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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter7
354/364

Red Passion-4

『まず飛び出したのはブラックエンペラー!

続いてデビルマン!

人気のサザビーも前を伺う!

その外にセキトバ!

ドリームメーカーもいったいった!

さらにデビルマンも続く!

なんとなんと前6頭の逃げ比べとなった!


2番人気のシューティングレイはいつもの最後方にまで下げます!


さぁこれはスタートから大波乱の予感です!』


的矢はドリームメーカーを下げずに自由に行かせた。


的矢の【感触】の緩さを感じたドリームメーカーは、グングン前に出ていく。

『ここでドリームメーカーがブラックエンペラーを抜いて先頭に踊り出た!』


ドリームメーカーは本能で走る。

【自在脚質】と言えば聞こえはいいが、本来の走りは【ターゲットを狩る】ことに集中している。


この辺りが鞍上の的矢と共通しているのだ。

ドリームメーカーにとってマーク屋として名高い的矢のスキルがシンクロした初めての体験に、本能を解放させた走りがそこにあった。


『おっと珍しくドリームメーカーの大逃げ!

後続をグングン引き離します!』

『ドリームメーカーから5馬身離れてブラックエンペラー!

続いてデビルマン!

それを見る位置にサザビーが前を伺っています!』


デビルマン鞍上の茜はベストポジションにつけていた。

先行の位置で道中進み、直前入口で1~2番手につける。

デビルマンの得意とする戦法だ。


片やサザビー鞍上のキャスパルは決断を迫られていた。

前につける事で力を発揮するサザビーが少し控え目なポジションに落ち着いているのは予想外の展開であった。

一気に前に出たいがドリームメーカーが飛ばし過ぎている。

(しばらくこの位置で様子を見るか…)

キャスパルは手綱を絞った。


そのすぐ後方にセキトバが控えていた。

伊達は今日この東京競馬場にちびっこハウスの子供達が来ている事も知っていた。

それを思うと握る手綱にも力が入る。

伊達がちらりと後ろを見る。

最後方に見えるシューティングレイ。

(不気味だな…新之助はどこから追い出す?)

伊達は後方の強敵に警戒を強めた。

8

『ドリームメーカーさらに逃げる逃げる!!

その差を10馬身にまで広げて向こう正面に入ります!』

的矢は手綱をしごきさらに加速を促した。

これまで後方待機に徹底した騎乗であったが、このレースはいつもと違う策に出た。


先行位置にはデビルマンとサザビー。

後方にはシューティングレイとストライクドリームと強豪が揃っている。

ドリームメーカーが全盛期の頃ならば真っ向から勝負を挑んでいたが、さすがに今はそうもいかない。

(頼る武器はお前の勝負根性だけだな…。)

的矢は最後の直前勝負にすべてを賭ける逃げを選択したのだった。


ヤードバーズ鞍上の浦河美幸は中団馬群の中からドリームメーカーの大逃げを見ていた。

普段から暴君ぶりを発揮していたドリームメーカーだが、レースで我を失うことは決してない馬である。的矢の誘導による逃げなのが明らかだ。


(あの子が素直に騎手の指示に従うなんて…あれが的矢さんの強制力…すごいわ…)


美幸とドリームメーカーは長い付き合いだ。

ドリームメーカーが騎手の思惑通り走る馬ではない事を美幸は知っている。


【自分の技術でドリームメーカーを勝たせる】事が出来なかった美幸は、少しの嫉妬と大きな憧れを的矢に向けていた。


『ドリームメーカー10馬身のリードを保ったまま第三コーナー通過!

しかしデビルマンとサザビーが並んでペースを上げてきた!

内に入ったセキトバもそれに続く!

エクスキューションは三田崇の手が動いている!

さぁ~!後方からシューティングレイが動いた!

大欅の向こうでシューティングレイが最後尾から一気に位置を上げて7番手に!


レースは最終コーナーを周って直線へ向いたぁ!』

8

野田新之助はじっくり脚をためて我慢に徹した。

野田のスキルである【勝利への嗅覚】が最後尾でのギリギリ待機を選択させたのだ。

(いっくぞ~!)


シューティングレイの猛追撃が始まった。


『さあ逃げる逃げるドリームメーカー!!

しかし一気にサザビーとデビルマンが差を詰めるぞ!

セキトバも好位で脚を伸ばす!

ドリームメーカー5馬身のリードで残り400を切った!

すでに的矢のムチが飛んでいる!』


的矢は全力でドリームメーカーを追っていた。

ハイペースで飛ばしてきた結果、充分なリードを保ち直線に向くことができた。


しかし、勝負はここから。背後には強烈な末脚でライバルたちが迫ってくる。

東京競馬場の長い直線。ゴールはまだ遥か先である。


このレースで的矢はひとつの疑問をドリームメーカーに感じた。

それはドリームメーカーの持つ、独特な個性に対する疑問。

的矢は高らかにムチを振り上げた。

(どうやら、お前に必要なのは俺じゃないらしいな・・・

これで最後だドリームメーカー!勝つぞ!)

渾身の一発が打ち込まれた。

『さあ!!ドリームメーカーに的矢のムチ!

脚は衰えないぞ!


しかし内からセキトバが一気に差を詰める!

その差3馬身!


残り200を切って外からシューティングレイも凄い脚でやってきた!

サザビーもセキトバに併せて上がってくる!

デビルマンは遅れたーーーーー!


先頭はドリームメーカー!

しかしセキトバとサザビーが並びかける!


シューティングレイも並ぶぞ!


のこり100を切って4頭並んだー!!!』


キャスパルはセキトバを警戒しつつレースを進めてきた。

しかし前に粘る赤い巨漢馬の脅威の逃げ脚に追い出しのタイミングを見計らった。

しかも外から鬼のような脚でやってくるシューティングレイ。


サザビーにかわす力は残っていなかった。

(日本のレベルも捨てたものじゃないな・・・)

キャスパルは、極東の島国に新たなライバルを見つけた。


『先頭はドリームメーカー!!頭ひとつ前に出ている!

しかしセキトバがかわすか!?

外からシューティングレイ!!!!


3頭並んでゴール!


わずかにセキトバ!

セキトバがジャパンカップを制した!

2着はシューティングレイか!?

12歳馬ドリームメーカーは思い切った逃げで3着!

ドバイのサザビーは4着!

デビルマンは5着と敗れた!』


伊達直也は馬上で大きなガッツポーズを見せた。

今日この東京競馬場に来ている舞子や子供たちに見えるように。


初GⅠ制覇をジャパンカップで飾った人馬は有馬記念に進む。


日本競馬初の国際レースとして始まったジャパンカップ。


世界への扉を開いた名馬たちの記憶が今も甦る。


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