表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン3 chapter4
178/364

夢見る幼駒じゃいられない!-7

ドリームメーカーは今日もイレ込んでいた。

「龍田、おまえムツ・ファイブマンって生物学者知ってるか?」


俺の問いに龍田が急に元気を取り戻した。


「知っているとも!!昔ガキの頃によく見たよ!

【ムツ・ファイブマンとゆかいな仲間たち】ってテレビ!!」



はぁ?そんな番組あったの?

俺は龍田にインフェルノのマジックについて説明した。


「なるほど…帝王体質ね…。まるで俺のような馬だな。」


やっぱりコイツは疲れる。


「おい飛田!?なんでこんな大事なレースに障害騎手使うんだ!?」

ドリームメーカーに股がった村木を見て龍田が驚き叫んだ。


何をいまさら…。

記者会見もしただろ!?


俺は龍田に言い放った。

大事なレースだからこそ村木なんだよ。


龍田にしてみても村木は同級生。龍田の所有の障害馬にも多く騎乗している。


フンと鼻を鳴らした龍田は、

「おまえの馬だから勝っても負けても興味はなかったが、村木が乗るなら応援しなきゃならなくなったな。」

と憎たらしく言った。


素直じゃないヤツだ。


テレビの画面はインフェルノを映し出す。


「我が龍田ファームは昨年の暮れ、クールモアにインフェルノを種牡馬として購入したいと打診したのだ。

しかし現役続行で交渉は断念。今年のさらなる活躍で額はまた上がるな。社来も狙っているらしいから、おそらくうちひとつではもう手が出せん。ブライアンズタイムの後にうちの華麗なる一族と融合させたかったがな…」


…どうせ社来が買っても種付け株を買いあさるんだから変わらないだろ。


『ブリーダーズカップも残り2レースになりました。

次のレースはBCターフ!

凱旋門賞の1着2着が参戦して人気を集めています。


1番人気はもちろんインフェルノ!今年はキングジョージと凱旋門賞を制しています!



2番人気は我等が日本のドリームメーカー!

サンクルー大賞で海外GⅠ初制覇!キングジョージ3着、凱旋門は2着と好順位ながら内容的にはインフェルノに惨敗しております。

本日の鞍上は村木義男!一昨年の日本ダービー以来の騎乗となります!』



先日、村木から電話があった。

日本国内のGⅠはおろか、専門の障害GⅠすら勝っていないのに、いきなり異国の国際GⅠ参戦。

かなり戸惑っていた村木。


しかし俺はドリームメーカーをこれ以上なく理解している村木なら安心して任せられる。

俺の精一杯の激励に、村木の口から「がんばるよ…」と自信なさげながら前向きな返事を聞けた。



一方、今回の降板を瑶子より言い渡された浦河騎手は落胆の表情だったそうだ。

しかし浦河騎手本人もすでにドリームメーカーを抑える事が出来ないと自覚していたらしく納得して村木に鞍を渡した。

もちろんこのレースだけで次回からはまた浦河騎手に乗ってもらう。

ドリームメーカーの花嫁は浦河騎手以外にいないのだから。



「フンガーーーーーッ!!」

700㎏の真っ赤なマッスルボディーは興奮状態で雄叫びを上げた。


他の馬が多少驚くそぶりを見せる中、インフェルノはまるで気にするそぶりも見せずにゲートに入っていく。



さぁドリームメーカー!インフェルノに見せてやれ!おまえの怒りのパワーを!



『BCターフ!


全馬14頭がゲートにおさまって…


スタートしました!』


綺麗なスタートをする各馬…一頭出遅れた馬がいる。ドリームメーカーだ。


「おい飛田!?おまえの牛が出遅れたぞ!!」

困惑する龍田。


いや!これでいい!!作戦通りうまく出遅れた!


常に抜群のスタートをするドリームメーカーに、村木がゲート内で手綱を揺さぶりわざと出遅れさせたのだ。


最後方からのスタートとなったドリームメーカーは必死に前に行こうとするが、村木の必死の抑えにスピードを上げられずにいた。


「飛田!?どういう事だ!?」

よしお客さん!説明しよう!


ムツ・ファイブマン教授の研究結果を元に、俺たちは幾度と戦略会議を開き生まれた作戦、ミッションネーム【猛虎打線85】。

群れのボスに追われるから必死に逃げる…ならば逆にボスを追えばいい。単純な発想から生まれたこの作戦だが、(ソウル)(ハート)で走るドリームメーカーだから決行できる作戦だ。

イレ込めばイレ込むほどその爆発力は増大し、村木が手綱を抑えれば抑えるほど破壊力を生む。多少の気力を消費する事になるが脚は溜められる。

蓄積された爆発力と破壊力は村木が手綱をニュートラルにした時…核兵器の如く殺傷能力を秘めたヤツの姿が見られる…はずだ。



ちなみにミッションネームの【猛虎打線85】とは1985年に日本一になった阪神タイガースの事だ。

当時、前年までBクラスの常連で最下位が指定席だった阪神タイガースが85年に突然変異の如く日本一に輝いた。

【這上がる者の恐さ】

を見せつけた吉田監督に習いこのミッションネームを採用した。


あの時のランディ・バースに打てない球はなかった。

あの時の掛布はすでにハゲていた。


さぁドリームメーカー!我慢だ!今は我慢だ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