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稲妻-4
「乾杯!!」
飛田牧場でささやかな宴が始まった。なぜなら我が牧場は中央競馬での実に三年ぶりの勝利であったからだ。
宝田や瑤子はもちろん、春文や育成施設のスタッフも招いてBBQを催した。
春文がしんみりと語った。
「親父も照兄さんも克兄さんもダービーを勝ってるけど、僕の社来ホースクラブからはまだダービー馬を出してないんだ…ファンタジスタならきっと僕の念願を叶えてくれる…」
他人から見れば順風満帆に見える春文だが、俺とは次元の違うコンプレックスを持っているんだ…。
「春文~!今日は飲むぞ~!」
ファンタジスタはたくさんの人間の夢を背負って走っている。
来年のダービー…俺と春文が二人揃って表彰台に登る事を祈りながら酔いに狂っていた。
今夜は本当に…幸せな夜だ。
迎えたデイリー杯2歳ステークス(GⅡ)。
ユリノアマゾンは芝でも能力の高さを見せつけ四天王では最初に重賞を手に入れた。母親譲りの追い込みでの勝利だった。
次走は2歳王者決定戦、朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)。
そして秋華賞をモーニングカフェが勝ち、運命の菊花賞へと突入する。