Starting Over-12
「的矢よ、どうだった?」
ジョッキーズルームに帰ってきた的矢に武田が近寄ってきた。
「恐ろしい馬ですよ。
おそらく今日の敗因は私でしょう。
2着確保を選択してしまった時に手綱が甘くなった。
だけどヤツはあきらめなかった。
なんて馬だドリームメーカーは!?
最後のあの脚は今まで感じた事のない早さだった!
今も手足が震えてるよ・・・。」
的矢の興奮した口調に、武田は嬉しそうな表情で聞いていた。
「じゃあ・・次も頼めるな?」
武田の言葉に的矢は戸惑いを見せた。
「いや・・・ちょっと武田さん、それは無理だ。
ブラックエンペラーに先約がある。
本番はあっちだ。」
「まだ時間はあるさ。
じっくり考えろ。
面白いぞ~ドリームメーカーは。舞台が大きければ大きいほどそれは増す。
お前さんの騎手人生で最高の馬になるだろう。
ライスやグラワンよりもな・・・!」
そういうと武田は的矢の肩を軽く叩いて去っていった。
残された的矢は苦渋に満ちた表情でそれを見送った。
17
秋華賞(GI)
3歳牝馬限定
京都2000m
『さぁ!先頭は1番人気桜花賞馬セラ!
200を切って3番人気フライングスカイが先頭にたった!
これはフライングスカイで決まった!
デビルカッター産駒が今年もGI奪取!』
オークスで海外馬にタイトルを奪われた日本牝馬勢。
古馬の牝馬勢がいまいちパンチ力に欠ける現状、3歳牝馬に大きな期待がかけられた。
しかしその3歳クラシックの大一番であるオークスをドバイのハマーンカーンに奪われてしまった。
ドバイの躍進を止めるためには牝馬、牝系の強さを引き出す事が重要なのである。
世界の名血の集まる日本でこそできる大きな戦いであるだ。