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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン2 chapter5
134/364

狩人-5

翌日のジャパンカップ(GⅠ 東京競馬場 芝2400m)

美幸はドリームメーカーを見て驚いた。


赤い馬体に黄金のタテガミ。


厩務員の原辰巳に美幸は聞いた。

「原さんが金髪に染めたんですか?」


「そんな事しないっスよ!

多分…栗毛時代から変わらなかったタテガミがちょっと遅れて進化したんと違いますか?」


適当に理由をつける原であった。



赤鹿毛の670㎏は黄金のタテガミを携えた。

美幸はそのタテガミが翼のように見えた。


【黄金の翼】



この馬はいったいどこまで飛んでいくのだろう…。



パドックで驚いてひっくり返る飛田雅樹を横目に、美幸は黄金の馬に股がった。


『さぁジャパンカップ!

東京競馬場に押し寄せた大観衆の目の前に本日の主役達が入場してまいりました!


1番人気はロンバルディアと三田 崇!

史上最高の10億円馬はその期待を超える活躍!宿敵ファンタジスタとの決戦を前に!

いざ国際GⅠジャパンカップ獲りへ!



2番人気は…見てくださいこの風貌!

真っ赤なボディーに黄金のタテガミ!そして周囲に威嚇ともとれる鋭い眼孔!

おまえはいったい何者だ!?ドリームメーカーと浦河美幸が威風堂々ターフに現れました!割れんばかりの大声援の東京競馬場!

美女と野獣のコンビは今日も我々を驚かしてくれるでしょう!



3番人気はフランスから参戦のイクサンプロバンス!フランスダービー馬が日本にやってきました!


4番人気アメリカ馬バリーボンズ!前走カナディアン国際を制しました!



5番人気は皐月賞馬ホワイトファングと滝豊!


6番人気ダービー馬のアドバイザキューブ!本日は三田崇から池沿騎手に乗り替わりです!


7番人気は菊花賞馬のフェニックス!原田成二騎手との新コンビです!



8番人気ライラポイント!今日は安東勝己騎手が手綱を握ります!


以上16頭!』




美幸と共にターフに現れたドリームメーカー。見る見る内に黄金のタテガミは逆だっていく。ロンバルディアへの執念は半端じゃない。



美幸が叫ぶ。

「ドリームメーカー吠えろ!」


「ウガァーーーーーーーッッ!!!」


百獣の王と化したドリームメーカーの狩りが今始まった。


『ジャパンカップの舞台で今年も激闘が繰り広げられます!


全馬ゲートに入りました!


ゲートが開いてスタート!



まずはホワイトファングとバリーボンズの先行争い!

続いてイクサンプロバンス、その外1番人気ロンバルディア、それを見るようにライラポイントとアドバイザキューブ!

フェニックスがこの位置にいて…ドリームメーカーは最後尾!?

今日はドリームメーカーシンガリでの競馬です!場内どよめきがあがっています!』



美幸はドリームメーカーに聞いた。


今日はこの位置でいいの?


ドリームメーカーは前を見据え答える。


「ウリリリリィーーーーッッッッ!!!」



わかったわ…!前の馬すべてを差しきってやろう…!



『さぁレースは残り1000mを切りました!


バリーボンズが先頭!

ホワイトファングはやや抑えた!

続いてイクサンプロバンスとロンバルディアが並ぶ格好!

ライラポイントは少し下げてアドバイザキューブが前に出る!

フェニックスも徐々に前へと位置を上げる!


ドリームメーカーは動かず!最後方で追走!


レースは残り800mの標識へと差し掛かります!』



美幸はムチを高らかに上げた。


先頭が800mの標識を通過したその時!!


美幸のムチは降り下ろされドリームメーカーに刺激を与えた。


「ウッッ…シャーーーーーーーッッッッ!!」


奇声とも取れる雄叫び。ドリームメーカーの溜りきったフラストレーション、ストレス、そして怒りが一気に爆発した瞬間だった。

これまで最大の大噴火。まさにメテオストライク。その先に見える者…ロンバルディアしかいなかった。


『ここでドリームメーカーが動いた!

