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東国や東北地域も戦いの準備を‥、とクニクル王の指示でオワケ臣がヒムココに進言す

「以前から女王は、アメノホヒ様からヒルコ様の考えや意見を良く聞いておられ、連合国に熱田以北の国々を無理やり参画させるのは時期尚早であり、逆に連合国の足手纏いに成りかねないとのヒルコ様の申し出に対して、女王は列島に住むいろんな種族の民達を連合国に参画させ、大きく発展させて、これからは皆同族として歴史を作り上げて行きたいという方向性に便乗して欲しいと、アメノホヒ様を通じて訴えておられました。しかし、ヒムココ様とオオゲツ様の出現で考えを改めたようです」

「ええ~~!!」

 ヒムココとオオゲツは、同時に驚きの声を上げた。

「オワケ臣様‥、それはどういう事ですか‥!」

 オオゲツが素早く問うた。

「我ら二人が父に代わって無謀な事をした為ですか‥?」

 ヒムココは、熱田から連合国が、東や東北に目を光らされては、すぐ近くの三河(岡崎)や駿府(静岡)に攻め入られ、しいては武蔵(関東)まで連合国に追いやられるのは目に見えているのだ。逆に熱田(名古屋)を我らの拠点にして、一歩も前に進まぬよう、連合国推進派の倭人達を追い出したのだ。ヒミコ女王は、その行動を見てどう見解を変えたというのか‥、ヒムココは警戒の色を強めた。

「お二人の出現で考えを改めた‥、と言うのは、東や東北の国々に連合国参画の無理強いをしない‥、と言う事だと思います」

「それはクニクル王様が、ヒミコ女王に直接お聞きに成った事だと言う事ですか‥?」

「そうです‥、実際はそういう風なお言葉ではなかったそうですが、熱田以北の国々が自ら連合国への加入を申し出るのを待つ‥、というお言葉だったそうです‥、」

「何と‥それは、私の父が常に女王に申し上げていた時期尚早だと言う事を認められた‥という事ではありませんか‥!オワケ臣様‥それは誠ですか‥?」

 ヒムココは目がパッと輝き思わず、オオゲツと抱き合おうとした。

「バカねぇ~~貴男‥!」

 オオゲツはヒムココの体を両手で

押さえ

「それでも‥、三年前熱田から追い出されたのよ‥」

 ヒムココはピクッと体を止め

「新たな敵が現れた‥、という事だな‥、」

 気落ちした二人を無視し、サクがゆっくり話始めた。

「女王様は、熱田以北の国々が、これから先も田や畑の改良や開墾に勤め、豊かな国々に為って欲しいとおっしゃっていたそうです。その為には、交易を盛んにして、列島の色々な国々と接触し、他の国々で成功した野菜や木々の実を、自らの国で生産出来るよう研究したり、教育や文化を利用して、子供達に夢を与えて行って欲しいとおっしゃっていました。ヒルコ様の民を思いやる優しい気持ちは、息子のヒムココ様へも伝わっているのが良く分かります。オオゲツは、私の幼馴染みで親友です。人を思いやる心は誰にも負ける人では在りません。私も以前彼女に助けられました。今では、列島一の田畑の神と崇められているのは誰も疑いません。お二人で熱田以北の国々が、ヤマトや筑紫以上の国々に仕立て上げるのを願っております‥、と。私がヤマトを出発する前にクニクル王から女王様の〈文〉を頂きました」

「うぅっ、うぅっ‥、うわぁ~~!」

 オオゲツは、又もや泣き叫びそうに成ったのを耐えようとしたが耐えきれず、声に出てしまった。

 慌ててサキが駆け込もうとしたが、付人達がニッコリ笑って手で制した。

 ヒムココにとっても、ヒミコ女王とは従姉同士である。幼い頃から、倭人連合国の攻勢に脅かされて来たので、ヒミコ女王に対しては、心ならずも敵対意識が芽生え増幅していくのは致し方ないことであった。しかし、このオワケ臣の話を聞いているうちに、何と聡明で心の優しい女性であることが感じられた。この従姉がこの列島を引っ張って、大きな国づくりを目指して行こうとしているのが、はつきり分かった。

「それで、本題はこれからなのです」

 サクが緊張した声と目付きで二人を見て言った。

「‥、?」

「、、?」

 二人は不思議そうにサクを見た。女王のお墨付きを貰ったので、これから豊かな国づくりを目指せば良いのではないか‥、と

「ヒムココ殿‥これから〈刀剣づくりと造船づくり〉に励んで頂きたいのです」

「ええ~~!?」

「ええ~~!?」

又、二人は同時にびっくりして声を上げた。

「先ほど申しましたように、オオヒルメ様のお子の

〈ニギハヤヒ様〉は、女王の了承も得ず、熱田を貴方達から奪い返しました。その件に関しては、ヒルコ様というヒミコ女王の身内である故、女王自身処理の仕方が難しかろう~~と伯母のオオヒルメ様の意思を、息子のニギハヤヒが先取りして行動に走ったと理解されています。ですが、女王は黙って居ませんでした。彼らニギハヤヒ一族を河内

