレビに映る、大はしゃぎの瑤子と、母親に甘えるドリームメーカーを笑顔で見ていた。


次走は若葉ステークスだ。

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