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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン3 chapter3
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夢芝居は初舞台-4

シャイニングハートは昨年新馬戦を勝ち、続く条件戦とホープルSを連勝。チューリップ賞を2着で桜花賞4着。距離的にもオークスでは有力とされていた。


本来なら俺が持ち馬としてデビューさせるつもりだったが、当時大井競馬場の馬主だった結城氏に頼まれ売る事となった。

オペラハウスとファンタジアの仔。ファンタジスタの半妹だ。



結城氏は大井競馬場にこの人ありと言われた名物馬主で、ファイナルアンサーなどで数々の地方タイトルをとっている。

その結城氏の中央馬主初年度にうちのシャイニングハートを所持した。

結城氏にとって今回の牝馬でのダービー挑戦は競馬サークルで名声を上げるためのパフォーマンスのようなものなのかもしれない。


俺は5月五週、生産者として日本ダービーを観戦すべく東京競馬場に向かう事になった。


種付けシーズンになりうちの繁殖馬たちも種付け場に通う中、ヒシアマゾンが無事日本を飛び発ち欧州へと向かった。

ブレイブハートの仔の受胎を確認しだい帰国する予定だ。




そしてオークスをアドバイザキュートが制し、ダービーウィークに突入した。


日本ダービー(GⅠ 3歳限定 東京競馬場 芝2400m)

『日本競馬最大の祭典日本ダービー!

今年もダービー馬の称号を獲るため狭き門をくぐった18頭の精鋭がターフを舞います!

今年は1頭牝馬も参戦しており、注目です!』


俺は瑶子と遊馬と東京競馬場にやってきた。

何度来ても日本ダービーは心が踊る。一昨年のこの舞台でファンタジスタが勝ち俺は表彰台に登った。

そして今年はその妹のシャイニングハートが出走する。

「ロマンだね~」

こう言わずにはいられない。



今日の1番人気はスターレジェンド。皐月賞は切れを欠き敗れたが今日は万全の仕上がり。

2番人気は皐月賞馬ウルトラソウル。2歳チャンプでこちらもグリグリの対抗馬だ。


3番人気は龍田のドラゴンスペシャル。名牝ドラゴンベリー最後の産駒。ドラゴンアローとドラゴンウイングの全弟だ。


そしてうちのシャイニングハートは…11番人気。まぁ当然だ。騎手も主戦の浦河美幸が欧州参戦でスケジュールが合わず、安田富一が手綱を握る。


トミーか~!渋いね…。


トミーこと安田富一は美浦のベテラン騎手。

初めて中央競馬の全競馬場で重賞勝ちをした(後に滝豊も記録)玄人好きする職人騎手だ。


ダービーの勝利はなくあまり大きな舞台に出る機会は少ないが、夏のローカル競馬では常にトップの成績を打ち出している。


ちなみに俺の好きな騎手ナンバーワンでもある。



「頼むぞトミー!」


俺の声援はしだいに大きくなっていた。


「あら?今日、美穂さんはいらっしゃらないんですか?」

瑶子が結城氏に訪ねた。


「ええ…ちょっと…」

明らかに戸惑いを見せる結城氏。


「どうかしたんですか?」

聞いちゃいけない気がしたが俺は聞いてしまう人間だ。


「実はちょっとうちの病院に入院しておりましてね…。」

結城氏は目を細めた。


「えっ!?どこかお悪いのですか!?」

瑶子が驚きながら聞き返す。


「…ええ。娘はダンステリアが大好きでしてね。もちろん実際のダンステリアを見たことはないのですが、競馬の世界に足を入れた私の勉強材料として購入した現役時のダンステリアのDVDを娘が見ましてファンになったのです。ダンステリアの唯一の娘であるファンタジア。そのファンタジアの仔馬たちも本当に応援していましてね。ファンタジアの娘のシャイニングハートが日本ダービーを走る姿を見れば少しは【気持ち】的に元気になるかと思いまして……」


なるほど…オークスではなくダービーに出走した理由は美穂さんを元気づけるためだったのか…。


「宝田さんには…あっ…美穂さんの彼には知らせてあるんですか?」

俺は思いきって聞いてみた。



「宝田くんには…まだ知らせてないんだ。

娘が絶対に知らせるなと…。夢を追っている彼の邪魔になりたくないと言っていましてね。

それに…抗癌剤の副作用もあって彼には会いたくないようです」


結城氏の言葉に俺も瑶子も異常な反応を見せた。


【抗癌剤】…。


これ以上結城氏から話を聞く勇気がなかった…。


シャイニングハートがんばれ…。


今の俺にできる事は祈る事だけ…。

シャイニングハートが美穂さんを励ます走りをしてくれるように…と。


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