翔べ!ドリームメーカー-11
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ドバイ・ミーティングのセミファイナル【ドバイデューティーフリー】
芝1800mの国際GI。
日本から参戦のドラゴンアマゾン。騎手は野田新之助。
2年前のケンタッキー・ダービーを制したコンビが、昨年に続きドバイにやってきた。
ドバイワールドカップに参戦した昨年は惨敗。今年は芝のデューティーフリーでリベンジを狙う。
フランスからは、昨年の凱旋門賞馬ジャンヌダルクが参戦。ミシェル・シャルマンも初ドバイ遠征に意欲を見せたコメントを出していた。
しかしこの日一番の評価を受けたのがフランスのキングブライト。昨年の仏ダービー馬である。フランスNo1騎手オリバー・ぺリアが手綱を握る。
地元ドバイからは昨年のBCマイルを制したアレックス。キャスパル・ダイクがアメリカ時代から手綱を取り続けている。
ドイツからの刺客、昨年のムーランドロンシャン馬ブリッツクリークも騎手アンドレアス・シュタイナーとともに評価は高い。
「おい!新之助!
しっかり行けよ!」
前レースで惨敗に終わった三田崇が、野田新之助に声をかけた。
「おっおーい!絶対勝つぞ~~~~!」
いつもの気の抜けた返事に苛立つ三田。自分の結果が散々だっただけに憤りは増す。
この後のドバイワールドカップに出場する浦河美幸と山形茜に、いい流れでつなぐためにも野田にはがんばってもらわねばならない。
「いいか新之助。今年のドバイ・ミーティングは日本の実力を示しておかないと・・・」
三田の言葉を遮るように野田が口を開いた。
「わかっているよ三田くん。
まあ見ていて。しっかり結果だすから。」
いつもと違う野田の鋭い眼つきに、三田はそれ以上の言葉を
発せなかった。
『ドバイデューティーフリー・・・全14頭・・
スタートしました!
ブリッツクリークが積極的な先行策で前にでます!
続いて・・・おっとドラゴンアマゾンが2番手に!いつもの後方一気ではなく先行好位でレースを進めます!
その後方アレックス!
ダーリーUSA生産の4歳馬!
2歳3歳時にアメリカ芝マイル路線で活躍!今年ダーリーの聖地ドバイへ移籍してきました!
馬群の中程にジャンヌダルク!
その後ろにキングブライト!
さぁ!最初のコーナーに差しかかります!
先頭はブリッツクリーク!
ドイツの若武者シュタイナーが快調に逃がしております!
続いてドラゴンアマゾン!
昨年は国内GI安田記念を制し有馬記念を2着と好走しました!今日はこの位置!
野田新之助の手綱に注目です!
その後方アレックス!
さらに凱旋門馬ジャンヌダルクが徐々に上がってきた!
続いてキングブライトも一気にきた!
さぁ!直線!
強豪が前に集まってきました!
先頭はブリッツクリーク!
ドラゴンアマゾンはまだ動かない!
アレックスとジャンヌダルクが並んで2番手に上がる!
キングブライトもそれに加わるぞ!
残り400を切った!』
「ちょっと!!野田新之助なにやってんの!?」
ジョッキールームのモニターでレースを見ていた山形茜が怒号をあげる。
静かに見ている美幸の表情も渋い。
「あいつなんか考えあんのか!?」
三田崇も疑いを持ちはじめていた。
(新ちゃん・・・そこからどうする・・・?)
美幸は必死にこのレースをシミュレートしていた。
典型的な追い込み馬であるドラゴンアマゾンを先行させ、仕掛けのタイミングを遅らせる・・・。
そこにあるメリットとは!?
美幸の表情は渋いままであった。
『先頭はまだブリッツクリーク!
外からアレックス!さらに外ジャンヌダルク!
前が3頭になった!
残り200!
キングブライトが一気に大外から前を差した!
先頭はキングブライト!
!?
ドラゴンアマゾンが凄い脚でやってきた!!
ブリッツクリークは遅れたか!?
ドラゴンアマゾンがアレックスを差して3番手に!
先頭キングブライト、2番手ジャンヌダルクの差は1馬身!
その半馬身までドラゴンアマゾンが迫ってきた!』
「どういう事?」
山形茜が不思議そうな顔をしている。
「あいつ・・・これを狙っていたのか!!?」
三田は圧巻の表情だ。
「新ちゃんは一瞬に賭けたのね。あの脚を発動させるためにギリギリまで我慢して。長い追い込みをするのではなく前の位置から追い込んだのよ。
凄い・・・!!
新ちゃん凄いよ!」
美幸の視線はモニターに写る野田新之助とドラゴンアマゾンに釘付けである。
『ジャンヌダルクがキングブライトを差し返す!
ジャンヌダルクが先頭に踊り出た!
残り100!
ドラゴンアマゾンだ!
ドラゴンアマゾンが凄まじい脚でキングブライトを差して2番手に!
ジャンヌダルクか!?
ドラゴンアマゾンか!?
2頭並んだ!
2頭並んだ!
ドラゴンアマゾンだ!!!
ドラゴンアマゾンが頭ひとつリードしてゴール!
2着にジャンヌダルク!
3着にキングブライト!
4着にアレックス!
5着ブリッツクリーク!
世界の快速馬を相手に見事ドラゴンアマゾンが勝利しました!』
レースが終わって、超満員の観客スタンドに力強く握り拳を突き出す野田の姿を見て、美幸の心に火がついた。
「さぁ!茜ちゃん!
次は私たちの番よ!」
「はい!美幸お姉様!!!」
世界最高賞金を誇るドバイワールドカップのパドックへ、2人の撫子が歩き出した。