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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン4 chapter1
201/364

血の宿命-5

僕はベルや龍田氏と話をしていて感じた事がある。


競馬とはギャンブルだ。僕はギャンブルの類は一切しない。

だからこそギャンブルをする人間の独特感を感じる事ができる。


ベルや龍田氏にその独特感がまったくない。

もちろん彼等は馬主であり、一般にお金を賭ける【ファン】の立場とは違う。


2人が相当の資産を持っていたとしても、ただ金持ちの道楽と見ていいのだろうか?


馬を生産するにも、購入するにも、またそれを維持していくにも相当の金がかかるはずだ。

しかし、まったく【回収】の意識がないのだ。

特に龍田氏は馬の生産が本業である以上絶対に【回収】は必要であり、回収がなければ仕事として成立しない。


【売り上げ】-【コスト】=【実利益】


どんな仕事でも揺るぎない鉄則だ。いかにコストを下げ売り上げを上げて実利益を増やすかが大事なのである。


龍田氏の雰囲気からまるでこの部分が欠落して見えてしまう。


競走馬に夢を託し、ロマンを追う。素晴らしい事なんだろうが、どんな仕事でも夢やロマンだけで飯は食えないのだ。


ならばこの2人は何を見ているのか?商売の鉄則である回収より優先するもがあると言うのか?



その答えが次のレースにあるように思えてならなかった。


なぜならベルは秒単位のスケジュールを裂いてまでケンタッキーに愛馬の走りを見るために来て、龍田氏はたったこの1レースのためにわざわざ渡米してきたのである。



ホースニュースには、ダービーに勝る栄誉はないと書いてある。


その栄誉とはどれだけのものなのか…?


エンジニアから会社経営者に立場も意識も変わってしまった僕の中の好奇心が騒ぎ始めた。



あともうひとつ…。


おそらく競馬と言うものに最大のキーワードがあるとすれば、ベルの口から聞いた【○○の仔】や、龍田氏から聞いたリーディングサイヤーに象徴される【血統】と言うものだろう。



ホースニュースにもあらゆる箇所に血統図が記載されている。


どの馬の仔がどれだけ走って、さらに次の仔が…って具合いに引き継いでいく事が重要であるらしい。



おいおい…別に競馬を見るなんて今日が最後だ。

そんなの覚えたって、無駄な知識に終わる。


だが…好奇心に捕われたらとことん知りたくなる。

昔からそんな性格だ。

だから高校の時にはコンピュータシステムを極めてウィザードの開発に成功できたし、ワンピは作者にも負けないぐらい知っている。

ロビンもいいがやっぱりナミが好きだ。

いや、そんな事はどうでもいい…。


とにかく僕の中で早くケンタッキーダービーと言うレースを見たいと欲しているのが自覚できていたのだ。


「さぁシン!!

ケンタッキーダービーが始まるぞ!!」

ベルのテンションは最高潮に上がっていく。

ベルが戻ってくる前に、龍田氏からいろいろ教えてもらった。

なんでもこのケンタッキーダービーとは2000mの砂のコースを今年は14頭で走るらしい。


ちなみに砂のコースは【ダート】と言うらしく、アメリカではこのダートのレースが主流だそうだ。


さっきから数レース見ていて気づいたが、馬にはそれぞれレースを進めていく個性があるようだ。

スタートして先頭に立ち最後まで先頭を守り切る走りや、最後方にいたのに最後は一気に抜いていく走りとか。


【逃げ】【先行】

【差し】【追込】

これぐらいは聞いた事がある。ただ実際見ると奥深い。



「シン!!あれが私の馬だよ!!」

ベルの指差す先にいる馬


あれがネオハリケーンか…。


ん?乗ってる騎手は女みたいだ。


「キャシーが私を栄光へと導いてくれる案内人だよ。」


僕はこっそりホースニュースを見た。


キャサリン・エバンスってアメリカを代表する女性騎手らしい。


「浦河美幸みたいなもんか…」


僕の呟きにまたベルが過剰に反応した。


「ミユキ!?

ミユキ ウラカワは最高のジョッキーだ!!

あの欧州三冠は忘れられないよ!!」


へぇ~浦河美幸ってかわいいだけじゃなくて世界的にも認知されているのか。



そしてあの黒い馬がドラゴンアマゾンか…。


再びホースニュースを開く。


なになに…昨年の朝日杯FSを勝って…え~っと…ドバイダービーを勝ったと…。


ドバイって言ったらアラブ首長国連邦のドバイだな。あっ…さっき龍田氏が言っていたモハメッド殿下の国だ。


この成績が凄いかどうかはわからないが、今日は2番人気らしいからおそらく2番目に強いって事だろう。



でもなんとなくだが、1番人気のネオハリケーンとドラゴンアマゾンは違う雰囲気がある。

なんとなくだが…。


そして僕は生まれて初めて馬券を買った。


あと1頭…7番のゼッケンをした馬だ。これもなんとなくだが他の馬とは違うように見えたから、3連単って馬券だ。



こうなると俄然ウキウキするもんだ。きっと競馬の好きな人はこの気持ちがたまらないのだろう。



ゲートの付近が慌ただしくなり、徐々にゲートへと馬が入っていく。

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