漆-1
「ウィナーーーー！」
高らかなドリームメーカーの雄叫び。
それはロンバルディアに向けての挑戦状のようだった。
一緒に走ったすべてのレースで先着を許したロンバルディアに勝つため、執念を燃やすドリームメーカー。
負けそうになったら噛みついてやりなさい…！止めないから！
美幸もすでにドリームメーカーと言う世界の住人となっていた。
『京都競馬場3200m
天皇賞(春)ＧⅠ！
枠入り完了！
スタートしました！』
各馬綺麗なスタートだ。
『ドラゴンウイングがハナに立つ！
その後ろにデーモンヒル！
２馬身離れて集団先頭にロンバルディア…
ドリームメーカーはロンバルディアに馬体を併せる!!
ハナを切ると思われたドリームメーカーはロンバルディアと共に３番手、集団を引っ張る位置をとった！』
「なんだよ美幸!!
もっと前に行けよ！」
三田が美幸に叫んだ。
「残念！今日は最後まで一緒に付き合ってもらうわよ！」
ドリームメーカーはドラゴンウイングと共に逃げると大方の予想をされていたが、美幸はドリームメーカーがロンバルディアに併せる事を予測していた。
だってこの位置にいないと噛みつけないじゃない…！
『正面スタンド前を通過して向こう正面に向かうコーナーに入ります。
先頭はドラゴンウイング！５馬身のリード！
デーモンヒルが２番手！
その後ろ２馬身程空いて集団の先頭にロンバルディアとドリームメーカー！
やや後方にライラポイント！』
レースは残り1000mを通過する。
『デーモンヒルが早くも仕掛けた！
残り800の標識の手前！ドラゴンウイングに迫る勢いだぞ！
ロンバルディアとドリームメーカーも並んで着いていくようだ！
一気に差が縮まる！』
原田は早めのスパートをかけた。ロンバルディアよりなるだけ距離をとっておきたかったのだ。
『ドラゴンウイングに並んだデーモンヒル！
レースは600の標識を過ぎようとしています！』
２頭並んで600の標識を通過した。
『さぁ一気にロンバルディアが上がってきたぞ！
ドリームメーカーも必死に喰らい付く！
直線に向いて先頭はドラゴンウイングとデーモンヒル！
しかし一気にロンバルディアが差を摘めた！その差２馬身！
ドリームメーカーは遅れたか!?
いや！ロンバルディアに半馬身遅れたが差は広がらない！』
美幸は直線に入る前にすでにムチを２発入れている。
ロンバルディアの加速についていくためだ。
『さぁロンバルディアとドリームメーカーが前の２頭をかわすぞ！
残り400！
先頭はロンバルディア！２番手には一緒に上がってきたドリームメーカー！
２頭の争い！』
ここまでは美幸がロンバルディアに置いていかれる事なくドリームメーカーを走らせてきた。
その差は半馬身！
しかしこの半馬身が遥かに長い差である事を美幸は感じていた。
こんなに…次元が違うの!?
三田がムチを降り下ろした瞬間…それはあまりに衝撃な幕切れだった。
『ロンバルディア！
ロンバルディアがさらに加速！
ドリームメーカーは成す術なし！
ロンバルディア！
ロンバルディアが５馬身ちぎってゴール!!
三田 崇は初ＧⅠ制覇！
２着にはドリームメーカー！
３着は追い込んできたライラポイント！
ロンバルディア！
まったく次元の違う走りです！』
１着ロンバルディア
三田騎手のコメント
『やっとＧⅠジョッキーになれました。
馬主さんや関係者の方に感謝しています！
本当に強い馬です！次の宝塚記念も期待してください。』
ダーリージャパン高橋氏
『勝利は信じていた。しかし予想以上の強さに驚いている。
昨年の屈辱を晴らすためにファンタジスタには１日も早く復帰してもらいたい。
今なら絶対に負けないよ。』
２着ドリームメーカー
浦河美幸騎手のコメント
『立派な結果だと思います。次は必ずさらにいい結果を出せるようにがんばります。』
武田調教師のコメント
『勝った馬が強かった、それだけだ』
３着ライラポイント
滝豊騎手のコメント
『長い距離でいい走りをする馬だ。ただ今日は相手が悪かったね。
え？ファンタジスタなら勝てたかって？
ハハハ、まぁいい勝負したんじゃないですか』
４着デーモンヒル
原田成二騎手のコメント
『いやまいったよ。完敗完敗！』
５着ドラゴンウイング
安東勝己騎手のコメント
『ちょっと距離が長かったね。』
馬主、龍田仁氏
『な、なんだ!?
またキミか!?
何度言えばわかるんだ!?
だから負けてはいない!!
なぜ私が負けなくてはならないのだ!?
キミ失礼だな!!
おっと携帯が…失礼するよ…。
もしもし…負けちゃったよ……
ん？
オイっ!!盗み聞きするんじゃない!!
あっちに行きなさい！』
上位５頭の次走は宝塚記念だ。
