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狗奴国の〈ヒムココ〉連合国軍を圧倒しヒミコ女王窮地に‥、ヒミコ、ヒムココに協定の提案を申し出た



 そのナンシヨウメの懸念を無視するかのように

「それで、依然から狗奴国王の父が、ヒミコ女王に東国は未開である故関与して呉れるなという訴えを、女王はどうして無視して、東国の国々を連合国の一員にして行くと言う方策を取らなかったのでしよう。そうすれば、今に為って女王国に対抗出来る様な力は付けて此れなかつたのでは無いですか‥何か理由があつての承諾だったのですか‥?」

「ヒムココの父は、女王にとっては女王の父の兄上だったのです」

「ええ~~何と‥!」

 〈王キ〉は、これは飛んだことに為っておると顔を曇らせた。

 ナンシヨウメも答えて、自分の言葉に身が凍るような感触が走った。

 暫く沈黙が続いた。

「ヒミコ女王には、一旦身を引いて貰わなければ為らないでしようね」

「ええ!身を引くとは‥!?

「隠居するか‥、女王の気持ち次第では、亡くなつても致し方無いとお考えに為られるか‥、」

 〈王キ〉はズバッと言った。

開いた口が塞がらない、というのはこう言う時に言うのだろうか。 

 ナンシヨウメは、驚いた眼を口を開けたまま〈王キ〉を睨み返した。

 我は中華の援護を依頼しに来たのだ。それも女王を助けて貰いたい為にだ。何を言ってるのだ。

 この男は、邪馬台国を維持することが優先で、ヒミコ女王を殺しても止むを得ないと考えて居るのだ。飛んでも無い。自分は邪馬台国などどうでも良い。ヒミコさえ生きていてくれたら

‥、」

 もうナンシヨウメの頭は真っ白に為って、ヒミコが実際、死を覚悟しているのでは無いかと言う錯覚に襲われた。

「落ち着いて下さい‥、ナンシヨウメ殿!」

 〈王キ〉もさすが言い過ぎたかと思い、ナンシヨウメを宥めた。

 翌年、〈王キ〉は属官(

執政官)〈張政チヨウセイ〉らを倭国へ向かわせた。



 女王様‥、〈イワレヒコ大王(神武)〉がお目見えに為りました」

 ミマキビメが、御簾の中でじっと眼をつぶったまま

、何やら考え込んでいるヒミコに声を掛けた。

 眼を開け

「お通しして下され‥、」

と答えたヒミコの声には少々陰りがあった。

「戦況はどのようですか‥

?」

 入って来たイワレヒコに

、挨拶も無しに要件を言い出した。

「はあ~~女王‥、連合国の王達が、各国で反発する一部の王達に説得に回って

、内海(瀬戸内海)以西は大した戦いには為って居りませんが、〈ヤマト〉の東国の王達は、狗奴国に押され気味で狗奴国の勢いを止める事が出来ないで居ります」

「そうでは無いのでは無いですか。熱田の〈アメノホアカリ〉、〈ミケヌ王〉、輪島なの〈オホイリキ〉王

、伊勢の〈トヨミケヌ〉王などは、こぞって狗奴国に協力しているそうでは在りませんか。ホアカリは一族の長の〈ニギハヤヒ〉の説得も聞かずに、積極的に連合国の熱田の兵士や民兵を率いて、淡江(おおみ、琵琶湖)の多賀(彦根市近辺)まで攻めて来ているのでは無いのですか‥!」

「はい左様ですが、私もニギハヤヒ殿と伴に〈多賀〉に行き、狗奴国軍とホアカリが煽って引き連れて居る兵士や民兵に思い留まるよう呼び掛けて、戦を小休止させて来ました‥、がまだまだ予断を許す訳には行かないのは確かで御座います‥女王」

「のう~~イワレヒコ〈越(福井、石川)〉の国々の中でも、大海(おおおみ、

日本海)の交通路で重要な拠点と為って居る〈輪島〉のオホイリキ王が同調して居るのは可笑しいとは思わぬか‥、」

「はい確かに、狗奴国に協力しようにも不可能な位置に在りながら、何故ミケヌ王達と反発の名を連ねて居るのか理解出来ませぬぬが

‥、」

「うぅ~~ん‥、」

 ヒミコが眼をつぶって唸り出したので

「女王‥!何かオホイリキ王に思惑があっての行動とお思いですか‥?」

「いや、オホイリキ王だけでは無い。ミケヌ王、トヨミケヌ王達がこぞって狗奴国に協力して居る事は‥、解らぬか‥イワレヒコ‥!

「ええ~~!列島を分断して

、別の国に仕立てて行こうと言う腹なのですか‥!?

