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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter3
328/364

東京優駿-6

12

「どけ!このチ○カス野郎!」

山形茜の怒鳴り声が馬群の内から聞こえてきた。

その対象は前をふさいでいるカスカベアクション鞍上の野田新之助。


2番手で最終コーナーを周ったが力尽きズルズル後退。

その後方にいたクラウディハートの進路を塞ぐ事態となった。

両脇にも挟まれたクラウディハートは身動きとれず、茜のストレスが卑猥な言葉として出たのだ。


ただでさえ位置取り悪く追い出しが遅れたクラウディハートだけに、この不利は致命的である。

もちろんこれは反則にはならないが怒りの矛先が野田にいくのは仕方がない。


まず1頭、有力馬が戦いの舞台から降りる羽目となった。


『先頭はアルバトロス!

しかしシューティングレイが2番手!その差1馬身!一気に追い込んできたぞ!

残りは200!

ここでアルバトロスにもムチが入った!

アルバトロスも脚を伸ばした!

1馬身が縮まらない!


さらに大外から1頭きている!?


黒い馬体!ストライクドリームだ!

安田富一とストライクドリームがシューティングレイの2馬身後方を凄まじい脚で追ってきた!』


直線入り口で解き放たれたストライクドリームは後方から3番手の位置から最速の脚で3番手まで上がってきていた。


4番手に脱落した美幸は風のような勢いで交わしていくストライクドリームに、レース中に感じていた異質なオーラの正体を見た。


(あの感じはこの馬だったのね・・!!

思い出したわ・・・

このオーラはニュータイプが発していたのにそっくり・・!

私がエプソムでギリギリまで押さえ込んだあのオーラだったんだわ・・!


まるでニュータイプが・・・帰ってきたみたい・・!)


自らが手綱を握りともに栄光を掴んだかつてのパートナーであるニュータイプ。その最後の息子の姿にゴーグルの下でうっすら涙を滲ませた美幸も、この瞬間、ダービーの舞台から降りた。


安田富一は道中、あくまでも『沈黙』を貫いた。

最後方で息を潜め、誰にも邪魔されない位置取りで最終コーナー入り口まで進めてきた。


追い出しを促した最終コーナー。

それまで溜められたストライクドリームのフラストレーションは凄まじい脚となり、数歩間で後方3番手まで上がった。


そこからシューティングレイにひたすらついていき、一気に13頭を交わし3番手まで追い込んできたのだ。

13

直線一気。


安田は当初の狙い通り、直線に全てを賭けたのだ。


だが本当の勝負はここから。

先頭のアルバトロスは粘り強い二つ目のギアを発揮し、シューティングレイも必死にそれに食らいつく伸びを見せている。


強豪2頭の凌ぎ合いに悠然と立ち向かうストライクドリームと安田の本当の戦いが始まった。

削除

安田富一は必死に追いながら前を行く2頭を見た。


(三田に岡か・・・。)


自分の息子ぐらい歳の離れた2人。

これまでの人生で『天才』や『名手』などと呼ばれる騎手とたくさん戦ってきた。


鹿戸、増沢、滝邦、菅原、長部、河内、原田、滝豊。


競馬の歴史に名を刻むジョッキー達と激闘を重ねて、安田は時代の波を常に乗り越えてきたのだ。


ダービーでの最先着は2着。

牝馬で挑んだシャイニングハートで差し込んだ。


40年にも及ぶ騎手人生でGIは3勝。

初のGI級制覇は菊花賞だった。

史上初の中央全競馬場重賞制覇達成と輝かしい記録があるが、

やはりローカル色の強い騎手である。


あと2頭・・・。


現代の『天才』三田崇。

おそらく次世代の『天才』岡恭一郎。


老練の騎手がムチを振り上げた時、時代を超越した時空の『脚』が炸裂した。


14

『さあ!残り200!

先頭はアルバトロス!

1馬身が縮まらないシューティングレイも必死で追っています!

さらに1馬身遅れてストライクドリーム!

この3頭が最後の戦いに残った!


残り100でアルバトロスがさらに脚を伸ばしたぞ!

2馬身突き放す!


シューティングレイは伸びてはいるが置いていかれた!


これはアルバトロスで決まりか!?


!?


ストライクドリームがシューティングレイをかわした!!


こ・・これは凄まじい脚だ!!!


一気にアルバトロスに並んだ!


2頭並んでゴーーーーール!!!


どっちだ!?


安田の手が挙がった!


ストライクドリームが1着!!


安田富一悲願のダービー制覇!!


63歳の鉄人が夢を叶えた!!!!!』


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