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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter5
345/364

Beat Emotion-4

11

アメリカ競馬の王道と言えるダート路線の王者アルカポネ。

4月のドバイワールドカップではゾディアックに勝ち、その地位を不動にした。これによってダート王アルカポネは、なにがなんでも自国ダートレースでドバイに負けられない状況をまさにドバイの手によって作られてしまったのである。


その舞台はアメリカダートレースの最高峰【BCクラシック】。そしてドバイからの刺客はジオングとキャスパル・ダイク。


ドバイの描いたシナリオ通りの状況下にアルカポネはおかれてしまっていた。


このドバイが描いたシナリオにはひとつの陰謀が隠されていた。


競馬大国アメリカの地位を揺るがすには、最強馬を最高の舞台で叩きのめすという過剰な演出が必要だった。


『競馬世界一はアメリカではなくドバイである』と。


サラブレッドのブリーダーであり、世界一のブローカーのイメージが強いドバイを、より発展させた戦略に打ってでるには、己の国の国旗を掲げてレースに打ち勝つ事がその近道となる。


そしてそれはライバル国に対して強いプレッシャーを与える事ができるのだ。


その標的となったアルカポネだが、実力勝負となればそうは簡単に倒せる馬ではない。

アメリカ王道路線のキングはまさに世界競馬の頂に位置するのだ。


そのアルカポネ討伐にはるばるドバイからアメリカにやってきたジオング。父は英国ダービー馬ジオン。

欧州血統だがダート特性も強く、アメリカ・ダート路線でGI2連勝中だ。



BCクラシックのゲートに向かうジオングの鞍上で、キャスパルは不気味な笑みを浮かべながら輪乗りをしていた。


この空気を一番にプレッシャーと感じているのはアルカポネ鞍上のケント・テサーモであった。

百戦錬磨のジョッキーとて、なかなかこんな状況下で望むビッグレースはない。



各馬のゲート入りが始まり、ジオングが静かに入る姿を確認したテサーモは、少しの嫌悪を感じつつも気持ちを集中させアルカポネとともにおさまった。


12

ゲートが開いた瞬間、真っ先に先頭に踊り出たのはジオングだった。


キャスパルの手綱は一気にしごかれ加速を増し後続に5馬身の差をつけ逃げの手を打った。

過去のレース同様、

単騎逃げ切りの策である。


その後方、馬群の先頭でアルカポネが落ち着いた。


アルカポネは先行力を武器とし、好位でレースをつくる事ができる。


テサーモはキャスパルの姿を見据えつつアルカポネをなだめていた。



一方、キャスパルはこの大舞台のジオングの手応えに、父ジオンの面影を感じていた。


栄光の英国ダービー馬ジオン。

しかしその名は歴史の中に埋もれてしまっていた。

圧倒的な逃げ切りを見せ、キャスパルをダービージョッキーに導いたのにも関わらず…。


それはジオンが勝った前年のダービー馬インフェルノ、そして二年後のダービー馬ニュータイプというスターホースの存在がジオンの影を薄くしてしまったのだ。

世界を制圧したインフェルノと、欧州三冠のニュータイプ。


この狭間であることがジオンの不運であったのだ。


ジオンは英ダービー後、故障を発症し引退、ダーリーの期待を背負って種牡馬入りとなったが、ネームヴァリューの点で有力繁殖牝馬はダーリーが新導入したブレイブハートに譲る形となった。

しかし時代の影に埋もれる寸前でジオングが活躍。再び表舞台に名を現す事となったのだ。


キャスパルにも思い入れのある馬。逃げる手綱にも力が入る。


向う正面に入りすでに7馬身に広がった差をテサーモは居心地の悪さの中追っていた。

アルカポネがダート界最強と名乗る事になったのは2つの大きなターニングポイントがあった。

ひとつは昨年のベルモントステークスの勝利。ダービー馬ゾディアックが回避して『世代2番手争い』と揶揄されたレースであったが、その後古馬を一蹴するレースでBCクラッシクをも制覇。そして二つ目に、その勢いのままドバイワールドカップでゾディアックに勝利したことが、その地位を不動のものにしたのである。


絶対に負けてはならない・・・


このプレッシャーがテサーモの手綱を迷わせていた。


テサーモはひとつの決断を迫られていた。残り1000の標識を通過する一瞬。時間にして0.0001秒。この瞬間にテサーモの両腕は激しく動き出しジオングの追撃を開始した。



最終コーナーに差し掛かり一気に差を詰めたアルカポネ。

ジオングまでは2馬身まで迫っていた。

だがキャスパルはジオングにここで一息つかせて、アルカポネを引き付けていた。

もちろんテサーモも承知の上での仕掛けであり、近い位置から最後の勝負を賭けたかったのだ。


直線に入り2馬身変わらず、アルカポネが一気に加速をみせジオングに並びかけた。



キャスパルは並びかけてくるアルカポネを横目で一瞥したあと、高らかにムチを振り上げた。


打ち付けられたムチに反応したジオングはアルカポネの半馬身前に出て先頭を死守している。


ジオングの最大の武器は、最後の驚異的な粘り強さである。


必死に手綱をしごく二人の騎手。


後続はまったく置いていかれて観衆の視界にも入らない。


ジオングとアルカポネのマッチレースの如く2頭のまま半馬身の差で残り100Mを通過した。


ケント・テサーモが叫ぶ。

「キャスパル!次はこうはいかないからな!!」


キャスパルが応える。

「ケント、残念ながらこの半馬身は未来永劫変わる事はないだろう!」



1着でゴール板を駆け抜けたのはジオングだった。

うなだれるケント・テサーモ。


ドバイはシナリオ通り、競馬大国アメリカの最強馬を倒した。

この勝利が世界制覇の大きな布石になる。


ドバイにとって驚異な敵はアメリカのみであった。

パート1の先進国であるイギリスやフランスに対しても戦力的に自国が勝ると分析していたのだ。

世界中から集めた精鋭馬にこれ以上ない自信をもっているのだ。


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