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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン2 chapter4
121/364

鬼神-1

9月四週

オールカマー(GⅡ)

中山競馬場 芝 2200m



『オールカマーが間もなく発走となりました!


本日1番人気はドリームメーカー!今日はなんと680㎏!

まだまだ進化をやめません!


鞍上の浦河美幸は約四ヶ月ぶりの復帰となる本日のレースで4勝を挙げております!』


美幸はターフに帰ってきた。

その復帰の日に、午前中に2勝、午後に入って2勝とすべて下位人気での勝利。これ以上にない復活のパフォーマンスを見せつけた。


夏はドリームメーカーと共に灼熱の太陽の下、厳しい調教を行ってきた。それはドリームメーカーの調教と言うより、美幸自身への訓練と言う意味が強い。


まさに自分の壁を突き破るために…美幸の夏があった。



『さぁ今日は無事にターフに入ってきましたドリームメーカー!

デビュー以来、一度も放牧に出される事なく2度目の夏を厩舎で過ごしました。

夏を越すたびに強くなって帰ってきます!

さぁ今日もあの雄叫びを聞かせてくれっ!!

赤鬼ドリームメーカー!!』



ターフに降りたドリームメーカーは空を仰いだ。そして叫ぶ。

「カッゾーーーーーーッッッ!!!」


美幸も空を仰いだ。

「勝つわよーーーーッッッ!!!」

あの空の向こうにいるステージクロスに聞こえるように美幸は新たな決意で叫んだ。



見ていてね…ステージクロス…。



美幸はドリームメーカーと共にゲートに向かった。


『さぁオールカマー!


スタートしましたっ!』


凄まじい勢いで飛び出したドリームメーカーと美幸。

赤い弾丸は一気に先頭に立った。


宝塚記念の後日…

美幸は武田厩舎でドリームメーカーに向き合った。

レース前に自ら戦う事を放棄したドリームメーカー。闘志の塊とも言うべきこの鬼神をよく知る美幸には不思議でならなかった。


しかし向き合ったドリームメーカーを見て美幸は、いつもとは少し違う雰囲気を感じた。


ドリームメーカーにとって美幸こそが自分の伴侶であり、美幸にとってもドリームメーカーが最高のパートナーであるのだ。


いつもとは違うドリームメーカーの優しい瞳を見て美幸は悟ったのだ。


「ごめんねドリームメーカー…

もう逃げたりしないわ…」


この日から二人の灼熱の特訓は始まったのである。



『さぁレースは1000mを通過!

ドリームメーカーが先頭!後続とは9馬身程差をつけて爆進します!』



どうしたっ!?まだまだよっ!


美幸はドリームメーカーに怒鳴った。



『ドリームメーカーまたペースを上げた!

これは大逃げか!?

はたまた暴走か!?』



最終コーナー手前…

美幸はムチを構えた。

『ドリームメーカー先頭で直線に向いた!

まだ後続とはかなり差があるぞ!』


高らかと降り上げられた美幸のムチ。

日本ダービーでこれから一生後悔するかもしれないステージクロスへの最後のムチの感覚は今もまだ全身から離れない。



もう2度と逃げない…


もう後悔もしないわ…


見ていてステージクロス!




ドリームメーカーに降り下ろされたムチは猛る野獣に火をつけた。


『ドリームメーカーさらに差を拡げる!

これはなんと言う強さだ!?


ドリームメーカーが大差をつけてゴールッッッ!』


今、美幸とドリームメーカーの目線に宿敵ロンバルディアの尻尾がはっきり見えていた。


『放送席?放送席?

それでは見事オールカマーを制したドリームメーカーの浦河美幸騎手にインタビューです!


見事な逃げ切りでしたね?』


美幸『ありがとうございます。』


『浦河騎手自身も久しぶりのレース復帰でいきなりの重賞勝利!どういったお気持ちですか?』



美幸『本当に嬉しいです。』


『レース前やレース中はどのような事を考えていましたか?』



美幸『私に競馬の厳しさを教えてくれたステージクロスに見てもらいたくて必死にがんばりました。』



『きっとステージクロスに届きましたね?』



美幸『そうであれば嬉しいです。』



『では…ステージクロスに向けてなにか一言あれば…』



美幸『…はい。



ステージクロス~!

私も日本でがんばるから!

あなたも欧州でがんばって!

来年…あなたに会いにいくからねっ!』



『ありがとうございます!

本日5勝の浦河騎手のインタビューでした!』



美幸の言葉に中山競馬場は割れんばかりの拍手がおこった。


7月末、見事に自力で立ったステージクロスは、宝田と共により医療設備の整っているダーリーグルーフ゜欧州拠点へと旅立った。

現在の馬主からダーリージャパンへと売却され持ち主が変わり、怪我の経過次第により欧州で競走馬として再スタートするか繁殖に上がるか検討される事になっている。

ダーリージャパンの高橋氏がシンボリルドルフの大ファンである事から提案され実現した。




もちろん欧州で宝田と共にこのレースを見ているに違いない。



美幸の声と気持ちはステージクロスにしっかり届いているだろう。


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