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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン1 chapter1
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流星-11

放牧作業中、突然瑤子の悲鳴が聞こえた。宝田と俺が駆けつけると今年生まれたフォーリンレインの仔【コナン】(瑤子命名)が足を引きずっていた。柵にぶつけてしまったらしい。急いで宝田の手当てが始まった。

幸いコナンは軽傷ですんだ。瑤子の不注意で興奮させてしまい柵に激突したのだ。

母馬のフォーリンレインは先ほどからヒンヒン鳴いている。


落ち込む瑤子に宝田が声をかけて慰めている。


俺は仔馬と離されて取り乱すフォーリンレインをなだめていた。



その日からコナンに対する瑤子の気の使い方が異常だった。時間があるとコナンと戯れる瑤子の姿が頻繁に目撃されている。

それによって信じられない事態になったのは種付けシーズンが終わった時の事。


無事11頭の種付けが終わり、次は母と仔を離す別れの作業がもう目前となった時、放牧に出されたコナンは足早に母親から離れ瑤子を探して鳴き出すのだ。


瑤子もすでに親心がついたのか、その溺愛ぶりは半端じゃない。



昔、ヨーロッパの牧場で自ら母親から離れ担当厩務員に親代えした仔馬の話を聞いた事がある。後の英国ダービー馬になったそうだ。

瑤子とコナンの間で何らかの心の交流があったと思われ心暖まる気持ちになるが、これでフォーリンレインの立場はなくなった。



フォーリンレインはうちで生まれ、岐阜の笠松競馬場で走り、一昨年引退して牧場に帰ってきた。凄まじい気性の荒さで種牡馬を蹴りまくっていた初年度は不受胎。昨年やっと受胎し今年コナンを生んだ。


鮮やかな栗毛はコナンに受け継がれている。

そしてヤンチャな所もそっくりだ。


ビンゴとの別れを考えるとなかなか夜眠れなかった。

俺はあんなに売りたがっていたのに…今じゃ手放したくなくなっている。ダンステリアの生まれ変わり…有り得ない事だとわかっていても、この衝動は抑えきれなかった。


突然俺の部屋に宝田が酒を持ってやってきた。

「ぼっちゃん…いや社長!一杯やりませんか?」

てかもうぼっちゃんでいいよ…。



土佐の名酒、酔鯨。

そのスキッとした味わいとキレのある後味が最高だ。



どうせ寝むれないんだ。宝田と酒を飲んで語る事となった。


宝田のアメリカ時代の話を聞いた。やはりこの男の経験は半端じゃない。感心していた所で酔鯨を飲み終えた。



次に宝田が出した酒は宮崎を代表する芋焼酎、霧島。


芋独特の香りと熟成された麹の旨味がたまらない。是非ストレートでおすすめしたい逸品だ。



話が進むにつれ、宝田が酔いのせいか真っ赤な顔をして言った。

「ぼっちゃん…いや…えーっと…ぼっちゃん。

コナンの事なんですが。ぼっちゃんが馬主の資格をとった時は、ぜひコナンを手元に置いてください。」


?…俺は宝田の言っている意味がわからなかった。


「いやぼっちゃん…僕の経験で言わせてもらいますが…ごっつ…めっちゃ期待できる馬でっせ。

ビンゴよりも…」


そこで宝田はパタッと倒れイビキをかきはじめた。



俺は宝田に布団をかけで霧島を飲みほした。

コナンがビンゴより期待できる?なにを根拠に…?


一流の血統を持つビンゴと、けっして良血とは言えないコナン。


そう…まるで春文と俺のように…。生まれた時から運命なんて決まっているんだ。


俺は宝田が持ってきた三本目の久米島の泡盛、久米仙の栓をあけた。

褒純な香りとフルーティーな味わい。しかし強いアルコール度数で瞬く間に天に登る古酒(クースー)


俺もいつの間にか落ちていた。

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