フェニックスをかわして前へ前へと加速する!

先頭はバリーボンズだが…ホワイトファングが競りかける!そしてロンバルディアが追い始めた!


ロンバルディアが一気に先頭に!

直線に入ってロンバルディアが一気に抜け出した!

そして後方、大外に持ち出したドリームメーカー!現在8から9番手!


ロンバルディアが先頭!

しかし…しかし後方から凄い脚で1頭追い込んできたーーーッッ!


ドリームメーカーだ!

ドリームメーカーがライラポイントとアドバイザキューブをかわして5番手に!

さらにバリーボンズもかわして4番手!

まだまだ加速を増すドリームメーカー!

残り200でイクサンプロバンスとホワイトファングも一気に差した!

前はロンバルディアただ1頭!!!


ロンバルディアも凄いスピードで疾走するが…ドリームメーカーの方が速いぞ!その差はすでに3馬身!


残り100!

ロンバルディアにムチが入るがドリームメーカーが一気に捕える!』


あと1馬身…美幸はムチを降り上げた。

今日はあなたが主役よ!!ドリームメーカー!!

美幸のムチが降り下ろされた時…三田の肩はガックリ力を無くした。


『浦河美幸の左ムチ!!


ドリームメーカーさらに伸びる!!!



ロンバルディアはかわされたーーーッッ!!


覇王の牙城は崩されて…


ドリームメーカーが1着でゴーールッッ!


なんと…なんとなんとなんとッッ!?

ドリームメーカーがジャパンカップ連覇ーーーッッ!

浦河騎手は3週連続GⅠ制覇ーーーッッ!



ロンバルディア破れる!!』


「ホウホウホゥーーーーーーーッッ!」

ドリームメーカーの勝利の雄叫び。美幸は立ち上がり拳を観客席に突き出した。

美幸の珍しい大きなパフォーマンスに、東京競馬場は盛大な浦河コールに包まれた。



地下馬道を渡り帰還した美幸とドリームメーカーに武田調教師が近寄ってきた。

「嬢ちゃんッッ!!ようやった!!」

かなり興奮している。


師匠の坂田も走り寄ってきていきなり美幸を抱きしめて勝利を讃えた。


武田も坂田も厳しいホースマンだ。弟子を誉める事など今までほとんどなかった。

この二人から労いをもらった時初めて美幸は実感した。

『騎手になって本当によかった』と。


【人馬一体】


このレース、美幸とドリームメーカーはまさにひとつになっていた。


「スバラシ~ィだがね~」

片言とは言えない流暢な名古屋弁。ベンゲル調教師とダーリージャパン高橋氏が並んでその光景を見ていた。

「ロンバルディアは負けてしまったのはかなり悔しいがね…」

高橋氏の方は残念な表情を浮かべている。

しかし落胆の様子はない。


「ミスター高橋?あのウラカワってプリティーな騎手が例の?」

ベンゲル調教師が問う。


「ああそうだ、ミスターベンゲル。彼女が先日、飛田夫人から君や僕に話を持ってきた騎手さ。まだ彼女からの返答はないらしいがね。」


「モハメッド殿下はなんて言っとるんだかね?」


「君の目を信じるってさ…ミスターベンゲル?」


「OKミスター高橋!合格だかね。なにがなんでも彼女を口説こう!」


「ハハハ!ミスターベンゲル!それじゃあこの後の飛田氏の祝勝会で君のお手並を拝見する事にするよ!」


「オーライ!ミスター高橋!ワタシのラブコールはベリーストロングだかね!きっと彼女は僕に落とされるさ!」



怪しいオッサンの会話を知ってか知らずか、美幸は笑顔でドリームメーカーと表彰式に向かった。


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