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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン1 chapter2
23/364

暁-8

セレクトセールが終わり夏競馬が始まった。


札幌や函館競馬場が解禁となり競馬関係者も北の地へ集まってくる。


俺はコナンとココロを村木の紹介で、彼が所属する栗東の武田文吉厩舎に預ける事にした。

今日はその挨拶で札幌競馬場にやってきた。


恐面のじいさんだ…。実際本当に恐いらしい…。


「あの…来年から2頭お世話になります飛田です…」


挨拶した俺をギロリと睨んだじいさんは、


「いいか若いの…馬の調教方針には一切口を出すな…」


反論を許さないその眼光に俺はうなずくしかなかった。



武田文吉。調教師としては一流の腕を持っている。数々のビッグタイトルも手にしているが、そのスパルタ調教は賛否両論で、馬の能力を上げる事もあれば、故障する馬も多い。最近はそんな武田厩舎を避ける馬主も多く、委託数は減っているようだ。


まぁコナンはあの巨体だ。多少スパルタな方がいいだろう。

ココロは心配だが…。


俺の馬主秘書として一緒に同行した瑤子とは面識があるようだ。


なにやらニヤケてじいさんが喋っている。

エロジジィめ…。



しかしとりあえず馬主として第一歩を踏む事ができた。



調教師も決まり、後は競走用の馬名をつけて来年のデビューを待つだけだ。


勝負服は瑤子の提案で柄や色はつけず、真っ白なものを採用。



俺は瑤子とともにいろいろな馬主さんや関係者への挨拶など牧場作業を兼用してこなす事となった。


季節は秋になりGⅠシリーズに突入。


ナイトメアの凱旋門賞(GⅠ フランス・ロンシャン競馬場 芝2400m)が近づいた。


日本のトップレベルの馬が幾度となく挑戦して敗れ続けてきた凱旋門賞。幾万とある世界中のレースの頂点に位置するこのレース。


日本を代表する天才ジョッキー《滝豊》。

彼もまたこの凱旋門賞には因縁がある。数年前、一番人気に支持され当時の日本最強馬ディープインパクトで挑んだが三着。競馬ファンだけではなく日本中が注目したレースでの惜敗に、彼への非難も報道された。


しかしあの時から天才は、幾多のキャリアを積み、今まさに《神》の領域に達する才能を開花させた。


一昨年のドラゴンアロー。

昨年のナイトメア。

そして今年はアドバイザシュートで日本ダービー3連覇達成。


『ディープインパクトの子供ナイトメアでこの因縁にけりをつけたい…』

孤高の天才はマスコミにこう発言した。




スプリンターズステークス(GⅠ 中山競馬場 芝1200m)を昨年NHKマイルカップを制したユリノロイヤルが勝った2週間後、凱旋門賞の当日となった。



朝からワイドショーなどで盛り上がり、深夜の生中継となるが日本中が注目していた。


ナイトメアは二番人気。

一番人気は今年の英国ダービー馬ピッコロ。

キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GⅠ イギリス・アスコット競馬場 芝2400m)も2着の強敵だ。



俺と瑤子と宝田はテレビの前に座り、その時を待った。



日本のレースのようにファンファーレなどない。


枠入りが始まりレースは突然スタートした。


『さぁ凱旋門賞スタート!


全8頭綺麗なスタートです!

まずはアウシュビッツが行った!


おっと続いて日本のナイトメア!

差し馬のナイトメアが前から行きます!


人気のピッコロは4番手!』


3歳馬のピッコロと4歳馬のナイトメアとは斤量が違う。


セオリー通りピッコロより前でレースを進める滝豊であった。


2400メートルだが、日本の競馬場とは違い通過するコーナーは2つ。長い直線はすぐにやってくる。

『向こう正面からひとつ目のコーナーに差し掛かります…先頭はアウシュビッツ!ナイトメアは4馬身ほど後方…それを見るようにピッコロがこの位置で控えている…』

カメラに映しだされたピッコロは不気味に馬群に潜んでいる。


『ほぼ一団となって最終コーナーを通過…さー!ナイトメアが徐々に上がってきたぞ!』


直線に入り逃げるアウシュビッツとナイトメアの差はもうほとんどない。


『さぁーー!直線!アウシュビッツとナイトメアが並んだぞ!ナイトメアはまだ持ったまま!ナイトメアはまだ持ったままだ!』


滝豊は確信していた。敵は斤量(競馬の競走において、競走馬が負担しなければならない重量)だけ。

3歳馬のピッコロは56kgに対し4歳馬のナイトメアは59.5kgを背負わなければならない。


しかしピッコロとの実力差はほとんどない。いや…ナイトメアの方が優っていると…。



『残り500メートルを切ってアウシュビッツとナイトメアが先頭!ピッコロはまだ後方だ!』


すでにアウシュビッツはムチが入っている。

ナイトメアはまだ脚を余している。


『ここでピッコロが三番手に上がったぞ!

アウシュビッツは後退!残り400メートルでナイトメアが先頭だ!』


滝豊はこの時を待っていた!ナイトメアの闇夜を切り裂く戦慄の末脚!


ムチを高らかに上げナイトメアに合図を送る!


(行けナイトメア!)


解き放たれたナイトメアは一気に加速。滝豊は勝利を確信した。


『ナイトメアだ!ナイトメアだ!!…しかしピッコロが…ピッコロが…一気に差を詰めてきたぞ!』



想定内だ…天才は、斤量の軽いピッコロがある程度差を詰めてくる事は計算していた。

しかし今の差がセーフティーリードになる…


…そうなるはずだった…。



『残り200を切って先頭はナイトメア!しかしピッコロがナイトメアを捕まえる勢いだ!』


天才は焦っていた。そして過信していた。栄光のゴールは目前だった…。


『100メートル切って並んだ並んだ!』

ここでナイトメアが意地を見せる。

『ナイトメアがまた前に出た!』


しかしそれが最後の力だった…。



『ピッコロがまた差し返した!ナイトメアは力尽きたか後退!

ピッコロが一着でゴールイン!ナイトメアは二着!日本の至宝がまたもや敗れた…』


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