表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン4 chapter1
202/364

血の宿命-6

カッシャッ!!


ゲートが開いて馬が一斉に飛び出した。

凄い盛り上がりとなる競馬場の観衆たち。


僕もいつのまにかテンションがマックスになり、体が自然と馬主席から身を乗り出していた。


先頭は…1番のゼッケンの…ネオハリケーンだ。逃げ馬ってヤツだな。


僕は馬の群れを1頭1頭確認して最後に10番のゼッケンをしたドラゴンアマゾンを見つけた。

こっちは追い込み馬か…!!


生まれて初めての競馬…けっこう楽しいかも…!!



ドラゴンアマゾンの騎手は…野田新之助って騎手だ。


ホースニュースに詳しいプロフィールが載っている。


国内GⅠを6勝。GⅠってのは聞いた事あるぞ。一番グレードの高いレースだな。


え~っと…フェニックスって馬で菊花賞と天皇賞(春)を二回、メイジマリアでオークスとエリザベス女王杯、そして昨年ドラゴンアマゾンで朝日杯FSを勝ったと…。


夏のローカルで三年連続最高勝利を挙げ、『夏男』と呼ばれているか…。


よくわからん競馬用語は帰国して検索でもしながら調べよう。


わかったのは、同期に浦河美幸がいるって事と、派手さはないけど堅実な騎手って事だけだから…。


「さぁシン!!

残り800mだ!!」


ベルの叫びと同時に観客スタンドの興奮も上がってきた。


先頭のネオハリケーンは快調に走っている。


僕は目線を最後尾に移した。


ドラゴンアマゾンがいない!?



もう一度先頭からじっくり見る。


ドラゴンアマゾンはネオハリケーンのすぐ後ろを走る馬の群れの中にいた。


徐々に前へと進出していたようだ。



⑥と言うサインを通過したネオハリケーン。おそらく残り600mって事だろう。



再びドラゴンアマゾンを見る。

ドラゴンアマゾンの前には他の馬が壁になっていた。


あれでは前に出られない!!


素人の僕にもわかる。


ネオハリケーンにムチが入り残り400mを切った。



競馬とは不思議なスポーツだ…。

素人でもわかるこの切迫した状況なのに、ドラゴンアマゾンに乗る野田新之助に焦るそぶりはない。焦っているのは見ている人間だけだ。

まだ…なにかありそうな期待感が僕を包む。


ネオハリケーンが先頭で200mを切った時…


ドラゴンアマゾンの前にいた馬が急に寄れた。


「ジーザス!!」

ベルの叫び声と同時に、馬主席の端にいる龍田氏が立ち上がり叫んだ。

「そこからだっ!!」



ドラゴンアマゾンの前に道ができた。


野田新之助はムチを振う。


!?


僕の体に電流が走った…!!

ドラゴンアマゾンは一気にその道を突き破りネオハリケーンに迫ってきた。


もうすぐゴールだ…!!


後続は追い付けないだろう!!


ネオハリケーンに並んだドラゴンアマゾン!!


ドラゴンアマゾンにまたムチが入る。


「ガッデームッ!!」

ベルが怒号を吐く。


凄い…!!


ドラゴンアマゾンはもう一度凄まじい加速を見せた。


全身に震えが走る…!!


完全に抜け出したドラゴンアマゾン…!!


馬主席の誰かが言った

「日本の馬に最高の栄誉のダービーを持っていかれた!!」


また違う誰かが言った

「風の一族の最高傑作が破れた…!!」


ドラゴンアマゾンが1着でゴールに入った時ベルが僕に呟いた。

「シン…馬にとって【一生に一度きりのダービー】だ…最高の栄誉や名声のすべてがこのレースにある。

だからこそ…なにが起きてもおかしくないドラマがあるんだ…


これも競馬!!


これもロマン!!


今日はシンと最高の時間を過ごせたよ!!」



!!


一生に一度きりのダービー…


3歳の時にしか走れないレースだとは理解している。

しかし…一生に一度のレースと聞くと重みも変わる…。



僕の中で…違う価値観が生まれた瞬間であった。


レースが終わり呆然とする僕にベルが話かける。

「そう言えばシン?

馬券の方はどうだい?3着にカナダのベンジョンソンが入ったからかなり荒れたな。」


ハッとして自分の馬券を確認する。


「いや~ダメでしたよ~………」

外れたフリをした…。

当たっていた…的中だ…。

1着の予想をドラゴンアマゾンにした手前ベルには当たったとは言えなかった。

もちろん2着予想はネオハリケーンだったが、なによりあの7番の馬…ベンジョンソン…最下位人気だったとは気づかずに3着予想にしたら…来ちゃった…!



競馬なんてなんにも知らないんだから予想なんて偉そうな事は一切していない。

ビギナーズラック…にしても…嬉しい…かなり嬉しい…!!



僕は最高の笑顔で観衆に応える龍田氏を見て思い出した。


龍田氏の名刺を見る…。



とりあえず…


わからなかった競馬用語を調べよう…。




まだこの時点では競馬ファンになりかけ一歩手前であったが…


僕の好奇心は伝説の馬ドリームメーカーを見てみたい衝動にかられていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