翔べ!ドリームメーカー-8
地方大井競馬場でデビューした茜は男勝りの活躍を見せ、1年目からリーディング上位に食い込んでいた。
端整とれたルックスに長い黒髪をなびかせ騎乗する姿に人気も上がり、デビュー3年目には【大井の女王】と名づけられるようにまで成長していた。
茜には2つの誓いがあった。
1つは浦河美幸に対する復讐である。(シーズン5参照)
もうひとつは美穂との涙の約束があった。
この誓いのために自分を追い込み、男社会の競馬界で男たちとも対等に渡りあってきたのだ。
そんな気の強い茜ではあるが、やはりまだ22歳の女性である。重いプレッシャーに潰されそうな時もある。
いつしか彼女の心には悪魔が棲み始めた。
それは黒い波の姿で茜の脳裏を犯しはじめる。
まるでレイプのように茜を弄ぶ悪魔は、次に血を求める。
その度に茜は手首を差し出し血を捧げるのだ。
さまざまなプレッシャーを悪魔に捧げるリストカットで解消してきたのだった。
しかし、茜にある変化が訪れた。
今まで夢にまで見た流星の系譜を継ぐクラウディハートを、美穂の父の定男が購入。騎乗のチャンスがやってきたのである。
茜はこれまでも大井の名物馬主で名を知られる定男のおかげ有力な騎乗馬に恵まれてきた。
美穂を亡くしてから定男にとって茜は、友人の娘から本当の娘のような存在に変わっていった。
定男は中央での馬主資格も持っており、大井ではなく中央で登録されたクラウディハート。大井所属のまま茜は主戦騎手に抜擢された。
初めてクラウディハートに跨った時、茜の頬に涙が溢れた。美穂の茜への最期の言葉は、
「茜ちゃんが、ダンステリアの血を引く馬に乗って活躍してほしいな・・・」
であった。
(美穂さんとの本当の約束は、このクラウディハートでGIを勝つこと・・・。
美穂さん・・見ていて!)
その日から茜の心から悪魔は消えた。
心の逃げ道で行っていたリスカは、快楽のリスカに変わり、相変わらずの病みっぷりは健在ではあるが、茜の心に変化をもたらせた出来事であった。
13
レースは最終コーナーに差し掛かった。
クラウディハートは上手く外に持ち出した茜は、早めに3番手まで位置を上げていた。
常に後ろから感じる大きなプレッシャー。
最後方から徐々に上がってきているシューティングレイは7番手で直線に向いた。
茜はいち早く仕掛けて先手を取りにいった。
クラウディハートは茜の指示に即座に加速を強め先頭に立った。
残り200で再び伸びを見せたクラウディハート。
(これはもらった!!)
茜は勝利を確信して。後ろをチラッと振り見た。
そこには信じられないほどのスピードで迫ってくるシューティングレイの姿があった。
(チッ・・!!!さすが楽にはかてないわね!!)
すぐさまムチを入れ手綱をしごく茜。
残り100!
まだ先頭の茜は生きた心地がしない。
確実に迫りくる追撃者の脚音。
「くそーーー!!!」
茜の怒号と同時にシューティングレイは風のようにクラウディハートをかわした。
『クラウディハートはここまで!
シューティングレイが凄まじい追い込み!今1着でゴール!
見事に皐月賞トライアル、スプリングステークスを制しました!』
あっと言う間に3馬身離されたクラウディハート。
2着とは言え完敗であった。
(見てらっしゃい・・・!!!
次はこうはいかないから・・!!)
茜の視線は勝者に鋭くおくられていた。
14
【ホースニュース】
皐月賞へ向けて!!
〇弥生賞
1着オメガフライト
見事な勝利でトライアル第一弾を制した。次走の皐月賞でも二歳チャンプの意地を見せてもらいたい。
2着セキトバ
敗れはしたが大きな見せ場をつくった。
セン馬のため皐月賞への出走は叶わないが、充分なアピールを出来た結果であった。
3着スぺキュラム
二番人気に推されたが残念な結果であった。次走は皐月賞へは向かわずNHKマイルカップに向かう。
〇若葉ステークス
1着アルバトロス
向こう正面から独走状態でそのままゴール板まで帰ってきた圧倒的な勝利であった。偉大な両親や兄たちに負けないインパクトを見せつけたアルバトロス。本番でも間違いなく大本命になるだろう。
2着ドラゴンディール
逃げ脚が自慢のドラゴンディールだが今回は相手が悪かった。本番ではどう逃げるか?課題は大きいようだ。
○スプリングステークス
1着シューティングレイ
最後の直線での末脚は凄まじいものがあったが、騎手の腕はそれほど動いていなかった。八分程の仕上がりで見せた豪脚に、アルバトロスとの初対決に期待が膨らむ。
2着クラウディハート
早めの仕掛けで先手を打ったが、この敗戦はしかたない。皐月賞ではさらに厳しい戦いになるだろう。
【ドバイワールドカップに向けて、デビルマンがドバイで調整順調!】
【ドリームメーカー英国到着!
陣営はグランドナショナル制覇宣言!】