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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter3
327/364

東京優駿-5

9

第1コーナー初めのカーブで中団に控える2頭の鞍上。


「美幸お姉さま!

ちょっと位置取り前過ぎない!?

もっと後ろで待機しといてくださいよ!」

馬群の中でクラウディハート騎乗の茜が、オメガフライト騎乗の美幸に口撃をいれる。

「あなたこそそんな内に閉じ込められて大丈夫!?」

美幸も負けじと応戦する。


昨年の戦いの中でお互いを認め分かり合った二人も、ターフに入れば最大のライバルである事は変わらない。

そして舞台はダービーである。


前にアルバトロス、後ろにシューティングレイ。

飛び抜けた2頭に前後に挟まれた15頭は、常に逃げるアルバトロスを追いかけ、追い込みを図るシューティングレイの動向に注意を払わねばならない。


それは2人が騎乗する有力馬であっても同じで、茜はレース序盤にも関わらず内で挟まれてしまっている自分の位置取りに不安を感じていた。


一方、美幸は少し違った違和感に戸惑っていた。

(なにこの感じ・・!?

どの馬なの?

この無理やり押さえ込んだような気配は・・・?


以前に感じたことがあるわ。

どこで?どのレースで?


思い出せ・・・!


じゃなきゃ・・・手遅れになる・・・!!)

美幸はもう一頭の見えない敵を必死に探していた。


10

『各馬第2コーナーを周って向こう正面へ!

先頭のアルバトロスが5馬身リードで疾走しています!』


後方から2番手の位置で待機するシューティングレイ。

鞍上の岡に大きな葛藤が芽生えていた。


決して大きくないアルバトロスの逃げ。確実にペースをコントロールしている。


このまま行かせば逃げ切られてしまう。


ズブ脚のシューティングレイの位置取りはここで仕方がない。

ならば追い出す位置が重要となってくる。


第3コーナー入り口からの追い出しで捲りをかける策にあった岡は、焦りを感じていた。


その焦りから位置を少しずつ上げるか、このまま脚を溜め続けるか・・・。


岡の手綱は迷いの刻みを見せていた。


『残り1000を通過!

ここでスルスルっとオメガフライトが外から位置を上げて3番手、集団の先頭に踊り出た!


アルバトロスは第3コーナーに入って今だレースを引っ張ります!


ここでシューティングレイが動いた!

一気に差を詰め7番手!

レースが早くなりました!


2番手カスカベアクションは早くもムチが入った!


さあ最終コーナー!


先頭でアルバトロスが直線に入った!


カスカベアクションはその5馬身後方!

しかしオメガフライトがそれを交わして2番手に!


シューティングレイも4番手!外に持ち出した!


クラウディハートはやっと前があいて8番手か!?


ストライクドリームは後方から3番手!大外から届くか!?


東京の長い直線!残り500メートルを切りました!』


11

美幸は徐々に縮まっていくアルバトロスとの差により強い警戒心を覚えた。

2番手に上がりオメガフライトに一発目のムチを入れた時の手応えに、一つの懸念が現実となった事を確信したのだ。


2400mは充分にこなせる。しかしこの馬の本来の力を出せるのは1600~2000までの中距離。

父のクラシック・ディスタンス血統より母イーストフライトのマイルの強さがはっきり出ている。


(あとは地力の勝負ね・・・!)


美幸は自分の持つキャリアを必死に手繰りよせ、もう一度ムチを強く握った。


シューティングレイは岡の追い出しに即座に反応し、加速を強めた。

外に持ち出し先頭から8馬身遅れの7番手で直線に入った時、大観衆の大歓声に岡の身体は震えを感じた。


日本競馬最大の祭典であるダービー。その1番人気に推された己の馬に向けての大怒号であることがハッキリとわかった。


しっかり見えるアルバトロスの姿に、岡はピリピリと小刻みに震える右手を振り上げた。

握られたムチはシューティングレイに打ち下ろされ、手綱をしっかり握り必死に前を追った。


『残り400を切ってシューティングレイが一気にやってきた!

凄い脚だ!!!

外から3番手に!

アルバトロスまで3馬身だ!!』


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