(かわち、大阪府)に追いやり大和(ヤマト、奈良県)の中枢には配備しませんでした。女王の側には、同じくオオヒルメ様のお子の〈イワレヒコ〉様がおられます。後には、ヒミコ女王の跡目を継ぐと召されるお方ですが、ヒミコ女王の弟君でもあらされます‥、が女王は後々の事ん案じ、独自で行動を起こす事は、今後、一切禁じる‥、と。

それで、彼らも自重するでしょう。しかし、クニクル王の見方は違っておりました」

「クニクル王様はどのような‥?」

 オオゲツは恐る恐る尋ねた。

「後々には、ヒルコ様達も軍を持つべきだ‥、と」

「まあ~~!?」

 クニクル王は、ヒミコ女王とは反して、連合国はいずれ、東国、東北を攻めるだろうと考えておられるのだ。

 オオゲツは、顔が真っ青に成った。

ヒムココは、ぎゅっと唇を噛みしめ

「それで、刀剣と造船を~~!」

「そうです。ヒルコ様もヒムココ殿も、黙って容赦ない連合国の要求に屈服しては駄目だと考えておられるようでした」

 サクは、横に座る若者を見て

「これは、私の息子で意富比〈土-〉(オオヒコ)と言います」

「まぁ~~クニクル王様のご長男のオオヒコ様と同じ名ね」

 オオゲツは、ようやく紹介してくれた若者をじっと見た。ヒムココと余り変わらぬ年齢のようだ

「オオヒコと申します。宜しくお引き回し下さい」

 オオヒコは、今までずっと三人のやり取りを黙って見ていたが、父の不安は取り越し苦労だったようだ。

 ヒムココと言うヒルコの息子は血気盛んな若者と聞いていたので、この狗奴国くぬこくに無事辿り着けるか案じて居られたのだ

。オオゲツ様は、ヤマトで見かけただけでどんな方なのか自分では全然分からなかったが、父がオオゲツ様という方を、こんなに信頼され、危険な旅にも関わらず私を連れて、オオヒコ様の依頼に答えられたのか、今までの会話で、はつきり分かったような気がした。

「私はクニクル王家では、鍛冶かじの作業を承って参りました。勿論刀を研いだり、新しい刀剣を作ったりするのも役目の内です。息子のオオヒコも我と同じ役を承り、今では私以上の腕に為っております」

「まぁそれはそれは‥、オワケ臣様のお子ですもの当然のことですわ」

「いやぁ~~それほどでも無いのに‥、父は大袈裟です‥」

と父のヤスを軽く睨んだ。

「‥で、このオオヒコ様に、我々は刀剣作りを学べと言うことですか‥?」

 ヒムココは、これから戦う準備をしなくては成らないのかと思うと、頭が真っ白に為って不安が一杯に広がった。

父のヒルコは何と答えるであろう。三内丸山のオチワケ王や佐渡のイハツクワケ王、川越の稲荷トヨキイリヒコ王、又常陸のオオナカツ王、下総のヲザベノ王様達に何と説明しよう‥、十二~三年前には、熱田に集結して、ヒミコ女王に連合国への参画は時期尚早であります‥、という事を陳情する為、父のヒルコの熱意に同調してもらって一千人の民平をお借りしたのだ。それが、自分の判断で騒動を起こしてしまい、皆、散り散りバラバラのような状況に為ってしまっては、申し開きが出来ないのではないか‥、

「ヒムココ‥、何も心配する事は無いわ‥、」

 オオゲツは、ヒムココの思いが伝わったかのように、優しく微笑んだ。

「ヒムココ殿‥、戦う準備‥となると、各国の王達に理解して貰わねば成らない‥、と言う事ですね」

「左様です‥、今回の私の行動も反対していた父の許しが得られるかどうか自信が有りません」

「ヒルコ様には、私がご説明しましょう」

「ええ‥!秩父まで行かれるのですか‥!」

「はい。連合国の今後の動向や内部事情をご説明し、ヤマトに劣らぬ国々の建設に東や東北の国々が目指せば、連合国が統一国として列島を掌握して行こうとしても、決して引けを取らない交渉が出来る筈です」

