表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/126

帝(讃良)に熱弁をふるう史。彼の深遠なる構想は先々成就するのか

「のう‥広瀬王よ‥、翌年からは、舎人皇子を出仕させて、そちを手伝わせたらどうじゃ」

「ははあ‥在りがたき幸せに存じます」

 広瀬王は、舎人皇子が帝から敬遠されて居るので、

思わぬ事態に、小躍りして喜んだ。

「帝、しからば忍壁おさかべ皇子様を、我が【律令】作成の寮にお出で願えませぬか」

 藤原史は、【律】の無い

浄御原令きよみがはらりょう〉を大幅な改正をして、小国ながら唐国(とうこく、現中国)に負けぬ

、【律令体制】を目論んでいた。

「そうじゃのう。そちが望むなら、それも良かろう。

のう‥広瀬王」

「はあ~吾は宜しゅ御座いますが、忍壁皇子様が何とおっしゃるか‥?」

「良いよい。忍壁もどうもいにしえの事は疎(

うと)いようじゃ。それより律令の様な決め事を作る方が、皇子には向いて居る様な気がするわ。のう史」

 史は、以前から忍壁皇子の事は、帝の云うように感じて居たらしく

「はあ‥我も帝がおっしゃるように感じて居りました

。是非とも忍壁皇子様にお出で願えたらと思うて居ります」

と、心配そうにしている広瀬王にも、声を掛けるように言った。

 広瀬王は、この数年の皇子達の動揺を敏感に察していた。気の毒とは思うが自分の立場では致し方無い。

二年前川嶋皇子様も突然の解任で気を落とされたのか

、身罷って仕舞われた。忍壁の皇子様はそんな弱気では無いと思うが、一抹いちまつの不安は残る。

「ははあ‥お指示どうり宜しくご計らい下さいますよう」

と、頭を下げ、史にも眼で

忍壁皇子の事を宜しくと礼をして退座した。

「それで史、そちは、唐国を真似て律令を作ると言うが、大丈夫かえ」

 広瀬王が去って、帝は少し緊張がほぐれたのか、肘掛けを引き寄せた。

 史は、正面に移動して対座した。

「帝、今我国は大変な時期ときに入って居ります

三韓では、新羅しらぎ百済くだら、高麗(

こま)を破り唐国をも追い出しました。此れからは、

新羅は体制が整えれば、我国には朝貢ちようぎもしなく成るでしよう。

新羅の事は少し様子を見ることにしまして、要は我国が、どれ程偉大であるかの国づくりが肝要かと思うて居ります」

 帝は、肘掛けを横に押して座り直した。

「妾も、それは考えて居る

。しかし婦人めのこの身ではのう。それにそろそろ疲れも来て居るわ」

「帝、弱気なことでは困ります。軽皇子様が十五歳に成られるまでは、まだまだ気丈にお出であそばされ無ければ、我国はいつまで立っても、古のままです」

「十五歳でのう。軽に任せて大丈夫かえ」

「我が思いますのに、高市皇子様には後ろ楯が有りませぬ。すぐ、阿倍、丹比(

(たじひ)、大伴、石上(

いそのかみ)の連合が出来

、一気に争乱の種に成る気配です。なが・弓削

(ゆげ)皇子様兄弟とて同じです。ただ、一番難儀なのは、舎人皇子様です」

「と云うと‥?」

「舎人皇子様が帝位に就いても、他の氏族は、暫く静観のていを決め込むでしょう。何故なら現政権の一番の勢力を誇っていからです。しかし、阿倍本家は、有間皇子様の一件以来低落し、氏族の一部の者が権勢を誇っている状況なれば、他の氏族はそこが狙い目と見て虎視眈々(こしたんたん)の構えに成るかと

「さすれば、阿倍家も容易成らざる状況じゃ」

 少々、帝は史の術中に入っていくのを牽制した。

「いえ、それはあくまで、

帝が現帝位を放棄されました憶測故しんぱいごと

それに、舎人皇子様は、そのような愚かな事をするような皇子様では在りませぬ

。舎人皇子様は、今までの動向を見ますに、只、兄皇子様達を慕い、世の動きの中で、自分の生き方を探ってお出での様でした。軽皇子様の良い後見役に成られると存じます。あくまで、

舎人皇子様を抑えられればの話で御座いますれば」

 史は、そこまで云うと、

ほっと息を就いた。

 成る程、この史の父の鎌足様が妾におっしゃっておつたわ。

[史は賢い子です。実は鏡

王姫(かがみのおおきみ、額田郡王姫ぬかたべのおうきみの姉)を帝(天智)から

お受け致しました時には、

姫は既に帝の御子みこ身籠みごもって居りましたか。我は其を知った者が、いつ言朱ちゅう

するやと恐れ、田辺大隅に史を預けました。皇女(ひめみこ、讃良姫)様から見れば弟皇子に御座ります。

大隅には、一生伝えては成らぬと申して有ります。陰ながら、皇女様のお役に立てるよう、史には申して有ります故、ご存分にお使いあすばすように]

 鎌足は、それから幾日もせぬうちに身罷ってしもうたわ。

 妾はわらをも掴む思いで、父帝(天智)を

言朱ころせせよと命じた。

 今又、妾が帝と為って側に仕えて居る。そして、父鎌足様が父帝にしたように

、帝(妾)を煽り立てるのか

 親子揃ってそのような運命さだめかのう。

 帝(讃良)は、何か他人

ひとごとのように

、史が熱弁をふるう様を見て、弟が成長して、頼もしく見て居る姉のように眺めていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