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トヨウケジ(伊勢神宮。外宮祭神)とオオヒルメ(内宮祭神,天照大神)の出会い

第一章

  第三節

![トヨウケジ(伊勢神宮,外宮祭神)とオオヒルメ(内宮祭神、天照大神)の出会い]


一座の一同も、声には出さなかったが、感心して何度も頷いた。

 感心の動揺が静まり返るのを見計らって、ナギは皆を見回し

「本日はご苦労様であつた。タカムスヒ王が皆の為に馳走を用意して下さっているので、ゆつくり召し上がれよ」

 ナギの労いの言葉が終わらぬうちに、高床式建屋の二階の居間に登って来る足音が聞こえてきた。

「さあ~さあ皆様、お食事のお時間ですは。お疲れでしょう。どえぞごゆりと召し上がって下さいな」

 白髪が混じったしなやかな髪を後ろに束ね、にこやかに皆を労った。

 〈カミムスヒ〉と言い、タカムスヒ王の皇后(きさき)である。ナミ・オオナムチの母親でもある。

家人の娘達が膳を運び、一人づつの前に置いていった。

 そして、一人の(みやびや)かな女性がカミムスヒの後ろに控えていたが、

カミムスヒの横に出て、チラツとスサに目配せし、料理の食材を説明しながら、手早く作り方を披露した。

「娘のトヨウケジです」

 カミムスヒが紹介し、トヨウケジを結婚させずに十四才の時にフゲキとして筑紫に遣ったこと、そして四、五年前にこの出雲に戻したこと、彼女は食材に詳しく、今は列島のあちこちを巡り、食材になる草木(くさき)を探し歩いている‥、と。 

 びっくりしたのはニニギだ。

ええ~~昔、伊都国王(福岡県)のオシホミム様の妃として会った女性ではないか

‥!?

 皆が箸も手に付けずに、じっと自分を見つめているのをトヨウケジは困った顔をして

「皆さん、お食事をなさって‥、さあさあ姉様(ナミ)お兄さま(オオナムチ)箸を持って!」

 慌てて二人は箸を手にしたが

「トヨウケジ‥、その前に皆さんに何かご挨拶したら

 オオナムチが促した。

「ああ~そうでした。ごめんなさい‥、さあ」

 その仕草が何とも色っぽいので、座の者は食事よりも話しをするのを待った。

「申し訳ありません‥、私が話しをしだすと長くなりそうなので、どうぞ私の話しをお食事の(さかな)にして召し上がって下さい‥ね。ねえ~~スサ様‥?」

 今度は、まともにスサを見てウインクした。

スサはびっくりして、恥ずかしさのあまり、トヨウケジを睨みながら、手づかみで飯を食べだした。

皆がどっと笑いながら、おもむろに食べ始めた。

 安心してその様子を見ながら、トヨウケジは話し出した。

「私はこの四~五年、ずっとこの列島を歩いてびっくりしました。この列島は、南から北へ細長く続いていて、その中心は山が延々と連なって、私達の背骨のようでした。

そうなんです。そこには木の実や山菜になる草が豊富で,各地によっていろいろな食材に成ります。ただ、その地の人達がまだまだその見分けがつかないのが残念ですが‥?ね。

そして、回りが海に囲まれていて、西の大海(日本海)、東の大海(太平洋)、内海(瀬戸内)には限り無い魚類、貝類、海藻が溢れていますが、()り方が難しく、まだまだ大した食材には成りませんが、いずれ方法を見つけると思います。皆様方もお国に帰られたら、田畑以外の食材を確保出来るように、目を向けられれば、少しでも民達への助けになると思います」

 皆は、トヨウケジの話しを聴きながら、一品一品感心しながら味わっていた。この食材は自分の国で雑草として関心なかった草ではなかったか。とかこの汁はどのような食材を組み合わせて煮たものか、時々トヨウケジの顔を見ながら、ウンウンと頷きながら美味しそうに食を進めていた。

 母のカミムスヒが,トヨウケジの顔を見つめ、本当に良かったわね‥、と相槌

をうつた。

 皆の食事が終わる頃

「トヨウケジ様。私は南の西都原(さいとばる、宮崎県)から来ました。国では、毎年大雨大嵐(台風)に見舞われ、稲や畑が刈り時に被害に遇い、その年はいつも民達が飢えに苦しみます。それで、一度私達の国に入らして下さいませんか‥?どのような食材が他にあるのか見て欲しいのですが‥、!」

と、オオヒルメは天の助けが現れたかのように懇願した。

「オオヒルメ、無理を言うではない。トヨウケジ様もお忙しい身だ。それよりも

今、田や畑を増やすことが大事ではないのか。そちの地に何か田や畑を育てるのに、もっと思案すべき事は無いのか。出雲のフゲキは一つにはその為の巡礼なのだよ」

 ナギは(オオヒルメ)の唐突な申し出に浅はかさを通り越して、心身ともに窮地に追い込まれてことを改めて知った。国に帰っても尋常な手段では馬韓の軍を追い払うことは出来まい。

 オオヒルメは、父ナギの咎めを聞き、ああ自分は何と浅はかで気弱な人間だろう。恥ずかしさで顔が真っ赤になり

「トヨウケジ様、申し訳ありません。余りにも貴女の教示に感心してしまい、早まったお願いをしてしまいました。じぶん達のもっと足元を見なければ‥、それが出来てからです。貴女にお願いするのは‥、!」

「オオヒルメ様でしたか

。貴女のような力強くて美しい女性に会ったのは始めてです。これからは、女性も国を引っ張って行かなければならないと私は思っています。貴女なら、その先頭に立って国を守って行かれることを信じています。その時が来れば、いつでも駆け参じますので、宜しくお願いしますね‥、!」

 オオヒルメの顔がパッと明るくなり

「恐れ入ります‥、」と

「それと、私事になりますが少しお話し致します。(タカムスヒ)の指示でフゲキとして十四才から四、五人連れで巡礼に向かいました。二年後に私は、筑紫の伊都国王の息子(オシホミミ)と恋仲になり、娘を生みました。仲間と別れ、暫くは幸せな日々を送ったのですが、オシホミミの父は、弁韓から正式な妻を迎えられたのです。




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