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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter4
338/364

Starting Over-9

確実に進みゆく血統進化と革命。

その一方でテシオやテイラーが発してきた血の警告が現代にも届いている気がしてならない。


このままではサンデーサイレンスの偉大な血が閉塞してしまう。


今の日本競馬には限界点を越える新たな血が必要なのではないだろうか?


そして世界へサンデーサイレンス系の血を羽ばたかせるべきではないか…


「…と、僕は思うんですけど。」

宝田誠が、凱旋門賞の激戦を見終わった後、テシオとテイラーの話を飛田雅樹に聞かせた。


憮然顔の飛田は、

「だから?それがなんなの?」

と、ちょっとキレぎみに返答する。


「いや…だから…異系こそが…いや…なんて言うか…」

困る宝田。


「サンデーサイレンスの血が日本に多いから?

だからファンタジスタは日本から出されるって言うのか?」

怒りが増す飛田雅樹。


実はファンタジスタはイギリスに売却され、来春から名門ギャナレナ・スタリオンで供用される事が決定した。

「わずか6年の種付けで見切りつけるわけ?

ファンタジックやスピードオブライトを出しているにも関わらずだ!

同系のディープやスペシャルウィークは日本で生き残れて、海外GI馬を出したファンタジスタが出される理由がわからないね!」

もうおさまり切らない飛田。


「吉野会長も苦渋の決断やったと思いますで~。だからこそ筋を通してわざわざうちの牧場に出向いて社長に頭下げはったんやないですか~。

それにこの売却話は先方からのたっての希望で、別に見切りをつけたんとは違いまんがな~

欧州にはまだ有力なサンデー系はおらんから、まさにファンタジスタの血が必要とされとるんですよ~

サンデーサイレンス系は世界的に今がまさに旬やさかい、アメリカに行ったロンバルディアみたいに絶対に流行りまっせ~。

日本にいるより上質な牝馬が集まるに違いないでしょう。」

なだめるように宝田が言う。


「いや!納得できん!

そのうち…絶対に買い戻してやる!」

真っ赤な顔して怒りをあらわにする飛田。


宝田は、ため息をひとつこぼして、テシオとテイラーの話を長々とした事を後悔した。


10


10月2週。

東京競馬場で毎日王冠、京都競馬場で京都大賞典が行われる。


「美幸お姉さま!今日は負けませんよ!」

毎日王冠のゲート前で山形茜がデビルマン鞍上から挑発する。

「こっちだって!」

オメガフライトの鞍上から美幸も答える。


『さぁ!天皇賞に向かって!東京競馬場1800mGⅡ、毎日王冠・・・スタートしました!


まず飛び出したのは1番人気デビルマン!今日は積極的に前に出ます!

4番手あたりに2番人気スピードオブライト!鞍上は今日から乗り替りで松岡将史!

その2馬身後ろに3番人気3歳馬オメガフライト!


一気に早い流れとなりレースは直線へ!


先頭はデビルマン!

後続を引き離しにかかる!

スピードオブライトは2番手!


オメガフライトは馬群でもがいている!


デビルマンが1着でゴール!

2着はスピードオブライト!


オメガフライトはなんとか掲示板の5着!


昨年のグランプリホースが秋緒戦を勝利で飾りました!』


『本日もうひとつのGⅡレース、京都2400mの京都大賞典!


1番人気は3歳セン馬セキトバ!騎手は前走札幌記念からコンビを組む伊達直也!


2番人気はエクスキューション!

鞍上は三田崇!


3番人気は12歳馬ドリームメーカー!障害レースで海外重賞を勝って凱旋帰国を果たしました!

鞍上は本日から乗り替りでベテラン的矢均!

以上、12頭です!』


「ドリームメーカーですか・・・。」

レース1週間前に騎乗オファーを受けた的矢均。

ライスシャワーやグラスワンダーといった名馬に跨ったベテラン騎手だ。

昨年はブラックエンペラーに騎乗し、念願の日本ダービーを制した。


そのブラックエンペラーは、自身の手綱で先日のオールカマーを久々に勝利し復調を見せている。


「実はうちの村木が、持病の腰痛が悪化しまして、しばらく休養を余儀なくされまして。

的矢さんなら、うちのヤンチャ坊をお願いできると思うんスよ。」

原が少し上目遣いで的矢に懇願している。


「本番の天皇賞は乗れないよ。

それでよければ受けるよ。

前から興味ある馬ではあったからね。」

的矢の快諾を受け、ドリームメーカーの鞍上は決まった。

毎日王冠が終わった美幸は、モニターでドリームメーカーの姿を見てびっくりした。


ドリームメーカーの巨体に跨る的矢の姿。


村木と美幸以外の騎手を、頑なに拒んできたドリームメーカー。


的矢を背に、一段と落ち着いた気配でターフに現れた。


(よっぽど欧州で揉まれてきたのね。)


それをドリームメーカーの更なる成長ととらえた美幸は、少し寂しげな表情を浮かべていた。


ドリームメーカーの調教に初めてやってきた的矢は、まっすぐドリームメーカーの前に立ち、目を合わせた。


睨み合いのような一時の間合いの直後、的矢はスッとドリームメーカーに飛び乗った。


まるで金縛りにでもあったかのようにピクリとも動かないドリームメーカーのアブミにグッと力を入れた的矢。

それに促されドリームメーカーは一歩を踏み出し調教トラックに入っていった。


「な、なんか素直でスね・・・今日のドリームメーカーは。」

原の安堵の言葉に、武田が鼻で笑って答える。


「わしの言った通りだろ。

的矢は、わしら人間には物静かな優しいヤツに見えるが、馬に対してはかなり厳しい威厳を出しよる。

その気配がドリームメーカーには伝わったのだろう。


前々から的矢なら、ドリームメーカーに跨れると思ってはおったのだ。いや、それだけではなく主導権すら握れるのじゃないかってな。

わしが認める数少ない騎手の一人だ。

しかし・・・思った以上の効果だ。


見てみろ。あのドリームメーカーが、まるで普通の馬のように騎手に従っとるわい。」


穏やかな表情でドリームメーカーに跨る的矢。

少し戸惑いをみせるドリームメーカーの姿に、新たな可能性を感じた原と武田であった。


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