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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン6 chapter1
307/364

翔べ!ドリームメーカー-6

【ホースニュース】


クラシックトライアル開幕!


●弥生賞

一番の有力は2歳チャンプのオメガフライト。

強烈な差し脚が武器だ。

朝日杯フューチャリティステークス以来のレースとなるが状態は好調をキープ。

クラシック制覇へと順調な仕上がりだ。

外国産馬スペキュラムもデイリー杯2歳ステークスの覇者だけに侮れない。


●若葉ステークス

本命はアルバトロス。昨年は朝日杯フューチャリティステークスを2着と惜敗したが、今年に入り共同通信杯を圧勝。今年のクラシックの主役の走りに注目したい。

シンザン記念を制して初重賞を手にしたドラゴンディールが対抗になりそうだが、どこまで食らい付けるかに注目したい。


●スプリングステークス

主役の一角シューティングレイがこのレースから始動。

前走ラジオNIKKEI杯2歳ステークスの勝利から2ヶ月。さらに進化した同馬に陣営も強気のコメントを出している。

対抗馬きさらぎ賞馬クラウディハートとは同じ飛田牧場生産の縁を持つ。


戦国クラシックの行方に胸が高まる。



10

3月1週、中山競馬場。


皐月賞トライアル

【弥生賞】


1番人気はオメガフライト。

鞍上は浦河美幸。

2歳チャンプの始動に1番人気の評価で臨んできた。


2番人気は外国産馬スペキュラム。鞍上は藤島伸一。

愛国生まれの輸入馬。

昨年のデイリー杯2歳ステークスを制して、同世代ではいち早く名乗りを挙げたインフェルノ産駒。


出走16頭の中で2頭が飛び抜けた存在であった。


ただ・・・8番人気の栗毛馬は他馬とは違う雰囲気を醸し出していた。


『さぁ!皐月賞トライアル弥生賞・・・


スタートしました!!』

マスコミ席でレースを見つめるホースニュース編集長安田は、スタート直後ハナにたった栗毛馬に視線を集中させた。

昨年、飛田牧場のブレーン【神の眼】宝田誠が指名した同世代2強以外の馬。

セキトバがレースを引っ張っていた。

『先頭はセキトバ!

鞍上角谷光二が快調に飛ばしていきます!

7戦1勝の戦績ながら弥生賞にすべりこんできました!

セン馬なのでクラシックへの出走は叶いませんが、ここで実力は示しておきたい!



その後方はほぼ一団!

5馬身はなれて2番手にスペキュラム!


オメガフライトは馬群の中ほど10番手を追走します!』


美幸は行きたがるオメガフライトをなだめながら馬群の中で抑えていた。

先頭を行くセキトバから7~8馬身差があるが、直線勝負で決める狙いであった。

オメガフライトは父ステージクロスから鋭い末脚と、母イーストフライトから粘りある気質を引き継いでいる。

母の父トニービンは言わずと知れた名種牡馬。

日本ダービー馬ウイニングチケットとジャングルポケット。

牝馬二冠ベガ。


そして最高傑作となる女王エアグルーヴ。


イーストフライトも安田記念とマイルチャンピオンシップを制したGⅠ2勝の名牝であった。


そのトニービンは母父になってもその力を発揮し続けている。


ナスルーラを父にもつグレイソヴリン系の爆発力を今も受け継ぐオメガフライト。


(今はまだ我慢よ・・・!)


美幸は手綱を絞ったまま1000mの標識を通過した。

先頭を行くセキトバは菊花賞馬スターレジェンドとエリザベス女王杯馬のトゥザウィンと言う良血に生まれた。

昨年7月の早いデビュー戦では、良血を推されて1番人気となった。

しかし結果はシンガリ。

続く2戦目も上位人気になりながらもブービーに終わり、関係者を落胆させた。

3戦目の惨敗後に馬主である金村慎介は苦渋の決断を下す。

それはセキトバの去勢である。

調教の豪快な走りから、競走能力が高いことは確認していた。しかしレースになると激しい気性から結果を出せずにいる現状に、去勢という究極の矯正方法に踏み切ったのだった。

金村のような個人馬主は、自分の所有馬を引退後に種牡馬として売却できなくなるセン馬にするのを極力避ける。

そしてセン馬はクラシックなどの出走制限を受けなければならない。

リスクばかり目立つセン馬での道を、昨年の年末に勝利で再開させた。

続く条件戦を2着、3着、5着と走りこの弥生賞へと滑り込んできた。

セン馬だけに使い込まれてはいるが、調子は上がってきている。


セキトバが先頭で直線に向いた時、後続を5馬身離していた。

『さぁ!直線に入ってセキトバが先頭!

その差5馬身を追ってスペキュラム!

馬群の外を回ってオメガフライトが上がってきた!


残り200の標識を過ぎてオメガフライトが2番手に!

スペキュラムも粘ってついていく!


しかし先頭はセキトバ!

これは逃げ切れるか!?


残り100!

オメガフライトが一気に差を詰める!


あと半馬身!』


美幸は相手を見誤った。

スペキュラムに標準を絞ってきたが、セキトバの粘りに追い出しの遅れを後悔しながら追ってきた。


セキトバ鞍上の角谷光一は過去にジャングルポケットで日本ダービーを制した実力派ジョッキーだ。

オメガフライトの母イーストフライにも騎乗してGⅠを2勝している。


(騎手の腕だけではない…!)


美幸は並びかけたセキトバの走りを見て確信した。


闘志剥き出しで走る姿にかつての相棒であるドリームメーカーが重ねて見えていたのだ。


(こんなところで負けるわけにはいかないのよ!)


美幸はムチを振り下ろした。

『セキトバにオメガフライトに並んだ!

オメガフライトが頭一つ出たところでゴール!


2歳チャンプが意地を見せた!

しかし2着のセキトバも素晴らしい逃げを見せました!

セン馬ですので皐月賞には出走出来ませんが、賞金加算により今後の展開が広がります!

3着にはスペキュラム!


皐月賞トライアル弥生賞はオメガフライトが制しました!


ゴール後に横を見た美幸は、深いブリンカーの奥に光るセキトバの瞳に身震いを覚えた。


(きっと怖い存在になるわね・・・。)


この美幸の予感は、後に的中することになる。



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