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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter1
310/364

翔べ!ドリームメーカー-9

15

【UAE・ドバイ】


メイダン競馬場


毎年恒例のドバイ・ミーティングには世界各国から名馬が集う国際GⅠの祭典。


国際GⅡに位置づけられたドバイダービーにも、ドバイ国内馬はもちろん、海外からの三歳馬が多数出走してきた。



アメリカからダートの2歳チャンプになったイグジッド。

アルゼンチンからグランディア。

ブラジルからはザンジバル。


地元ドバイからはパプテマスシロッコ、アッシマーなどの有力馬が受けてたつ。


AWオールウェザー1800のドバイダービーは激戦を予感させるパドックとなった。


「やあキャシー。いい馬だね。」

パプテマスシロッコの鞍上からキャスパルが声を出した。

「あらキャスパル。今年はアメリカにはこないの?」

イグジットに跨ったキャサリン・エバンスが笑顔で答える。


昨年アメリカ競馬史上初の女性リーディングとなったキャサリン・エバンス。

それを最後まで競り合っていたのがキャスパル・ダイクであった。


イグジットは昨年のBCジュヴェナイルを制して米国2歳チャンプとなった。父ストリートセンスはミスタープロスペクター系のケンタッキー・ダービー馬だ。


「その馬で、今年のダービーは勝てそうだね。」

キャスパルが楽しそうに口を開くと、

「そうね。でも本番はベル・メッツの馬に乗る事になるわ。」

と、キャサリンは少し寂しげに言った。

ベル・メッツとの専属契約があるため、キャサリンは優先的に風の一族に騎乗しなくてはならない。


「なるほどね。まあ、僕も同じような境遇だよ。母国に軟禁されて身動きとれずにいるからね。」

キャスパルも感慨深げだ。


「ふふ、勘違いしないでキャスパル。たしかにイグジットに本番で乗れないのは残念だけど、ベルの馬は凄い仔よ。デビュー戦も圧勝だったしね。エアマスターで2度目のケンタッキーはいただくわ。」

力強く語るキャサリンに、またアメリカで競馬がしたいとキャスパルはおもった。


キャスパルは3年前にケンタッキーを制し、エプソムとアイリッシュに続き3カ国目のダービーを制した。


そしてキャサリンはラストハリケーンで三冠を達成している。


キャスパルはドバイの小国で留まる男ではないのだ。


ドバイダービーのゲート前で南米の2頭の鞍上が激しい罵り合いを繰り広げていた。


「ヘイ!チキンが何しにドバイまできやがったんだい!」

ブラジルのホセ・カルロスが流暢な英語で言えば、アルゼンチンのチャリオス・ディアスも、

「虫けらの分際で人の言葉をしゃべんじゃねー!」

と切り返す。


アメリカを拠点に置く二人の犬猿の仲ぶりは有名である。


ザンジバルやグランディアもアメリカに出稼ぎ中である。


「チッ・・騒々しいやつらだ。国王も見にいらしているレースだというのに。」

ドバイ馬アッシマー騎乗のカルマ・ザジはため息をついた。


ドバイ国内リーディングでありながら、自分の評価がなかなか上がらない事に苛立ちを感じていた。

世界で活躍するキャスパル・ダイクの存在が大きすぎるのだ。


(アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、そしてキャスパル。まとめてぶっ潰してやる!)

カルマは周囲に睨みを利かせながらゲートに入った。

ゲートが開いて一斉にスタートを切った全12頭。

先手を取ったのはブラジルのザンジバル。


2馬身離れた2番手にアメリカのイグジット。


さらに3馬身離れた集団の先頭にパプテマスシロッコ。

馬群の中団7番手にアルゼンチンのグランディア。

そのすぐ後ろにアッシマー。


キャスパルは注意深く展開を感じた。

ザンジバルの鞍上ホセ・カルロスは豪快な騎乗が売りのパワフルジョッキー。しかし短気でせっかちな気質でムラの多い騎乗に折り合いを欠く事もしばしばある。

(ホセはそのままいかせてもいいだろう。)

キャスパルは注意を前のイグジットと後方のグランディアに集中していた。


昨年のBCジュヴェナイルでこの2頭とは一緒に走っている。

1着はイグジット、2着にグランディア。キャスパルの騎乗したベイシティーローラーは4着と敗れていた。

実際一緒に走って2頭の速さは分かっている。


パプテマスシロッコは好位で抜け出す戦法を得意としている。

(焦らずに・・ここで時をまつ・・!)


キャスパルは静かに手綱を握っていた。


最終コーナーを回って長い直線へ向いた。

先頭はザンジバル。しかしイグジッドもそれに並びかける。


パプテマスシロッコはまだ動かず、徐々に外に持ち出し仕掛けのタイミングを見計らう。

その後ろに不気味に待機しているグランディア。鞍上のチャリオス・ディアスはアメリカでマーク屋として知られる巧者である。ベテランの粋にあるキャリアの持ち主で、自国アルゼンチンでの人気は凄まじい。


じっくり後ろからパプテマスシロッコの動きを見てきた。

そのタイミングを見極めたディアスは一気にパプテマスシロッコに競りかけた。


「チィィ!チャリオスか!?」


キャスパルは外から来たグランディアに馬体を併せた。予測はしていたが、早い追い出しに焦りを見せた。


「キャスパル!悪いがもらったぜ!」

ディアスの激に、

「ええい!振り切ってくれるわっ!」

キャスパルも応える。



前二頭も激しい叩き合いを繰り広げていた。

「おいキャシー!いい加減諦めろよ!

お前の馬は口を割っちまっているぞ!」

ホセ・カルロスが、隣で競り合うキャサリン・エバンスにヤジを奮う。

「相変わらずうるさい男ね!そのうちセクハラで訴えてやるから!」

キャサリンはムチを一発イグジッドに入れて口撃する。



前の4頭が並んだ時、残り200を切った。

グランディアが頭ひとつ出るがすぐにパプテマスシロッコが並んだ。

一心一体の攻防にイグジッドも食い下がる。


ザンジバルが遅れを見せた残り100を切って更に1頭ドバイ馬アッシマーが一気追い込んできた。



混戦の中、ゴールにいち早く飛び込んで来たのはアルゼンチンのグランディアとチャリオス・ディアス。

2着はパプテマスシロッコ。

3着アッシマー。

4着にイグジッド。

ザンジバルは6着に終わった。



(まぁ…今日はこんなものだろう。)

キャスパルはパプテマスシロッコの首筋を撫でながら次のレースに意識を切り替えた。

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続くゴールデンシャヒーンはジェリド騎乗のドバイ馬バウンドドッグが勝利を飾った。


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