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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter5
342/364

Beat Emotion-1

1

菊花賞(GI)

京都競馬場 芝3000m

クラシック3歳限定


『クラシック第3弾!

菊花賞がやってまいりました!


皐月賞はアルバトロス!

ダービーはストライクドリーム!


この菊花賞で世代最強馬が決まります!


本日1番人気はアルバトロス!

三田崇を背に2冠を狙います!


2番人気はシューティングレイ!皐月2着、ダービー3着!

もう負けられない有力馬!

鞍上は野田新之助!


3番人気はダービー馬ストライクドリーム!

安田富一は最後のクラシック!

ダービー馬の誇りにかけて!

いざ菊獲りへ!


4番人気クラウディハート!

NHKマイルカップの覇者!距離の延長は大丈夫か!山形茜も気合十分!


5番人気ストライカー!前走の神戸新聞杯を2着!ベテラン的矢均が手綱を握ります!


6番人気にドラゴンディール!中立英一は高らかに逃げ宣言!


7番人気はオーバードライブ!3歳ながら小倉記念を制した快速馬!遅れてきたイーグルショット産駒!鞍上は浦河美幸!


8番人気アドバイザアーロン!



以上16頭!』


2

『スタートしました!

まずは・・・行った行ったアルバトロス!皐月賞馬一気にハナに立った!

しかしドラゴンディールが外から交わして先頭へ!


続いてストライカー!


5番手にアドバイザアーロン!


クラウディハートはその後ろ!

その外にオーバードライブ!


ダービー馬ストライクドリームは12番手あたりか!?


そしてシューティングレイは最後方!


このような体勢で1周目のスタンド前を通過します!』


『向こう正面に入り先頭はドラゴンディール!

その2馬身後ろにアルバトロス!

さらに5馬身ほど開いてストライカーが馬群を引っ張る!

その後方にアドバイザアーロン!

クラウディハートは少し折り合いを欠いているか!?

オーバードライブが不気味に中団を追走!

ストライクドリームは外目に持ち出し前を伺う!

シューティングレイは全く動かず最後方!


残り1000を切った!』

3

野田新之助はシンガリでシューティングレイを宥めていた。

いつもの位置。

岡恭一郎が見ていた光景を野田も今見ている。


ジリ脚でいつも後方まで下がってしまうシューティングレイ。

しかし強烈な追い込み捲りが武器のシューティングレイにはベストポジションでもある。


のこり800mの標識を確認した野田は、追い出しを指示した。


『さあ!残り800!

ここでレースが一気に早くなります!

アルバトロスがドラゴンディールに並びかけ・・・交わして先頭に踊り出た!

それにストライカーが2馬身まで迫る!

4番手にオーバードライブ!

ストライクドリームはまだ後方!


さあ来たぞシューティングレイ!大外を一気に捲って7番手に!


残り600を切った!』

三田崇は計算通りのレース運びを展開していた。

最適なペースで周回し、最終コーナーで勝負を賭ける。

先行で押し切る馬の必勝パターンを理想のままに成したのだ。


しかし会心の位置取りで先頭に踊り出たアルバトロスの背で、自信の表情で最終コーナーを周るもう一人の騎手に三田崇は気づかない。


浦河美幸。

ターフの女帝はオーバードライブを早めに追い出し3番手まで押し上げていた。

4

『アルバトロスが先頭で直線へ向いた!

2馬身のリード!このまま逃げ切れるか!


2番手にストライカー!

しかしオーバードライブがそれを交わして2番手に上がる!


4番手にシューティングレイ!


クラウディハートも遅れて5番手に!

ストライクドリームは馬群でもがいている!


先頭はアルバトロス!

オーバードライブが一気に並んで残り400!


2頭並んで一歩も譲らず叩き合いだ!


それにシューティングレイが2馬身まで迫ってきた!


これは3頭の争い!


アルバトロスに三田のムチが入る!

オーバードライブも浦河のムチが飛ぶ!


