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「地」だけで無く「天」も崇めるように。そして、首長の墓を特別大きくして「祖霊信仰」を高めることという連合国の通達に出雲国王のオオナムチ(大国主の命)は不満を募らせた

第二章

  第六節

 倭人連合国(ヒミコ女王)の行方は如何に‥、出雲国(オオナムチ大国主)の運命は‥?


 「父上‥、ヒミコ女王は、内外共に自分が中心に為って行くことを避けられたと思います。今後魏国との交渉には、自分自身が全面的に押し出して行く事が得策であると考えて居られるのでしょう。公孫氏との交渉時も引けを取らないほどの圧力をかけ、馬韓も辰韓も倭国の戦力と策謀には、現在のところ太刀打ち出来ない事も分かって居ります。事実、元、弁韓の地は〈イ加弥郡カヤグン〉として倭国の領土に為って居ります。それもこれも皆、倭人の女王が〈鬼道〉を中心に連合国を動かしている事がはっきりして居るからだと思います。当然、魏国も公孫氏を倒した後は、倭国のヒミコ女王の力を試しに掛かるでしょう。ですから父上‥、ヒミコ女王は、今回だけは国内の祭儀の件を、イワレヒコ大王に任せるお積もりでは無いですか‥、」

 ヤエコトシロは、父の納得の行かぬ顔に終止符を打たせ、早く今回の〈

通達〉に対処する為の現実の祭事の仕方の変更を

、具体的に話を進めて行かねば為ら無いのではないかと暗に促した。

「それでもだ‥、コトシロ‥魏国との交渉が終わった後でも良いのでは無いか‥、今回の沙汰については‥?」

 あくまでヒミコ女王の命で無ければ、父上は納得出来ぬのだなあ~~とヤエコトシロは苦笑いした。

「貴男‥、今回だけは、コトシロの言うようにイワレヒコ大王の命であつても、従わないと行けないと思いますわ‥、女王には、のっぴき為らない事情があっての沙汰だと思いますのよ」

 タギリビメは、出雲国王としてのオオナムチの心配は百も承知での助言であった。

「地」と「天」の同等の扱いとは、今まで行って来た祭事が「地」が中心であった為、「天」を中心に祭事を行えと言うことで在り、出雲を中心に全国の村々に定着している、民達への困惑を取り払うことは至難の技なのだ。首長の墓の件にしても、今まで全てでは無いが、平等を基本にして身分制を定めて居たのに、首長を特別扱いすると成ると、ますます貧富の差が生じ、権力者が民を圧迫する懸念が有るのだ。連合国を創設する前までが既にそうであった。長い戦いの末にようやく〈女王国〉が出来たのだ。

 女王は又、その時の状態に戻すと言うのか。

オオナムチは、ヒミコの考えを直に聞きたい衝動に駆られた。

「叔父上‥、ヒミコ女王の目的は、地域、地域でバラバラに難儀している多種多様なこの列島(日本)の民達を、将来同一民族として組織作りをし、大きな強い国家を共に目指して行くという夢を民達に与える為、その基礎作りをするのが自分の置かれた立場だと、常々おっしゃって居ました」

 スサが、ぼそぼそとオオナムチに訴えるよう語った。

「‥、‥、」

 シ-ンと座が静まった。

「そう言えば、私が秩父から戻って来た半年後に、〈伊勢(三重県)〉に居る父の〈サルタビコ

〉の使いが来て、早急に伊勢に来て欲しいとの話があったの‥、」

 僅かな静けさを打ち破るように、オオゲツが話を切り出した。

 こんな時に、一体何の話をし出すのだろうと皆は、オオゲツを不思議そうに見つめた。

「私が伊勢に行って見ると年老いた父と昔、母から父を奪った〈アメノウズメ〉という女性が嬉しそうに私を迎えてくれました。父とは三つの時に別れて居るので、かすかな思い出しか在りませんでしたが、私にとっては昔からの願いであった父との再会は、ようやく実ったという満足感で一杯でした。何故、今頃に為って私を呼ばれたのかを尋ねると、何と今、母のトヨウケジが伊勢に来ていると言うのです。私には話がさっぱり読めないので、よくよく話を聞くと、もうかなり前に日向(宮崎県)の〈西都原〉の女王オオヒルメ様がお亡くなりに成り、その【霊位】(たましろ、位牌)をヤマトの三輪山に居られる〈大物主の命(

