暁-6
《ホースニュース4月号》
金村氏のナイトメアが今年の凱旋門賞への挑戦を表明。春の阪神大賞典から天皇賞(春)と宝塚記念を走り、フランスへ向かうローテーションだ。まさに父馬ディープインパクトと同じ路線を行く。数年前、史上6頭目の三冠馬ディープインパクトが挑戦して三着(後に失格)と夢破れた凱旋門賞。日本競馬最大の覇業を、あの時と同じ馬主金村、調教師池江、騎手滝豊で望む。
俺は、社来の育成牧場を訪ねた。乗馬クラブのスタッフを斡旋してくれた牧場長に礼を言う為だ。
「なかなかうまくいってるみたいですね~?」
挨拶と礼を述べ、ビンゴとコナンとココロを見せてもらった。
《ホースニュース》に期待馬と紹介されたビンゴ。成長した黒光りする馬体からでるオーラは俺の知ってる幼駒の頃のビンゴではなくなっていた。期待馬の生産牧場と言う事でホースニュースの安田と言う若い編集長が直々にうちの牧場へと取材にきた。
そんなに期待されているのか…
なんだか誇らしい気持ちの半面、すでに俺の手を離れた愛馬に少し寂しい気持ちになった。
栗毛のやけに…かなり…バカデカイ馬…コナンだ。まだ一歳だって言うのに、どさんこばりにデカイ…。ばんえい競馬にでも走らすか…。一応俺の持ち馬だ。鼻筋を撫でてやった…
「いてぇーーっ!
…こいつ今…俺を噛みやがった!
「こいつはちょっと気性が荒くてね~」
早く言え!
俺はコナンを持ち馬にした事を後悔した。てか今からこんなにデカくてデビューの頃にゲートに入るのか?
一方ココロは先程からフルフル震えている。
「いや~かなりの臆病でね~」
…不安しか湧かない…。
俺は今日来た事を後悔した。