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【10万PV!!】 競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
シーズン2 chapter1
101/364

碧-1

「ただいま~」


浦河美幸は疲れた顔をして京都の我家に帰ってきた。

「おかえり~お疲れ様~」

一緒に暮らす和光千賀子が出迎えた。



美幸は中央競馬で活躍する栗東・坂田厩舎所属の女性騎手

21歳151cm。

デビュー3年目が終了して通算勝利56勝。

重賞4勝。

そしてGⅠ2勝を挙げている。

中央競馬のCMに馬のちょいエロコスプレで出演し、アキバ系ファンの心を掴んではなさない人気騎手である


一緒に暮らす和光千賀子は、美幸の恋人である。セクシャルマイノリティーを抱える者同士の秘密の関係。

市立病院で看護師として働く千賀子は27歳。

151cmの美幸と対照的に172cmとスレンダーなフェム女性だ。



「今日の有馬記念は惜しかったね~」

千賀子が労いの言葉をかけた。


「うん…でも、惜しかったからさらに悔しい…」

美幸はドリームメーカーという馬で今日の有馬記念を4着と健闘した。


美幸の人生を変えたドリームメーカーとの出会い。600㎏を超える馬体で気性難。

しかしこの馬でジャパンカップという日本競馬トップレベルのGⅠを制する事ができたのだ。


「来年は忙しくなりそうね?」

千賀子の問いに美幸は笑顔で頷きバスルームに入った。


乗馬クラブを営む母親に育てられた美幸は、一般高校の進学ではなく競馬学校の騎手過程に進んだ。父は美幸が5歳の頃に行方不明。

少しでも母親への負担を減らすためだった。


幼い頃から馬と一緒に育ってきた美幸はずっと将来騎手になろうと決めていたのだ。


本当に…本当に辛い3年間の競馬学校生活を乗り切りプロになったが、そこからがさらに辛かった。


師匠である坂田調教師は、騎手から調教師に転身した元GⅠジョッキー。堅気な職人であり、指導も厳しい。

怒られる毎日に美幸は、泣いて夜を明かす事も頻繁にあった。


やっとデビューできたと思ったら、いきなりの落馬。


二ヶ月間レースから離れる事になった。


同期の三田 崇や野田新之助が初勝利を挙げて勝ち鞍を増やしていくのをただ見ているしかなかった。


デビューから半年して、ようやく初勝利。

しかし坂田厩舎の馬以外の騎乗依頼はなく、思うように勝ち鞍を増やす事ができなかった。


昨年の12月4週土曜日阪神競馬場。

ジョッキールーム(競馬場内にある、騎手のための控室)に栗東の武田調教師があわてて入ってきた。


騎手たちに声をかけて回っている。落馬した村木義男騎手に変わって、騎乗依頼をしているようだ。


ドリームメーカー!?


あの暴れ馬は栗東じゃ有名だ。美幸も間近で見たが、あの目は草食動物の目じゃない。

そしてなによりサラブレッドを逸脱したあの巨大な馬体に美幸は恐怖を感じていた。



一通りの騎手に断られた武田調教師は、ふと美幸を見た。


ジョッキールームから出ていった武田調教師はすぐに師匠の坂田調教師と戻ってきた。


まさか…!?



泣き叫び、抵抗する美幸を抱えるように武田調教師と坂田調教師はパドックへと連れていったのだ。



それがドリームメーカーとの出会いだった。



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