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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter1
313/364

翔べ!ドリームメーカー-11

18

ドバイ・ミーティングを締めくくるビッグレース。

AW(オールウェザー(2013年当時))2000mの国際GI

ドバイワールドカップ。


このレースの歴代覇者には名馬が名を連ねている。


『今年も豪華なメンバーがドバイに集結しました!


なんといってもアメリカから参戦の2頭!

昨年のケンタッキー・ダービー馬ゾディアック!

ベルモントステークスとBCクラシックを制したアルカポネ!

アメリカ競馬の頂上対決がドバイで実現です!


地元ドバイも実力馬を揃えてきました!

キャスパル・ダイク騎乗のサザビー!昨年のドバイ国内チャンプです!

カルマ・ザジ騎乗の牝馬マチルダ!昨年のBCディスタフ馬!


日本からも2頭参戦!

昨年のグランプリホース!有馬記念を制した5歳馬デビルマン!

騎手はもちろん山形茜!


昨年、3歳にしてジャパンカップ・ダートを逃げきったフュージョン!騎手は浦河美幸!


目の離せないレースが16頭で行われます!

削除

世界最高賞金レース、ドバイワールドカップ間もなくスタートです!』


ゾディアック鞍上バット・デイビーはアメリカジョッキー界の大御所的な存在で殿堂入りを果たしている。

彼の騎乗スタイルは独特で、じっくり構えて追い出しをギリギリまで我慢するのが特徴だ。

そのためファンや関係者をイライラさせる事が稀にあるが、騎乗馬の能力をキッチリ把握していて、ゴール直前での競り合いの中、頭ひとつ抜け出す勝ち方が彼の必勝パターンである。


対するアルカポネ鞍上ケント・テサーモも激戦の南カルフォルニア地域で名を挙げた米トップジョッキーだ。


「バット、全米が注目している2頭の対決だ。手を抜くなよ。」

ケント・テサーモがバット・デイビーに鞍上から話かけた。


「手なんて抜くものか。残念ながら楽に勝てる相手じゃないからね。」

デイビーはドバイ馬の1頭に視線を合わせた。


「ああ、僕もあの馬が気になっていたのだ。あの若い騎手もゴールデンシャヒーンで5着ながらいい騎乗していたよ。」

テサーモも同じ馬に視線を合わせた。


ドバイの伏兵馬ゼータに乗るカミュー・ジバンは20歳の新進気鋭の騎手だ。

「カミュー!邪魔するなよ!お前はただのペースメーカーだ!欲出したら承知しないぞ!」

マチルダの鞍上からカルマ・ザジがカミューに嫌味な一言を浴びせた。


「わかっていますよ!」

視線を合わせずカミューは返答した。


あくまでもこのレースでのドバイの主力はサザビーとマチルダの2頭である。

その他のドバイ馬は、この2頭のサポートに廻らなければならない。


カミューの乗るゼータも国内重賞を勝っているにもかかわらず、このサポート役の枠に入れられた。


「なんでカルマなんかをサポートしなくちゃいけないんだ!」

思わず口から出てしまった本音をキャスパルは聞いていた。

「カミュー、そう腐るな。

ドバイじゃ組織的な戦略は当たり前だ。他の国じゃそうそうある事じゃないがな。

この中東には、特にスポーツ関係には独特なルールがあるらしい。外から見ると異様な国だよ。」


キャスパルの優しい言葉に、逆にカミューの憤りが膨らんだ。

「そんなの・・・あなたたち大人の都合じゃないか!」


カミューの怒りを見たキャスパルは苦笑した。


(僕も若い頃、同じ台詞をはいて海外に飛び出したのだよ。)


キャスパルは若い騎手の息巻く姿を嬉しそうな顔で見ていた。


『各馬ゲートに入りました!


スタートしました!


勢い良く飛び出したのは日本のフュージョン!

浦河美幸が思い切りのいいスタートを見せました!

それについて行くドバイのゼータ!


2頭がグングン逃げる展開!


5馬身ほど離されてサザビー!

その外アルカポネ!

その後方にデビルマン!

ゾディアックは馬群の中程!