みこと)〉にお預かり願いたいと持って行ったそうです。大物主様は快くお引き受けに為ったのですが、一年もせぬうちに三輪山周辺の村々で疫病が流行り多くの民達が亡く為ったそうです。それが三輪山にオオヒルメの【霊位】をまつった為、山の神がお怒りに為って災いが生じたということになって、オオヒルメ様の霊位は三輪山から追い出されたそうです」

「おおぅ~~何と言う事だ

‥、姉上オオヒルメがそのような目に‥!」

 スサが悲しみと同時に両手の拳を思いっきり握って天を仰いだ。

「誠に‥、何と言う事だ

‥!」

 オオナムチも、若かりし頃のオオヒルメと会って、何と美しく凛々しい女性で有ろうと思って見ていたが、その後〈辰韓

〉との海戦では、男顔負けの雄叫びを上げて、辰韓軍を追い散らした豪傑でもあったのだ。

「しかし何故、西都原で永眠させて上げられなかったのだろか‥、それに

、いざとなれば、筑紫の伊都国に持っていけば良かった、のでは無いか。国王のニニギは自分の可愛いい長男で在るのに‥

?」

「私の母のトヨウケジは

、ヒミコ様が女王に成った五年ほど前から西都原に行って、オオヒルメ様にお仕えしたそうです。母は西都原の国を大きく変えたと聞きました。川の流れを変えたり、溜め池を作ったりして田畑の育成に貢献して、日向一帯の国々や村々にも影響を与えたそうです。オオヒルメ様はますます母を珍重し信頼を厚くされたとのこと。ヒミコ女王にお会いした時、そのようにお聞きしました。そして何故、母はオオヒルメ様の霊位をヤマトの三輪山まで持って行かれのか

、父のサルタビコに聞きましたところ、父は解らないと言ってました。母は答えなかったそうです

。三輪山を追われてから

、宇陀や淡路や淡海(おおみ滋賀県)の「多田」に持って行っても、何処も取り合ってくれなかったそうです」

「多田‥と言うと‥?」

 姉のタギリビメが不思議そうに尋ねた。

「ええ、オオヒルメ様のお父上の〈ナギ〉様の生誕地(淡路島)とナギ様が永眠されている地(滋賀県)だと聞いたそうです」

「でも‥、私達の母上トヨウケジは、捨てられた元夫の所へ良く行ったものね、」

「でも姉上‥、母も背に腹はかえられなかったんじゃ無い‥、アメノウズメ様は元、オオヒルメ様が可愛いがつていた付人で、日向の〈宮崎国〉のお姫様だったんだから」

「へぇ~~そうだったの‥

それで母上はオオヒルメ様を縁の深い女性に、最後にお願いしに行ったのね」

「ええ‥私もそう思って居たんだけど、実はそれとは別に理由があったみたいなの」

「どういう事なの‥、その別な理由とは‥?」

 タギリビメも数十年前に西都原でトヨウケジに会って以来、音信不通の状態だったが、ようやくオオヒルメ様とご懇意に成り、娘としては大して先々心配するような兆しも無く今日まで至ったのだ。しかし、母の身は又

、若かりし頃と同じように、周りの事情により、困難を強いられて居るのだ。

「私は父の居る〈二見〉から母が身を寄せている

〈浦田〉という所へ行きました。何とそこには〈ヤマトビメ(初代連合国王クニクル王の孫娘)

