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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン3 chapter3
171/364

夢は陽炎-6

「ファイブマン教授の分析結果が出ました。インフェルノを分析した教授が『これだけの馬は過去にもいない』と驚いていましたよ。」


宝田は書類の束からひとつを選んで俺たちに見せた。


「まずは…インフェルノの過去の成績を見てください。


昨年、英国ダービー1着、エクリプスS1着、キングジョージ1着。俗に言うBHBサマートリプリ達成ってヤツですわ。

まず英国ダービーは、2番人気のシャマルティンが大きく崩れて最下位になっています。次にエクリプスSは3番人気の馬が。キングジョージでも3番人気馬がえらい掛りようで惨敗しています。』


なにが言いたい!?

俺はちょっとイライラした。



「続く凱旋門賞はインフェルノ自身が出遅れてさらに道中不利を受けて2着。このレースでは5番人気の馬がインフェルノに不利を与えて崩れました。

そして今年はドバイとキングジョージ、今日の凱旋門でうちのドリームメーカーが別馬のように荒れまくりました。

常にインフェルノと一緒に走る馬の内の一頭が激しくレース中に調子を落としています。」


宝田はグイっとコーヒーを飲みほし一息入れた。


「偶然じゃないの?」

相羽がそれがどうしたの?って顔で聞き返した。


「たしかに偶然に見えますが…決して【通常のレース】では有り得ない【力関係】が動いているとしかドリームメーカーの度重なる【暴挙】の理由が考えられません。」

宝田がさらに新たな書類を開いた。

「【生態体系】。群れで暮らす動物には必ず上下関係が生まれます。馬もこの類に入ります。

もちろん【通常のレース】ではほとんど影響のない事ですが、このインフェルノのレースに関しては【ひとつの群れの秩序】が機能してしまっているのです。」


はぁ?ちょっとまて宝田!?そりゃ考えすぎだ。

仮に、上下関係が生まれたとしよう、だったら王様であるうちのドリームメーカーがなぜ負けなきゃならんのだ!?


「残念ながら…ドリームメーカーはトップにはなれないんですわ…。

なぜならインフェルノが生まれながらの【リーダー体質】だから。それも猿類によく見られる【帝王体質】です。」


よし!もういい!そんなヨタ話に付き合ってはられない。

「そしてもうひとつ。ドリームメーカーも生まれながらの【王様】である事。群れにトップは2頭もいりません。そして常に牙を剥くのは【群れの2番手】の馬なのです。

この2番手の馬こそドリームメーカーを含む崩れた馬たちです。」


だからなんでうちの王様が2番手なんだ!?


しかし意外とみんなは真剣に聞いていた。



武田調教師が宝田に聞いた。

「じゃあなにかい?

インフェルノの【帝王体質】が触発して【通常のレース】では有り得ない【群れの秩序】を生み出しているってのかい?」


「僕もファイブマン教授もその見解は一致してます。」


続いて瑤子が、

「群れの2番手ってどう言う基準なの?」

と身を乗り出して聞いた。


「通常の群れは新入りは一番下。トップは戦いによって入れ替わります。しかしこのインフェルノに関しては【帝王体質】によって不動のトップ。2番手は自然とその他の馬になるわけですが、これは【本能】ですわ。基準なんて明確なもんはありません。ただ王様であるドリームメーカーが自然と2番手になる事だけは確かです。」


だからなのでドリームメーカーがかかってしまうんだよ!?


「常に2番手はトップの座を狙っています。これも本能ですわ。

ドリームメーカーはこの本能に従って戦ってしまうのです。つまり【競馬】ではなく【自然の本能】で走ってしまうわけです。特にドリームメーカーのような人には抑えられない馬にはどうする事もできません。」


「だったら違う馬が2番手になったらドリームメーカーも普通に走れるわけ?」

相羽のババァがいい事を言った。


「道理ではそう言えますが、まず無理です。

さっきも言いましたが、ドリームメーカーも生まれながらの【王様】です。自らこの地位は下げません。」


だんだん腹が立ってきた。じゃあ仮にだ!仮にそうやって群れの秩序なんてのが発生したとしよう、だったら3番手以下の馬はどうなってるんだ!?普通に競馬しているじゃないか!?


「そこが自然の深いところですね~」


汚ねぇ!人間が踏み込めない自然の深さに逃げやがった!


「さっき宝田さんが言った勝てないわけでもないってどう言う事なの?」

瑤子の問いに宝田がさらに新しい書類を広げた。



「僕が考えられるのは2つの可能性です。

ひとつは【群れ】で無ければいい。マッチレースになれば【秩序】からドリームメーカーを解放できます。

しかし現実的にこれは不可能です。

今のレース体系でマッチレースなんてほぼ皆無。そしてインフェルノのローテも決まっていますからね。チャンスはあと一回です。


ならば2つ目の可能性…まず騎手を替えなければなりません。

無理に抑えてもドリームメーカーがやる気を無くす事が無いのは過去のレース…たしか2走目の500万下でしたか実績はあります。

あの頃より100㎏増えたドリームメーカーを抑えるには浦河騎手ではもう無理です。なんせ1t引っ張る馬ですから。

次のBCターフでは男の剛腕騎手を使うべきです。

…まぁこれは浦河騎手以外のジョッキーをドリームメーカーがちゃんと乗せればの話ですが…」


ん~…納得できんが…今は納得しなきゃならんような気がする。


突然武田調教師が言葉を発した。

「…よし…。村木で行こう…。」


そうか!!村木がいた!

村木ならドリームメーカーもちゃんと乗せるだろう。


「ただ…やはりドリームメーカーよりインフェルノの方が純粋に競走能力は上です。もし成功しても結果に繋がるとは言い切れませんよ。」


宝田がひとつ楔を打ったがその顔はなぜか笑顔だった。


とにかく信じよう。ヤツは…ドリームメーカーはこのまま終わる馬じゃない。

いや…終わらしていけない馬だ!


ここで弾みをつけて来年の日本古馬王道制覇に繋げなければ…。


俺たちは次走のBCターフに向け体制を整え始めた。

秋華賞(GⅠ)


牝馬三冠の最後を飾るレース。


今日の1番人気はうちの牧場生産のシャイニングハート。


牝馬ながらダービー2着、前走ローズSでも大差勝ちをおさめた。




2番人気はオークス馬アドバイザキュート。


しかし前走シャイニングハートに大差負けしておりオッズはかなりの差ができた。




『さぁ秋華賞!


ゲート入り完了!




スタートしました!』




ファンタジアの娘が因縁の秋華賞のゲートを飛び出して行った…!

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