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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter2
318/364

CROSS LOAD-3

5月1週京都競馬場

天皇賞(春)GⅠ 3200m

『伝統の淀3200mが、日本馬VS外国馬の闘いに湧いています!


本日の1番人気は南アフリカからの刺客ケルベロス!

昨年の南アフリカダービー馬が日本競馬界に殴り込みをしてきました!騎手はマイケル・ロジャース!


2番人気エクスキューション!昨年の菊花賞馬!騎手は主戦の藤島伸一!


3番人気ドバイからの遠征馬サザビー!

騎手はドバイの英雄キャスパル・ダイク!


4番人気ブラックエンペラー!昨年の日本ダービー馬!


5番人気ダークマリア!昨年のステイヤーズステークスと今年の阪神大賞典を制した5歳牝馬!

騎手は鉄人安田富一!

以上16頭!

スタートしました!』


各馬出遅れなくゲートを出た。


ブラックエンペラーがハナを切る。前走の日経賞を逃げ切った。デビューから手綱を握る的矢太とのコンビで昨年のダービーを制した。


8頭ほどの馬群を引っ張る先行策に出たのがダークマリア。4歳春から本格化し、昨年はエリザベス女王杯2着、ステイヤーズステークスで初重賞制覇し、今年に入って阪神大賞典も勝った長距離牝馬である。

三田崇が主戦であったが、このレースでは安田富一が手綱を握っている。


その馬群の中にケルベロスとサザビーがいた。何度もコーナーを回る日本の競馬場には、幾度の来日ですでに慣れているマイケル・ロジャース。アメリカを主戦場にしてきたキャスパル・ダイクも小回り競馬場はお手の物だ。


それを後方から見ているエクスキューション。ドバイシーマクラシックでは三田崇が手綱を握ったが、主戦は今日乗る藤島伸一。菊花賞馬の意地に賭けてここは落とせない。


様々な思惑を秘めた各馬は、一周目スタンド前を淡々と進んでいた。


「なるほど、日本の馬も底が知れている・・・」

キャスパルのつぶやきは悲観の色が強かった。

なによりケルベロスの存在に強い警戒をしていたキャスパルにとって、伏兵の弱さが目立つ日本勢に落胆していたのだ。

国際化となった天皇賞。しかし3200mといった特異なレースに、以前繁栄を誇った長距離血統すら対応できないほどスピード血統の【進化】が求められていた。


1000m通過してケルベロスが逃げるブラックエンペラーの1馬身後ろまで位置をあげていた。


5馬身後ろにダークマリア。

その後方にサザビー。


第三コーナー入り口でケルベロスが一気に先頭に踊りでた。

それを確認してサザビーも追い出し開始。


先頭ケルベロス、3馬身あいてサザビー。


後方の日本勢は完全に置いていかれる展開で第四コーナーに差し掛かった。

『サザビーが徐々に前に差を詰める!

3馬身リードを保ったままケルベロスが先頭で直線に入った!


先頭はケルベロス!


2番手サザビー!


その後方は8馬身ほど離れてダークマリア!


外からエクスキューションも4番手まで上がってきた!


しかしすでに前2頭の争い!


ケルベロスが先頭で200mを通過!

しかしサザビーも1馬身まで詰め寄る!

マイケル・ロジャースの激しいムチがケルベロスに飛んでいる!


外からサザビーが並びかける!

100を切った!


2頭並んだ!


頭一つサザビーが出ている!


キャスパル・ダイクはムチを振り上げる!


サザビーだ!


サザビーが1着!


天皇賞はドバイのサザビーが制しました!』


吉野照文が、日本の至宝とも言うべき天皇賞を外国馬に制圧された事実を知ったのはアメリカの地であった。日本でのGIシーズンに後ろ髪をひかれる思いでケンタッキー・ダービー視察へとやって来ていたのだ。


(1着にサザビー・・・2着にケルベロス・・・。3着エクスキューションは5馬身差・・・。

それにしても惨敗すぎる。)


これまで日本競馬界を牽引してきた社来ファームの若き総帥の苛立ちは爆発寸前であった。


先代である父の善吉はノーザンダンサーの血を日本の地盤にした生ける偉人である。

現在、病院のベッドでの生活を強いられている。

その病床の中、この残酷な結果をどう受け止めているかを思うと照文は胸が痛んだ。


吉野三兄弟などと、もてはやされてはいるが、三人かかっても親父には勝てない。


あの偉大な背中を見てきた照文の、社長就任時のプレッシャーと決意は並々ならぬものがあった。


次男の克己は社来グループのもうひとつの看板であるノーザンファーム社長。

三男の春文はクラブ法人『社来HC』の社長。


その頂点に照文は立っている。


それは日本競馬界の頂点と言ってもいい。


しかしその頂は世界から見れば、ただ極東の島国の大将にしかすぎない。


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