〉様とイワレヒコ大王の妃イスズビメ様もご一緒だったんです‥、」

「ええ~~!!」

座は一瞬ざわめいた。

「ヤマトビメ様とイスズビメ様ですと‥!?」

 スサは、皆がびっくりするような声で叫んだ。

「スサ殿‥!どうした。その二人の女性に何か問題でも有るのか」

 ヤマトビメとモモソビメと二人で、ヒミコが女王に成った時の付人で在ること。イスズビメがイワレヒコ連合国王の妃で在る事は分かっているが何故、その二人がオオヒルメの霊位を持って安住する所を探している妹のトヨウケジと同行して居たのかが、オオナムチにとっては驚きであったが、どうもスサの今の反応は、そう言う事だけでは無さそうな驚き方で在った。

「叔父上‥、これはどうもヒミコ女王が絡んで居るのは間違い在りません‥!」

「ええ‥!それは‥、」

どういう事なのか聞こうとしたが、スサが話し出した。

「ヤマトビメ様は、ヤマトの王族達の【霊位】を安直する〈やしろ

〉の主です。イスズビメ様はイワレヒコ王の妃で在ると同時ににヒミコ女王とは[云われ]の在る女性なのです。その二人が私の姉のオオヒルメ様の霊位の安住の為、伊勢へトヨウケジ様と同行したのは、ヒミコ女王に取って、オオヒルメ様の霊位は伊勢で無ければ為らない、という理由があったからに違いないのです」

「スサ殿‥、それはどう言う意味なのです。それにイスズビメ様が、ヒミコ女王と[云われの在る女性]とは‥、オオゲツ‥!そなた母上のトヨウケジと会った時、どのような話をしたのだ」

 オオナムチは、久しぶりに感が極まったのか、姪のオオゲツに詰問するように尋ねた。

 オオゲツもスサの言動には少々びっくりして居たので

「いえ、特別には‥スサの兄様がおっしゃって居るような気配は感じられませんでしたが‥、母のトヨウケジが言うには、

オオヒルメ様から自分の霊位は、三輪山のナムチ様の元に届けて欲しいと常々聴かされていたとの事です。余程ナムチ様の事が愛おしくお思いだったのは、日頃から母も良く分かって居たそうですが、霊位は、ご主人の奴国王の元か息子のニニギ王の元へと、母は思ったらしいですが、オオヒルメ様の気持ちを汲んで、西都原国王のイワトワケ様にお願いしてヤマトに持って行く事にしたと言ってました。ただ〈霊位〉を別に作らせて、奴国とニニギ王そしてイワレヒコ王には準備したと聞いております。ただそれぐらいしか話はして居りません伯父上‥、」

 母の兄のオオナムチに、申し訳無さそうに答えた。

「西都原での永眠は、考えられて居られなんだのですね‥、」

「はい、今のイワトワケ王は、オオヒルメ様の従弟のお孫さんなので、従弟の系統で西都原を守って行って欲しいと、オオヒルメ様はおっしゃって居たそうです」

「ヒミコ女王は、女王に成る前にオオヒルメ様とお会いして【日】と【月

】のことでいろいろ問答された様です。ヒミコ様いや当時はヒルメ様の母がツクヨミ(月)様で在る事から、ヒルメ様はオオヒルメ様が、日が昇る時、日が沈む時にはいつもお礼を述べて拝んで居られるのを見て、お月様にも同じように拝んではどうかとおっしゃったそうです。しかし、オオヒルメ様は、この世の万物の【生】は、全て【天の日】の恵みによって与えられた物で在って【日】の影として存在する【月

】は、生態が【地】の変化によってその恵みを与えられて居るもので在るから、〈生きとし生けるもの〉は、【月】の動きによって生き延びる術を

(すべを)考えて行けば良い。とおっしゃったそうです。〈月は崇める星では無い〉と言う事らしいですが、ヒルメはその考えに感銘し、曾祖父の

〈ミナカミヌシ〉様がヒルメ様が〈女王〉に成った時、名を〈日巫呼ヒミコ〉と変えてはどうかと云われ、喜んでお受けしたとヒミコ女王はおっしゃって居ました」

 スサは昔を思い出すように、今度は何時ものようにボソッと語った。

「すると兄上‥、オオヒルメ様の【霊位】(たましろ)をヤマトから追い出された時、列島(日本)で一番早く日の出の見える伊勢へ持って行かせたのは、ヒミコ女王だとおっしゃっるのですね」

