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ヒミコ女王は筑紫(九州)から大和(ヤマト)までの行程と日数をトシクリ(ナンシヨウメの息子)に逐一探索するよう指示した

「もう〈濁〉には魏に対抗する力は無くなつたのですね。関羽、張飛、劉備が亡くなり、孤軍奮闘していた諸葛孔明も失ったのですから‥」

 孔明の死は、ヒミコにとっても大きなショクであった。自分と年が変わらぬ‥

と聞いて居る。もし孔明が天下を握ったら、自分と〈文〉を交わせたかも知れない‥、と在らぬ妄想にも刈られた人物なのだ。

【死せる孔明、生ける忠達

(司馬懿)を走らす】‥、

と中華の民達も、聡明で

偉大な大軍略家であった諸葛孔明の死を悼み、自分が死んでも敵を翻弄して味方の軍を無事退却させるという方便で、後々の世まで語り伝えようとしているそうです」

「ほほぅ~~それは何と当を得た方便ですこと‥、中国の方々の思いも一緒ね

‥、ところで〈呉の孫権〉の動きはどうなの‥?」

「孫権は、十二~三年前に魏から自立して、孔明の死の五年前に、もう天下を三分するくらいの力を蓄えていると‥、」

「そう~~しかし、長江(

揚子江)からは抜け出て居ないんでしょう‥孫権は」

「はあ、権康(南京)に遷都したと聞いて居ります」

「すると女王‥、」

 ナンシヨウメはじっとヒミコを見た。

「そう‥、魏朝は〈リヨウ東郡〉を奪い返しに来るでしょうね‥、」

「ええ~~公孫氏を攻めに来ると‥!」

 トシクリは驚いたように声を上げた。公孫氏の当主〈公孫淵〉に可愛がられていたのだ。

「ナンシヨウメ殿、今から私が公孫淵王に〈文〉を出す準備をしますので、出来上がったら、朝鮮に帰って公孫淵王に渡しに行ってくれます‥?」

「はい女王‥、承知しました!!」

 ナンシヨウメは、いよいよ時期が来たか‥、と。緊張した面持ちで語尾を強くし、しかと承った事を伝えた。

「ええ‥!女王様、公孫淵王に何とお書きになるのですか‥?」

「トシクリ!でしやばった事をお聴きするでない‥、

!!」

 ナンシヨウメは、息子を強く叱咤した。

「ははぁ~~!」

 トシクリは、少し調子に乗りすぎたかと、慌てて両手と頭を床に着けて詫びた。

「‥、」

「女王‥息子の無礼をお許し下さい‥、」

とナンシヨウメもトシクリと同じような姿勢で頭を下げた。

「おほほほぅ~~‥お二人ともそんなに恐縮することは無くってよ。ただ、今後の情勢が急変する恐れが有るので、今回の〈文〉の内容を話する訳には行かないのよ‥トシクリ殿‥、」

「ははぁ~~とんだご無礼を申し上げて、お詫びのしようも御座いません‥、」

と又、深く頭を下げた。

「ところでトシクリ殿‥、

先ほどお父上が〈出石(い

づし)〉に嫁探しに行ったり‥とかおっしゃっていたのは本当ですか‥?」

「はい‥お恥ずかしい次第で‥申し訳ございません‥

「何をおっしゃっているの

‥、私は息子の貴男の行動力を聞いて、貴男のお父様のナンシヨウメを[キィッ]と睨み付けたいほど悔しかったのよ‥、」

「ええ~~!!」

「ええ~~!?」

 二人は驚きの余り、思いっきり声を上げてしまった。

 特にナンシヨウメは、先ほど息子を紹介した時の女王の声が、少し震えて居たのを思いだし、背筋から冷や汗が流れて来るのを感じた。

「ナンシヨウメが、もう少し早く朝鮮から帰って来て、私に一言積極的に申し入れてくれたら、何も【女王】に何て成ってなかった筈よ‥ねえ~~ナンシヨウメ殿‥、」

「ええ~~!?」

今度は、小さな合唱が部屋中に響いた。

 ヒミコの付き添いの二人の少女も、女官も、気難しそうに座っていた〈ミマキイリヒコ〉も、びっくりして、女王の初恋が失意に終わった話など‥、天がひっくり返っても聞けるもんではない‥、と。

「お静かに‥、」

 ヒミコはニッコリ笑って

「私もただの女子おなごよ‥ねえ~~ミマキビメ‥、」

と御簾の前に座っている女官に声を掛けた。

「はあ~~左様で御座いますが、私どもでは女王様の人となりなど想像もつきかねますわ‥、女王様は、私どもにとっては【神】のようなお方なのですから‥」

「左様で御座います‥!!

と、小さな大合唱で、皆、頭を下げて人となりの女王の告白に謹んで聞き流した事をお伝えした。

「そうですか‥有り難う

‥、そうそうトシクリ殿、先ほどの話に戻したいのじゃが~~どうして〈出石〉なのですか‥?」

「はい、私の住まいする

〈イ-加弥〉(かや)郡(

朝鮮釜山近辺一帯)では、

昔から列島の出雲国や丹波国から来ている者達が多くて‥、申し訳ありません‥

丹波には美人が多いと‥と聞いてただ、行って見たかっただけです‥申し訳ありません」

 二度も誤って、自分が単純な浅はかな人間なのに女王は買い被って、ずっとお話しされ、父のナンシヨウメまで巻き込んでしまったことに、深く反省していると訴えた。

「そんなことは有りませんは‥、貴男の行動力こそ、元、フゲキのお父様のお子ですわ‥それで見つかりましたか‥美人の女性は‥、

?」

「いやぁ~~それが‥、」

「トシクリ!もういいだろう。それくらいにしておきなさい」

 ナンシヨウメが、話の切り方を教えようとした。

「いや、ナンシヨウメそうではないのですよ。私トシクリ殿にやって欲しい事があるの‥、」

「はあ~左様ですか‥申し訳ありません」

 トシクリは、ナンシヨウメの後ろから少しずれて、女王を正面に見据え

「はい、如何様なことで御座いますか‥、」

と緊張した面持ちで礼をした。

「実は、私の祖父の〈ナギ〉は、昔、出雲を去って長い間行方が分からずにいるのですよ。事情があって探せなかったのですが、その探索と‥、大和から出発して出雲まで行くのに、どれだけの日程を要するかを調べて欲しいのです」