マチルダはさらに後方!


淡々とレースが進んでいきます!


先頭は2頭!フュージョンとゼータ!


後方はほぼ一塊で1000mを通過!』


美幸はフュージョンを思い切り行かせた。もちろんフュージョンのいつもの走りであるが、あえて制御はせず手綱を緩めた。

悔しいが力関係からみてフュージョンは1枚も2枚も落ちることは明らか。中途半端な逃げでは通用しない。

だがこの渾身の逃げについてくる馬がいた。ゼータだ。


(ドバイのペースメーカーね)

レースを壊し自国の馬に有利な環境をつくる駒。


しかし美幸も同じ思惑があった。自分が潰れても後ろにデビルマンが控えている。


レースを潰す目的の2頭が、グングンレースを引っ張っていた。

『さぁ!レースは最終コーナーを周って直線へ!

先頭はフュージョンとゼータ!


しかしアルカポネが一気に差をつめる!

サザビーはちょっと伸びあぐねている!

デビルマンとゾディアックが並んであがってきた!


残り400を切ってフュージョンは失速!

先頭ゼータ!アルカポネが並んだ!ゾディアックもきたぞ!内からマチルダが一気に切り込んでやってきた!

デビルマンは伸びない!

残り200を切って4頭が並んだ!


内で粘るゼータ!

その隣にマチルダ!

外にアメリカの2頭アルカポネとゾディアック!』


「よし!カミューよくやった!もういいぞ!」

マチルダ鞍上カルマがカミューに声をあげた。


その声を聞いたカミューは躊躇することなくゼータにムチを打ち込んだ。

「おい!?お前なにやってんだ!もういいから下がれ!」

カルマの怒号を完全に無視しカミューは必死に追っていた。


その後方では山形茜が苦渋の表情を浮かべていた。

デビルマンはしっかり伸びていた。しかし前が強すぎる。

(あの2頭バケモンだわ・・!)


その2頭ゾディアックとアルカポネも見えない駆け引きを繰り広げていた。

「やあミユキお疲れさま。」

5番手まで落ちてきた美幸にキャスパルが声をかけた。

「キャスパル、まだこんな所にいたの?」

皮肉まじりに美幸が言うと、

「ハハハ!今日は相手が悪い。それにサザビーはもっと長い方がいい。」

二人の視線の先の4頭は残り100を切っていた。


『アルカポネが先に前に出た!2番手にゾディアック!


内では2頭ドバイ同士の叩き合い!

しかしアルカポネがまだ先頭!ここでゾディアックがもう一度並びかけた!


ここでマチルダが脱落!

3番手ゼータ!


アルカポネとゾディアック!

2頭並んだままゴール!


一歩も譲らなかった2頭!

どちらが勝ったかわかりません!』


19

「カミュー!貴様ぁ!どういうつもりだぁ!」

カルマはそう言い放つとカミューの頬に拳を食らわせた。


倒れこむカミュー。

慌てて周りが止めに入る。

「貴様が邪魔しなければマチルダが勝っていたのだ!」

怒りの治まらないカルマは唾を飛ばしてカミューに迫る。


その間にキャスパルが割って入った。

「いい加減にしろカルマ!

競り合いに弱いマチルダを内に入れた時点で勝てるレースじゃなかった。

ドバイ最先着のカミューを褒めるべきだろう。」


キャスパルはそう言いながらカミューの手を取り起き上がらせた。


「キャスパル・・・!調子に乗るなよ!いつかこのカルマ様の前にひれ伏させてやる!」

そう吐き捨てたカルマはカミューの顔に唾を吐きかけ去っていった。


「大丈夫か?」

キャスパルの問いに、

「ほっといてくれ!」

カミューはキャスパルの腕を振り払った。


「ふっ・・・。さっきはいい逃げだったぞ。」

キャスパルはカミューの肩を叩きその場を去った。



『さぁ!結果が出ました!



1着はアルカポネ

2着ゾディアック

3着ゼータ

4着デビルマン

5着マチルダ

6着サザビー

10着フュージョン



アメリカ頂上対決はアルカポネに軍配があがりました!』


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