 ヤエコトシロは、うんうんと頷くように頭を振って従兄のスサに確認した。

「そうだ‥、と我は思うのだ。それにイスズビメは、オオヒルメ様に育てられ、母のタマヨリ様は

、ヒミコ女王の若かりし頃の親友だ。オオヒルメ様が、タマヨリ一家を西都原国の王族に引き入れたのは、イスズビメ様を自分の孫として育てたかったからだ」

「ええ~~!すると、イスズビメはヒミコ女王の娘って言う事!?」

 オオゲツは、余りのスサの発想に信じられない思いで叫んだ。

「本当ですか‥!スサ殿」

「それとは別に、ヒミコ女王は昔から、此れからは【祖霊信仰】の徹底をとおっしゃって来ました。未だ各地では【精霊

崇拝】が根強く残って居ります。【火】から【水

】へと稲作に必要べからざる【水】に必要な川、

そして河川の水源と成る山には〈農耕神〉が居り

、その農耕地を開発して来た【先祖】を崇めるという意識がかなり低く為って来た危惧から今回、オオヒルメ様の霊位の件で、女王が思い切った策を取ったかと思います」

 スサの息子の〈オオトシ〉が、オオナムチのスサへの問いをはぐらかすかのように、今回のイワレヒコ王の通達の真意を説明しようとした。

「姉のオオヒルメは、トヨウケジ様にタマヨリ一家をヤマトに行かせて、我の弟のナムチとの間に出来たイワレヒコの嫁にイスズビメを‥、と頼んだに違いない‥、」

「まぁ~~まぁスサ様、何と大胆な‥!」

 タギリビメもスサの思い切った話の展開を打ち消そうとしたが、ふと、昔、ヒルメやタマヨリそして夫と成った〈ホホデミ〉らと西都原に着くまで、ヒルメとホホデミがかなり親密な関係に為って居たことを思い出した。‥、まさかイスズビメはヒミコ女王とホホデミとの間に生まれた子では無いか‥、と初めて気が付いたように思った。

 しかし、男を愛したり子を産むとなると、ヒミコの霊感力はかなり落ちる筈なのに、女王に成ってからもヒミコの霊感は益々鋭く為ったと聞いて居る‥、

「姉上‥、どう無さつたの‥!」

 オオゲツが心配そうに顔を覗き込んで来た。

「嫌だわ‥何でも無いわよ。スサ様のお話を聞いて飛んでも無いわよ‥と思っただけなの」

と澄ました顔で答えた。

 オオゲツは、姉のタギリビメがヒルメとずっと

〈フゲキ〉活動を行っていた頃、ヒルメが誰かと男女の営みがあったのでは無いかと疑い出したんでは無いかと思った。

「スサの兄上‥コトシロ兄はともかく、弟の私までこんな大事なお話の時呼び立てられたのは、何か特別な意味でも在るのですか‥?」

 タケミナカタは一人蚊帳の外に置かされた気分でずっと皆の話を聞いていたが、スサにどやされるかも知れないとも思ったが、思い切って尋ねた。

「ミナカタ様、後でお話が有ると思うのですが、もう少し、ご辛抱願えますか‥、」

 オオトシが、申し訳無さそうに叔父のタケミナカタを慰めた。

 どうも親父スサはイスズビメ様から頭が離れぬわ‥、とニコッとスサを見て笑った。

 スサは小奴め‥とオオトシを軽く睨んだあと

「いやぁ~~申し訳無い。話が少し脱線したようですので、イワレヒコ王の通達について話を戻したいと思います」

 スサとは思えない話し方で姿勢を正した。

「まぁ~~‥、」

 女性陣は、持っとイスズビメとヒミコ女王の真偽を知りたかったのに‥

と詰め寄ろうとした。

「これ‥、タギリビメ、オオゲツ‥、止さないか」

 オオナムチが慌てて二人を咎めた。





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