終焉
病床の吉野善吉は夢を見ていた。
それは戦後、荒れ果てた大地を耕し開墾している自分の姿。
ひとりの男が近づいてくる。
「よう、飛田さん。」
善吉の挨拶に飛田賢一は軽く手を挙げた。
「善ちゃんどうだい?」
飛田は善吉の作業を手伝いにきたのだ。
「このあたりも火山灰の地層だから、うまく牧草が育つかわからんわ。」
善吉は頭をかきながら言った。
「うちもだよ。」
飛田もまた困り顔で返した。
しばらく二人で作業すると、善吉が静かに口を開いた。
「うまくいくのだろうか・・・。こんなところに牧場なんて・・・。」
飛田は善吉に駆け寄りこう言った。
「善ちゃん。夢やロマンじゃ食ってけない。だけど情熱だけは忘れずにがんばろう。いつか二人でここにでっかい日本一の牧場をつくろうじゃないか。」
目を覚ました吉野善吉は手を天井へと伸ばしつぶやいた。
「飛田さん、わしはうまくやれたのだろうか・・・でも情熱だけは忘れずに今日まで生きてきたよ。また・・・二人で・・・でっかい牧場をつくろう・・・。」
再び静かに目を閉じた巨星は、新しい情熱を持って天国へと旅立った。
血はめぐる
夢とロマンをのせて。
競馬小説ドリームメーカー 完