シューティングレイが凄い脚でそれに加わったぞ!


3頭並んだ!

3頭並んだ!


200を切ったぞ!』


虎視眈々と前を狙っていたオーバードライブ。

イーグルショット産駒によく見られる自在性と融通性を強く持ったオーバードライブは、3月の遅いデビューから一気にオープンまで勝ち上がり、古馬相手に小倉記念を勝利。

トライアルを発熱で回避しての菊花賞出走となった。

父イーグルショット同様に比較的長い距離を得意とし、父の父スペシャルウィークの強烈な差脚も受け継いでいる


デビュー以来、手綱を握ってきた美幸はオーバードライブに強い可能性を感じていた。

いわゆる2強のアルバトロスとシューティングレイは中距離からクラシック・ディスタンスがベストと分析していた美幸は、クラシック・ディスタンスから長距離はオーバードライブの距離と確信していた。


すでにアルバトロスのクビ差前に出ている。


(あとは・・・!!)


美幸は外のシューティングレイに意識を移した。


『さぁ!残り200を切ってアルバトロスは少し遅れた!


オーバードライブが先頭!

しかし半馬身後方にはシューティングレイ!


レースは2頭に絞られた!』


(ちくしょう!)

三田崇は全身を悔しさで震わせた。

多少の距離の不安はあった。

そして前で力を押し切るアルバトロスには不向きな展開を、早めの追い出しで迫ってきたオーバードライブに作られてしまった。


(この大一番で美幸と新之助にまけるなんて・・・!!)

隣を駆け抜ける同期二人の影を、三田は見送ることしか出来なかった。

5

「はじめまして!岡恭一郎です!」

野田はこの土壇場で初めて岡と出会った頃を思い出していた。

屈託のない笑顔で挨拶にきた岡。

聞けば自分を目標にしていると言う。

世には三田崇、的矢均などの名実ある騎手がいるのにもかかわらず。

この日から、野田と岡の交流が始まった。


「あの・・・ひまわりちゃんと結婚させていただきたいのですが・・・。」

妹と付き合っているのは知っていた。野田は何度も実家に岡を招待していた。だから二人の距離が近づいていたことは野田にも原因がある。

いや、こうなることを望んでいたかもしれない。


「野田先輩、僕はあなたのような騎手になりたいんです。」


「野田先輩、今日は負けませんよ!」


人懐っこい岡にいつしか本当の弟のような思いを寄せていた。


野田はムチを振り上げた。


(岡くん!見ててくれよーーーーッ!!!)


振り上げたムチは渾身の力をこめ、シューティングレイに打ち込まれた。


『さぁ!オーバードライブが先頭!このままオーバードライブで決まりか!?


いや!?シューティングレイだ!


シューティングレイが一気にオーバードライブを捕らえた!


先頭はシューティングレイ!


クラシック最後の一冠はシューティングレイが1着!


野田新之助!見事に亡き岡恭一郎の夢を叶えました!


2着はオーバードライブ!

3着はアルバトロス!

4着クラウディハート!

5着にやっとストライクドリーム!


戦国クラシックの最後はシューティングレイです!』


レース後の各陣営

1着シューティングレイ

騎手、野田新之助

『最後はよく伸びてくれた。

亡き義弟にいい報告ができます。』

角井調教師

『どうしてもクラシックを勝たせたい馬だった。本当にいいレースだったね。』

次走、ジャパンカップ


2着オーバードライブ

騎手、浦河美幸

『悔しいですね。力では決して負けてない。今後に期待してください。』

次走、ステイヤーズステークス



3着アルバトロス

騎手、三田崇

『少し距離が長かったかな。

次は万全に整えて行きたい。』

次走、有馬記念


4着クラウディハート

騎手、山形茜

『距離が向かなかったかも。

次は適距離で勝負したい。』

次走、香港マイル


5着ストライクドリーム

騎手、安田富一

『直線でまったく手応えがなかった。敗因はとくにないね。』

次走、ジャパンカップ


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