「そうです、イワレヒコ。今は確かな企てを明らかにしては居ないですが、輪島で交易船をストップして仕舞えば、西の出雲方面から北へ、又、三内円山(青森)方面から西へと言う航路が掌握されてしまい、互いにいろいろな生活用具など文化の交流が断たれて仕舞うのです」

「どうしてその様な事を

‥!、其れでは有無も言わさず、連合国軍を総動員してでも、狗奴国を今この時期に叩き潰して置かなくては、大変な事に成りますぞ

‥!」

 イワレヒコは、ヒミコが言うように列島が二国に分断されたら、女王が‥いや倭人が目指して来た統一国家の実現が夢に終わって仕舞うかも知れないと考え

、ヒミコに思い切った策を訴えた。

「イワレヒコ‥慌てるで無い。以前、〈魏の皇帝〉から賜った鏡(三角縁神獣鏡)など、色んな貴重品を連合国の国々に分け与えて来ました。彼らは其れを見て、〈中華(中国)〉が如何に時代の先を走っているのかを改めて直に認識し、その脅威を感じている筈です。我々は其れを見習って自国を発展させて行かねば為らない。増々、連合国の結束をと考えているに違い無いのです。妾は、この列島を統一して出来るだけ早く、その中華に劣らぬ国にして行かなければ為らないと思い、頑張って来ました

。しかし、年は争えません。霊魂の活動が衰え、霊的な意識を高めて行く事が出来なく為って仕舞いました。かじってきた〈占星術〉に寄れば、妾の寿命はもう幾ばくも無いことが解りました」

「姉上‥!?何をおっしゃるのですか。こんな大切な時期にそんな弱気に為られては困ります。この件が収まれば、元の姉上に戻りますので、どうか‥、ご辛抱下され‥女王‥!」

 イワレヒコは、涙を流さんばかりに姉の女王の苦しみを解き放そうとした。

「イワレヒコ良いのよ‥、いづれ時間が解決して呉れる事だわ。其れよりも、もうナンシヨウメが魏帝から

【黄幡】(こうどう、黄色の旗、魏帝の援護が有ることを敵に知らしめる)を賜って戻って来る頃だわ」

「女王‥、其れを持って、狗奴国に脅しを掛けるという事ですか‥!」

「バカねぇ~~脅しじゃ無く協定よ」

「協定‥?と言いますと」

「貴男がその〈黄幡〉を持って〈ヒムココ〉と話し合いに行くのよ」

「やはり脅しでは在りませんか‥、女王」

「いや脅しではない【保証】なの‥、その〈黄幡〉の保証の元に、熱田以東、以北に対して連合国は一切積極的な勧誘をしないという事なの。それと、狗奴国も含めて従来通り、交流を深めて立派な国々に為って行くよう願って居ることを伝えて欲しいのよ。〈オオゲツ〉の件に関しては、妾も〈ヒムココ〉殿に劣らず悲しみのどん底に陥り、未だに立ち直れ無いでいる‥

と。ヒムココ殿には取り返しの付かない結果に追いやったことに対しては、心からお詫び致しますと言って居たことを伝えて欲しいわ

。それと‥、その罪障というわけでは在りませんが、

淡海の〈多賀〉を次男の

〈ワカトシノ〉殿に管理するようお願いしたい‥、と

。その地は、ヒムココ殿の祖父〈ナギ〉様(父ヒルコの父、ヒミコの祖父でもある)の〈神籬ひもろぎ

〉の有る所でも在るので、

是非承諾して欲しいとお願いして来て下さい‥イワレヒコ‥、」

 ヒミコは疲れたのか、少し息を整えて又話し出した。

「当然ホアカリや、各王達

(ミケヌ、オホイリキ、トヨミケヌ)が反発するでしようが、ヒムココ殿が妾の申し出を承諾して呉れれば

、一旦彼らの列島を二国に分断する策はご破算に成ります。ヒムココ自体、怒りが収まれば狗奴国に戻るでしょう」

「はい承知しました。取り敢えず、狗奴国のヒムココ殿に協定するよう説得して来ます」

 イワレヒコは立ち上がろうとした。

「そしと、ホアカリ達には

、今回の騒動の件には一切罰則は問わぬと、」

言い掛けて座ったまま前に屈みそうに為った。

「女王様‥!?」

「姉上‥!?」

 ミマキビメとイワレヒコは、咄嗟に立ち上がった。

「大丈夫です‥!イワレヒコ早く行きなされ‥、」

「ははぁ~~」

 ミマキビメに後は宜しく‥、と頭を下げて退出した。

 ヒミコは、近々【日蝕】が近づいて居るのを察知していた。

「ミマキビメ殿‥、もう一度、あの三人の方々(ホホデミ、ヤマトビメ、モモソビメ)を呼んで下さらぬか‥、」

 死期が近づいて来たのだ。不吉な【日蝕】が起こった後、妾はこの世に居れなく為るのだ。





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