爆心-7
翌日、グランプリ有馬記念(GⅠ 中山競馬場 芝2500m)。
デビルカッターが断トツの1番人気。もちろん鞍上はペリア騎手。
2番人気はアドバイザシュート。滝豊騎乗。
3番人気イーグルショットと長部幸雄。
無敗の三冠馬vs古馬2強の争いとなった。
《ホースニュース年末特別号》
有馬記念…あまりにも圧倒的だった。
デビルカッターはアドバイザシュートとイーグルショットをまったく寄せつけず堂々の逃げ切り勝ち。
特に最終コーナーから直線への入り口で、一度並びかけたイーグルショットをさらに引き離し、逃げて尚伸びる走りは史上最強馬と名乗るにふさわしい貫禄であった。
そしてレース終了後、ダーリージャパンから来年のデビルカッターの海外プランが発表された。
その名も《ワールドツアー》。
ドバイシーマクラシック(ドバイ・メイダン競馬場 GⅠ 芝2400m)
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シンガポール航空インターナショナルカップ(GⅠ シンガポール・クランジ競馬場 2000m)
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サンクルー大賞(GⅠ フランス・サンクルー競馬場 芝2400m)
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キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GⅠ イギリス・アスコット競馬場)
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凱旋門賞(GⅠ フランス・ロンシャン競馬場 芝2400m)
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BCターフ(GⅠ アメリカ・ハリウッド競馬場 芝2400m)
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ジャパンカップ(GⅠ 東京競馬場 芝2400m)
世界中にあるダーリーグループ関連施設を拠点に、デビルカッターは世界制覇を目指す。
来年のクラシック有力馬の情報も入ってきている。
二歳チャンプとなったユリノアマゾンは、毎日杯からNHKマイルカップ、日本ダービーに進む予定だ。
ロンバルディアは共同通信杯からスプリングステークス。皐月賞を目指す。
ファンタジスタは弥生賞から皐月賞。
ドラゴンウイングは若葉ステークスから皐月賞へ。
もう1頭、注目すべき馬がいる。
飛田牧場生産、所有のドリームメーカーだ。
先日のデビュー戦の勝利は圧巻であった。
600㎏を超える超気性難の大型馬。しかしその瞳の奥には飛田牧場で育まれた愛溢れるエピソードがある。
当誌のインタビューで武田文吉調教師は、
「はじめは気性をなるだけ抑える矯正器具の使用を検討したが、騎手が股がった時の集中力は他馬の比じゃない。気難しい所はあるが矯正器具で封印してしまうのはもったいない爆発力がある。一気にその爆発力を開放させる方を選んだ」
と、ドリームメーカーの潜在能力の高さを語った。
次走は年明けの条件戦の予定。なんとかクラシックに間に合わせたいところだ。
年の瀬、俺は今日も牧場作業だ。
武田調教師から連絡があり、ドリームメーカーの次走は1月三週の京都3歳500万下2200mに決まった。そして必ず瑤子を京都に来させるようにとの事だ。もちろんそのつもりだよ。
だって瑤子はドリームメーカーにとって勝利の女神だから。
今年は雪が少ない…
親父…俺は今本当に幸せだよ…この牧場に俺を生んでくれてありがとう…
まるでドリームメーカーがレース前に空に向かって吠えたように、俺も雪降る空に呟いた…。
翌年ファンタジスタとドリームメーカーは激戦の中を走り始める。