「はい、かしこまりました。それで‥始めにおっしゃっられた御祖父様の居所の探索は、どの辺りを手始めとすれば良いのでしょうか‥?」

 トシクリは、何か良く分からない指示だったが、女王のことだ、何か大事な思惑があっての命に違いない

‥、と。おまけに、初めて会ったのに、いきなり仕事を与えるとは‥それは、父のナンシヨウメが女王にかなりの信頼が厚いことを物語っているのだ。

「祖父の生誕地は、内海(

瀬戸内海)の淡路(淡路島)の〈多賀〉という村なのですが、消息不明に為ってから、必ず一度は寄っている筈です。まずそこに寄って、祖父の事を知っている村人が生存して居られれば、その地の一角に小さな神籬(ひもろぎ、垣根、神社の始まり)を作って頂けるようお願いして欲しいのです。五十年ほど前に祖父のナギは立ち寄っていますので、宜しくお頼みします」

 ヒミコは、私事の事なので頼むように指示した。

「はい‥、承知しました」

「それで、そなたは摂津の明石(兵庫県)に渡り、但馬の〈出石〉に向かわれれば宜しかろう。出石での滞在は幾日でも構いませんが、到着日と出立日は書き記しておくように‥、」

「ははぁ~~有り難きご配慮恐れ入ります‥、」

「女王‥何もそこまで息子の勝ってを譲らなくとも

‥」

「あら‥ナンシヨウメ。息子に焼き餅でも‥、そうではないのよ。トシクリ殿は

、内にも外にも目をやれるようなので、出石で美人の女子と巡り合えば良し、それとは別に、これぞと思った若者を、旅の間に出会えば探して欲しいと言うことなのですよ」

「女王‥、これぞと思った若者とは‥?」

 トシクリは少々話が読めなく為って、思わず尋ねた。

「トシクリ殿には、それから先、若者達を連れて、〈久美浜〉から〈出雲〉へ船旅をして貰い、筑紫の[宇美の里]へ行って貰います。その後〈イ加弥、カヤ〉に帰って、出石や出雲から連れて来た若者達を教育してしてやって欲しいと思っているのですよ」

「ええ‥!私が若者達を教育するのですか女王‥?」

「ええ~~そうです。その件は、お父上のナンシヨウメ殿にお聴きに為って励んで頂けば結構です。そして、この大和からイ加弥までの行程をつぶさに書き記して、私の元に届けて頂くようにお願いしたいわ‥、トシクリ殿」

「ははぁ~~承知致しました‥女王‥期限はいつ頃迄に‥?」

「いいえ‥急ぎませぬ。これから先、定期的に連合国の〈船団〉が〈金港(釜山付近)〉に行き来する筈ですから!折を見て渡して下されば結構です」

「ええ~~連合国の船団が半島(朝鮮)へ‥!」

「それから、トシクリ殿

‥、これは命令です。以後

、二度と公孫淵王に接触することを禁じますので、宜しく承知してくだされ!」

「ええ!女王‥!!」

 トシクリは、初めて見る女王の厳しい顔付きと沙汰にびくっとしたが

「ははぁ~~承知致しました‥!」

 づづっと後ろに下がって、両手と共に頭を下げた。

 何か猶予ならぬ事態を、女王の霊感が察知したのだろうか‥、

 トシクリは、暫く身動きが出来ないように縛られていた。

「イリヒコ殿‥住吉すみのえのワタツミ王とヨンソン将軍に、この大和へお越し願いたいと〈文〉を出して下さらぬか‥、」

と、ミマキイリヒコに声を掛けた。

「ははぁ~~承知致しました‥、」

 イリヒコは即座に立ち上がり、そっと部屋を出て行った。

「女王‥我々もお暇致します。息子のトシクリと旅の準備と女王の指示の確認を話し合っておきます。私めは、イワレヒコ大王にお目通りして、暫く大和に居りますので、頃合いを見計らってお呼び下され‥、」

「左様か‥、トシクリ殿には良くお話して、今後の状況の把握をしっかり掴めるよう期待して居りますぞ

‥、」

 ヒミコもナンシヨウメも

、事の重大さを確認するように、互いに言葉づかいは厳しいものと成った。

 トシクリも

「ははぁ~~」

と頭を下げ父と一緒に退出した。

「面白くて‥頼もしい若者ね‥これからの列島(日本)の行く末が楽しみだわ

‥ねぇ~~ミマキビメ殿

‥、」

 二人の少女が御簾を巻き上げようとして居たので、手伝おうと立ち上がりかけたミマキビメは、女王がトシクリと話をして、思いだして独り言を言っているのかと思っていたが、急に話し掛けられたので

「はい~~よう御座いますこと‥、」

と座り直して嬉しそうに相づちを打った







 



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