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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン3 chapter6
190/364

夢を信じて-5

12月31日

現地時間AM10:00



目覚めた俺はホテルのビュッフェで遅い朝食をとっていた。

すでに瑶子と宝田はドリームメーカーの元に向かったらしい。


俺はテーブルでバケットをほうばりながら今夜のレースの事を考えていた。


「おい!!貧乏人!!なに優雅に過ごしているのだ!?」

…龍田仁だ…。


春文も一緒に来ている。


「親父や兄貴たちもすでにオブライアン厩舎に行ったよ。」

春文の話では吉田ファミリーみんなで来たらしい。


レースは今夜の0時からだ。皆なにをそんなにあわててるんだ?


俺のテーブルに龍田と春文が腰かけた。


「世界中の競馬関係者やら慈善家が注目しているレースの主役の馬主が、なにを呑気にしているのだ?」

龍田の言葉はあまり聞かないようにしよう。飯がマズくなる。



「ついさっきドバイからモハメッド殿下も到着したらしい。」


春文の言葉に俺の頭の中で【?】が浮かんだ。


ダーリーは今回ノータッチじゃなかったのか?



「今回ダーリーから10億ドルの寄付金が出されたんだ。全額アフリカ難民への救済金になるんだってよ」

ほら見ろ…龍田の話で飯がマズくなった。

俺はただドリームメーカーのリベンジができればよかっただけなのに…話がデカくなりすぎだよ…。

春文が言う。

「日本馬主連合会でも寄付金を募ってね」

寄付金を募って、その代表で社来ファミリー勢揃いで来たわけね。


「うちはさらに単独で10万ドル寄付したぞ」

龍田…おまえはそう言うヤツだ。目立ちたがりだもんな。



俺は夕方までもう一寝入りしたかったが、二人に無理矢理オブライアン厩舎に連れていかれる事になった。



12月31日

現地時間PM12:30


オブライアン厩舎に着いた俺は瑶子と宝田に誘導され、ドリームメーカーの元に向かった。


「これは…調子良さそうだな…!


ドリームメーカーを見た俺の第一声だ。

赤く光る馬体に金髪のタテガミがなびく。

引き締まったその体は、まさに鋼の鎧。


「少し小さく見えるけど…」


俺の言葉に武田師が答える。

「700㎏あった馬体重が650㎏まで減った。こいつの体から一切の【遊び】がなくなったよ。2000mはこいつの距離にはちょっと短いから、これぐらい落として正解かもしれん。


と言っても…わしはなんもしとらん。こいつが勝手にやりおったんだかな…」



「ごっつい馬ですわ…」

宝田も圧巻の表情だ。


しかし原だけは違う視点で見ていたようだ。

「最近かなり神経質と言うか、ナーバスになってまして…。

ちょっと気掛かりっス…。」



決戦の時…きっとドリームメーカーも理解しているのだろう。



社来の吉田善吉会長はじめ、照文社長、克己さんらもドリームメーカーに感心を抱いている。



「やるべき事はすべてやったわ。後は美幸ちゃんとコナンを信じるだけね。」

瑶子の言葉に決意が込められているように聞こえた。


そう…これは俺たちの戦いでもあるんだ。



レースまであと11時間半をきっていた。


12月31日

現地時間PM21:00。


クールモア育成スタッドに造られた特別コース。


凄ぇ……。


育成調教用の直線コースに観客スタンドが設置され、ナイター照明が2000mのターフを照らしだす。


世界各地から押し寄せる観衆は、まず世界的に見ても極めて特異なこのコースに驚きテンションを上げるだろう。

たった1レースのために造られたこの観客スタンドは、三時間後には熱狂の渦と化す。



まだ誰もいない馬主関係者席で俺は宝田と二人で座っていた。見下ろす観客スタンドにはすでにかなりの観衆で賑わっている。


「社長は行かなくてよかったんでっか?」

宝田が俺に聞いてきた。

この近くにあるホテルでセレモニーパーティーが開かれている。当然馬主として行くべきだが、瑶子と相羽のババァにまかせた。


「苦手なんだよ…VIPだのセレブな世界はね。」

俺の返答に宝田はケラケラ笑った。


二人で買い込んできたビールを飲みながらターフを眺めていた。


「宝田さん、ドリームメーカーは勝てるかな?」


宝田は俺に新たなビールを渡しながら答えた。

「直線の2000m…たとえまたかかってしまってもヤツなら耐えれる距離です。


まさか社長はタイマンでドリームメーカーが負けるとでも?」


ニヤリと笑う宝田。


もちろん負けるわけないさ…!!ドリームメーカーはいつだって最後には必ず獲物を仕留めてきたんだ。



欧州の遅い夕暮れ。


決戦の時が迫る。


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