表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン2 chapter1
106/364

碧-6

浦河美幸の一日は早朝から始まる。

まず自厩舎の馬を調教し、その後依頼を受けている他厩舎のお手馬の調教に出かける。


「おはようございます!」

美幸は武田厩舎に来ていた。


「おう、お嬢ちゃん。ヤツがさっきから遅いって怒っているぜ」

武田調教師が笑いながら答えた。


《ヤツ》とはドリームメーカーの事である。


春に備えて厩舎で休養しているドリームメーカーだが、自ら坂路調教に向かう。

この馬にとって坂路を全力で駆け上がる事がストレス発散になっているようだ。



「まぁ特に指示はない。走りたいだけ走らせてやれ」

武田調教師のお決まりの指示(?)だ。


目の前に来た美幸にドリームメーカーは、


遅っせ~よ…。


と言う険しい視線を浴びせた。


美幸はドリームメーカーからこの視線を浴びるたびに、


「ごめんなさい」


と頭を下げる。


ごめんなさいと言わないと乗せてくれないから、言わざるをえないのだ。


そして今日もドリームメーカーは坂をグングン駆け上がる。


騎手はレース前日から調整ルームに入らなければならない。

レースが終了するまで、世間から隔離されるのだ。

騎手からのレースに関する情報漏れを防ぐ事と、騎手の身の安全を守る事が理由だ。

競馬にはお金が絡む。その昔、騎手と暴力団との八百長事件があり、それ以来、こう言ったシステムが日本競馬に作られたのだ。


美幸は調整ルームで純子がいると楽しいが、純子が違う開催地だったりすると寂しい。


美幸は

(調整ルームなんてなければいいのに…)

とデビュー以来、毎週思っている。

調整ルームに入った美幸は同期の三田 崇を見つけた。

「三田くん!」

美幸の声に反応した三田は、

「美幸…おまえのせいで…彼女と別れちゃったじゃないか…」


昨年にスポーツ新聞にスクープとして載ってしまった美幸と三田の密会写真。

「おまえがどうしても行きたいって言うから…あのフレンチに行ったのが間違いだった…」

三田の彼女は競馬中継のリポーターとして出演しているグラビアアイドルの中槻千春。美幸も三人で一緒に食事をした事がある。


「え~!?ごめんね~!」


そりゃもうあやまるしかない。無理矢理フレンチに連れて行ったのは美幸だから。



「でも…彼女に言えばよかったんじゃない?

私が…その…アッチだって…」


美幸の言葉に、

「バカ言うな!

俺はおまえと約束しただろ?

おまえ自身がカミングアウトするまでは俺の口から他人に言う事は絶対にない!」

激しく言った。



競馬界で美幸の秘密を知っているのは、同期の三田、良き先輩の堀江純子、今や親友のドリームメーカー馬主秘書菱田瑤子、そして師匠の坂田だけだ。


競馬学校時代に三田は美幸に告白をした。

三田の真剣な眼差しに美幸はカミングアウトしたのだった。



「俺はおまえの恋愛は理解できん。

でも、おまえは仲間だから…なにがあっても味方だ。」


美幸は仲間に恵まれたと心から思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