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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン3 chapter4
172/364

夢見る幼駒じゃいられない!-1

俺は思い出していた。


もう10年以上も前…この京都2000m秋華賞の事を…。



あの日、逃げるドラゴンベリーは桜花賞とオークスを制して牝馬三冠に王手をかけていた。

その遥か後方からもの凄い鬼脚でやってくる黒い影…ファンタジアだ。

前走ローズSで同じ展開で同じ相手に2着。早めのスパートだった。

しかしまたも届かず2着…。本当に悔しいレースだった。


無敗の牝馬三冠馬になったドラゴンベリーは母になってからも素晴らしい仔を生み続けた。

日本ダービー、天皇賞春秋、宝塚記念を制したドラゴンウアロー。

香港カップ馬ドラゴンウイング。

日本ダービー馬ドラゴンスペシャル。



一方秋華賞後に重賞3勝したファンタジアの仔はまったく結果が出せなかった。


しかしやっと彼女の仔馬たちが日の目を見る日が訪れる。


ファンタジスタだ。ダンスインザダークとの交配で生まれたファンタジスタは日本ダービーと有馬記念、そして世界最高峰のレース凱旋門賞を制したのだ。


凱旋門賞…おそらくこの1勝でドラゴンベリーに母として並んだだろう。



ターフに目を向ける。


馬群に身を委ねるシャイニングハート。

ファンタジスタより2つ下のオペラハウスとの交配で生まれた娘。


母のキャリアに刻むはずだった秋華賞のタイトルに娘が挑む。


競馬と言うドラマはこうして夢綴られていく…。



ファンタジアからシャイニングハートへ。

そして親父から俺へと。



『さぁ最終コーナー回って人気のシャイニングハートが一気に馬群を突き抜けた!』


《ホースニュース》

-母に捧げる秋華賞-



秋華賞(GⅠ)でまた新たなドラマが誕生した。

シャイニングハートが見事な勝利をおさめて優勝したのだ。

シャイニングハートと言えば母ファンタジア。ファンタジアの秋華賞2着から早10年以上経ち、娘が母の成し得なかった悲願の秋華賞を制覇した。


今は亡き名牝ファンタジアの墓石に新たな栄光が刻まれる事だろう。


馬主の結城氏は中央GⅠ初制覇。中央の馬主になって2年目の快挙となった。



祖母はエリザベス女王杯馬のダンステリア、母は重賞3勝ファンタジア、兄は凱旋門賞ファンタジスタ…


【流星の系譜】


次はどんな伝説を築くのか…我々の心を踊らせる。

俺は自分の趣味の部屋として、元は親父の書斎だった六畳ほどの部屋にゲームやらマンガやら大人のDVDを持ち込み一人の時間を楽しんでいる。そこにはファンタジスタやドリームメーカーのパネルも飾っており、それを眺めて酔いしれる…至福の時間だ。

そして新たにシャイニングハートの秋華賞のパネルをその自室に飾り最高の至福を味わっていた時に偶然あるノートを発見した。

俺が飾ったファンタジスタやドリームメーカーのパネルの横に、親父が設置したファンタジアとダンステリアの写真があり、それを新たに綺麗な額に取り替える作業をしていたら、ダンステリアの写真の裏に隠すようにノートが挟まっていたのだ。


「なんだこれっ!?」

俺はそのノートを見て驚きのあまり声を出した。


古くてボロボロのノートはタイトルがなく、中を見ると親父の字でビッシリ書かれてあり、見た感じ牧場作業の日々を綴った日記のようであった。


あの親父が日記!?


初めは大笑いしたが、それを読み進める内に俺はこの牧場の歴史や親父が目指した【黄金の血統】の存在を知る事になる。


何より俺の心を掴んだのはダンステリアの母【ダンスガール】の記述であった。



ダンスガールは親父が海外から買ってきた未勝利馬であった。俺が小学生低学年の頃であるから30年近く前である

その先祖は俗に言う【セントサイモン系】。日本でもヒンドスタンが日本にその血を持ち込み三冠馬シンザンと言う名馬を世に送り出した。

現在では牝系の系譜に微量の名を残すだけで父系でセントサイモンを名乗る馬はほぼ消滅してしまっている。


その頃、うちの牧場は社来の吉野善吉会長と連携を組みかなりの繁栄をしていたらしく、たしかに俺が小学生ぐらいの時にはちょっとしたお坊っちゃんだった記憶がある。


今から20年前、俺が中学生の時に俺が初めて夜番に就いて、初めて取り上げた命はこのダンスガールが生んだダンステリアだった。


俺はふと気づいた事がある。ダンステリアの事はよく知っているが、ダンスガールについてはほとんど知らないのだ。そりゃそうだ。だってダンステリアが生まれるまで俺は牧場にまったく興味がなかったし、ダンスガールがダンステリアを生んだ後にどうなったかも記憶にない。

俺はむさぼるように親父の日記を読み進めた。


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