翔べ!ドリームメーカー-10
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そしてドバイシーマクラシック。
ヨーロッパ勢が多く参戦するこのレースの出走馬は素晴らしいラインナップとなった。
自国ドバイからは昨年まで英国を拠点に走ってきたプロミネンス。英国ダービー、愛国ダービー、キングジョージを制した昨年の活躍。鞍上はキャスパル・ダイクに替わった。
英国からはインターナショナル・ステークス馬ガーファンクル。鞍上のレスター・アゴットはドバイ初参戦となる。
ドバイ・ミーティングには珍しく南アフリカからの参戦馬ケルベロス。マイケル・ロジャースが手綱を握る。
アメリカからは、芝路線の兵ヘヴンズゲートが参戦。昨年はカナディアン国際を制している。騎手は本日二度目の騎乗キャサリン・エバンス。
日本からも1頭、昨年の菊花賞馬エクスキューションが急遽参戦を表明し、ドバイにやってきた。
鞍上は日本の天才三田崇。
実力馬が凌ぎを削る激戦が予想される。
(レスター・アゴット・・・
生ける伝説か・・・。
しかしドバイじゃ好きにさせん。)
キャスパルはガーファンクル鞍上のアゴットを強い視線で見ていた。
欧州遠征で何度もその騎乗を生で見てきた。スキのない位置取りに年齢を感じさせないパワフルなレースに、初めて世界の広さを感じた。
そしてもう一人。南アフリカ出身で欧州を中心に活躍を見せているマイケル・ロジャース。彼も世界的にトップクラスの評価をうけるジョッキーである。
(あの馬・・・素晴らしい!!)
キャスパルはロジャースの乗るケルベロスに感心した。黒光りする漆黒の馬体。昨年のケープダービーや南アフリカンダービー、ダーバンジュライなど国内戦で大活躍を見せ、今日のドバイが初海外遠征となる。父ディバインアクトはプリンスリーギフト系の活躍馬であった。
キャスパルはプロミネンスの首筋を軽く叩いて手綱を握った。
(どんな相手だろうが勝つのはプロミネンスおまえだ。
世界最強の走りを見せてやれ!)
それぞれの威信を胸に、各馬ゲートにおさまった。
『さあ!ドバイシーマクラシック、芝2400m14頭ゲートに入りました!
スタート!
まずはガーファンクル!
続いて地元ドバイのガルバルディーがいきます!
その内にヘヴンズゲート!
1馬身離れてプロミネンス!
それを見る位置にケルベロス!
1団となった馬群の最後方に日本のエクスキューション!
ほぼ一塊の集団で1000mを通過しました!』
シンガリで三田崇はペースの遅さを感じていた。
海外遠征は何度も行ってきた日本のトップジョッキーだが、いつもこの道中スローペースの直線一気な展開に翻弄してきた。
日本のようにコーナーを何度も周る展開とは違い、緩やかなコーナーを好位で2回周って直線勝負となる欧州やドバイの競馬場は、日本の競馬とはまったく次元が違う。
三田崇は徐々に前に詰めるために手綱を緩めた。
『快調に先頭を行くガーファンクル!レスター・アゴットがレースを引っ張る展開です!
続くガルバルディーの後ろにヘヴンズゲート!キャサリン・エバンスが好位で追走!
その後ろプロミネンス!今年より英国からドバイに移籍!現在の世界最強馬を操るキャスパル・ダイク!ドバイを代表する英、愛、米3ヶ国のダービージョッキーです!
それを見る位置にケルベロス!南アフリカが生んだ天才騎手マイケル・ロジャース!
中団から徐々に前に押し上げます!
そしてシンガリから位置を上げてきたエクスキューション!三田崇が世界を相手に追撃を開始!
さぁ!このような展開で残り800!間もなく直線にはいります!』
『プロミネンスが一気に差を詰めて3番手に上がってきたぞ!
先頭はガーファンクル!2番手は差がなくヘヴンズゲート!
それに馬体を併せるプロミネンス!
外からケルベロスも上がってくる!
エクスキューションはまだ馬群の中だ!
4頭が抜けたところで残り600を切った!
先頭はまだガーファンクル!
しかしヘヴンズゲートが馬体を併せた!
それに半馬身迫ったプロミネンスとケルベロス!
残り400!
やっと馬群からエクスキューションが抜け出してきたが差は先頭から4馬身!
前は完全に4頭が並ぶ展開!
残り200を切ってプロミネンスが前に出た!
ケルベロスも食らい付く!
ガーファンクルもまた巻き返すぞ!
ヘヴンズゲートは遅れた!
前は3頭!
残り100!
プロミネンスが先頭!
ケルベロスも必死に追っている!
しかしプロミネンスだ!
プロミネンスが一着!
二着はケルベロス!
三着にガーファンクル!
激戦を制したのはやはりプロミネンス!』