夢は夜ごとの狂奏曲-2
「雅樹さん怒っているでしょ?」
高橋氏を見送った後、瑤子が俺の顔を覗き込んで言った。
そりゃ怒っているさ!
ヒシアマゾンはノーザンダンサー系だ。サンデーサイレンス系(母にノーザンダンサー系が入ってない)ならきっといい仔が生まれるんだよ!
俺より血統に詳しい瑤子ならわかっているはずだ。
「雅樹さん私はね…ヒシアマゾンには非サンデーサイレンス系の牝馬を生んで欲しい。
そして出来るだけノーザンダンサーの血を薄くしたいの。
じゃなきゃ将来的に付ける種がなくなるわ。」
いやまったく理解できない。
「ビンゴ…ファンタジスタだって恐らく種牡馬になったら苦労すると思う。
だって今やノーザンダンサーの血が入ってない有力な繁殖牝馬の方が珍しいし、サンデーサイレンス系の種牡馬はたくさんいるわ。
両方の血が入ったファンタジスタは活躍の場が狭くなる。」
頭が混乱してきた。
「ブレイブハートは日本の血の入れ替えには最適の馬だわ。現役の実績だってヒシアマゾンに見合っていると思うしね」
ノーザンダンサーとサンデーサイレンスの血が多すぎる事が問題だと言いたげな瑤子。そんな先のビジョンまで俺には考えられないが、とりあえず今回は瑤子に従おう。
ヒシアマゾンはデビルカッターの仔を産んでから欧州に旅立つ事となった。