「それでは、軍を作る必要がどこに有る‥、と言うのですか」

「列島が大きな国づくりをしていく‥、と言う事は、統一を推進する大国、もしくは連合国が、統一国家にして行くという大義名分が在りますから、協力しない国、反発する国に対しては、武力で威嚇して屈服させようとするのが常道です」

「すると、我々もその威嚇に対抗して武術を身に付けねば成らない‥、とおっしゃるのですか‥、」

「その通りでございます。民達の若者達に、折を見て、くわの代わりに刀剣を、つぶ手の代わりに弓矢を学ばせるのです」

「それではオワケ臣様‥田畑を耕す手が足らなく為ってしまいますわ‥、」

 オオゲツが心配そうに意見を述べた。

「いやいや、オオゲツ様。それは今すぐ‥という訳では御座いません。将来の為に今から取りかからねば成らないのでは無いか‥、と言う事です。それと各国の王達も、近隣の過疎地の民達をも説得して、同族として扱い、田畑に出来るような土地は開墾して増産し、国を潤わさなければ成りません。それは、どの国の王様達も現在取り組んでいることですから、何も今更私が言うまでも在りませんが、只、民達に夢を与え、国を守って行くという意識を芽生えさせ無ければ成りません」

「夢‥?国を守る‥?オワケ臣様、夢とはどんな夢で、誰から国を守るのですか‥?」

 ヒムココは、敵とは連合国だろうが、まだまだ東や東北の民達には、攻めて来られても居ないのに脅威は無い。それに我々に夢を与える‥という事が、どうしても理解出来ずに念を押してみた。

 サクは、その問いにうんうんと頷き、しばらく間を置きゆっくり話し始めた。

「それは‥、近隣の国々や遠方の国々、しいては朝鮮や中華の国々との〈交易を通じて〉‥、いろんな食料の具材や畑作に必要な道具や工具の使い易さ、便利さを素晴らしいと感じ、見届けたら、自分達で生産し、工作して行かなければ成らない。そう感じ、行動を取る事が夢を与えるという事です。そして、人としての生き方や仲間同士の絆の在り方も学び取られたらそれはもう‥、国の在り方や将来の目標というのが出来ていく第一歩なのです。そしてそれらの夢を守る為に‥

色々な準備や段取りをしていくのが国の王の責任であり王自身の夢となり‥、民達が一丸と為って精進していく要なのです‥、それが国を守って行くという意識なのですよ‥、」

 ヒムココとオオゲツは黙ってヤスの話を聞いていたが、話が終わっても、ヤスの顔を見たまま反応が無い。無言が続き‥、慌てて

「ヒムココ様‥、奥様‥!

 オオヒコが心配そうに二人に声を掛けた。

その声に二人ともふっと気がついたのか、その静寂さに不思議そうな顔つきで

「貴男どうしたの‥、ヒムココ‥?」

「何だ‥、貴女こそどうしたのだ‥?」

 二人ともヤスの話を聞くうちに、ヒムココは父のヒルコに、オオゲツは幼馴染みのヒミコ女王が自分に説得しているような錯覚に陥ってしまったのだ。

 気まずい空気を吹き飛ばすように正座して

「よく分かりましたオワケ臣様‥、して私達はどうすれば‥、」

 オオゲツがチラッとヒムココを促して頭を下げた。ヒムココも頷き、今後の指示を待つ意思を無言でサクに伝えた。

 サクはほっとした顔つきで

「私のような者の話で良く理解して頂き有りがたく思います。私を信じて指示して下さった〈オオヒコ様〉にも感謝する次第です。オオヒコ様が、直接ヒミコ女王やクニクル王の命で、私を派遣されたのでは無いことは先ほどお話しました。勿論私がヒルコ様にお会いする事は、連合国内では極秘の行動で有る事は間違い在りません。しかし、色々な面で女王とクニクル王お二人ともオオヒコ様にご援助されていたようです。私はオオヒコ様を通じて、そのお二人様のヒルコ様への思いを痛切に感じており、命に代えてもこの任務を遂行したいのです‥、」

「はい‥、私どもも何も知らずに申し訳在りませんでした‥ヒムココ‥、」

 オオゲツが目配せした。ヒムココがうんうんと頷きながら

「で‥、オワケ臣様、先ほどお尋ねした、今後の予定なのですが‥、」

「はい‥、私どもも、まさかヒルコ様が秩父に帰って仕舞われたとは思いませんなんだので、実は途方に暮れているのですよ‥、でも

、まず秩父に行きましょう。そして、オオヒコ様が武蔵(関東)の川越の稲荷王トヨキイリヒコ様にお会いするよう、アメノホヒ様からご依頼があった事を聞いております」

「ええ~~大祖父のホヒ様が‥!」

 ヒムココが始めて、満面に笑みを浮かべて叫んだ。

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