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オオヒルメの死に伴い、霊位(たましろ、位牌)をヤマトのヒミコの元へ行く途中、予定には無い宇佐に寄った。イスズビメの祖母ツクヨミに合わせる為に

「姫~~!西都原から‥、〈タマヨリ〉様がお目見えです‥!!」

 姥の〈トシ〉が息を切らせて、少し高台の館に駆け込んで来た。

「ええ~~タマヨリ様が~~

!トシ‥お一人でですか‥?」

 ツクヨミは〈タマヨリ〉と聴いて、脳が天に舞い上がったように胸が破裂しそうに為った。

「いえ、若い男と女の人を

お連れしているので、お子達かと夫の〈ヨノスケ〉が

申して居ったそうです」

と奴婢の使いの者の言葉をそのまま伝えた。

 息を整えて、今度は嬉しそうに答えた。

姥のトシは、若い頃からこの家に仕え、タマヨリがフゲキの巫女としてこの家に三年も留まっていたこと。ヒルメ(ヒミコ女王)が出産した時、ヒルメは赤子をタマヨリの娘として育てて欲しいと頼み、トシが赤子を西都原に連れて行き、その赤子の乳母めのととして育て、タマヨリと共に苦労を共にしたことで、トシにしても嬉しい来客であつた。

「そうですか‥!?」

 ツクヨミの顔が一際輝いた。女の子の方は〈イスズビメ〉ではないかと確信した。

 トシも目を輝かせて頷こうとした。

「ところが姫さま、使いの者の話では、夫のヨノスケが言いますのに、タマヨリ様はすごく落ち込んでいるようだ‥と申して居りました‥、と」

「ええ‥!西都原に何かあったのかしら‥?」

 それとも、女の子はイスズビメではないの‥、」

 急にツクヨミは、トシを無視して館から駆け降りて行った。

「姫様‥、お待ち下さい‥

‥!!」

トシは自分の一言で主人のツクヨミが、急に泣きそうに為って飛んで行ったので

、何があったのかさっぱり分からす、後を追いかけた。

 長洲川(駅館川~宇佐市

)を遡って江須賀で船旅を終え、タマヨリ達はトシの

夫のヨノスケに連れられ、ツクヨミの住む丘の上の館に向かっていた。

 走り降りてもう目と鼻の先に、十人ほどの集団が此方に向かって歩いて来ていた。

 その先頭のヨノスケのすぐ後ろにいる若者達の白装束の胸に喪章らしき物を着けているのが見え、頭が真っ白になり思わず又、走り出した。

 若者の後ろで俯き加減で歩いていたタマヨリがその姿を見て、前の二人を押し退け、ヨノスケをすり抜けて、もう目の前に来ているツクヨミとぶつかり合うように抱き合った。

「ツクヨミ様~~あ‥!?」

「タマヨリ~~い‥!?」

 ツクヨミから見れば、タマヨリは娘のヒルメと同じく娘のように接していたのだ。

 二人とも、もう二十年ぶりの再会で、不幸を背負って会うことの無慈悲さに、おんおん泣きながらも、互いの無事を確認し合うように見つめあった。

「オオヒルメ様が身罷れました‥!」

 ようやくタマヨリが声を振り絞って静かに言った。

「ええ~~!姉上が‥!?まぁ~~どうして‥、こんなに早くに‥?」

‥、と姉の死に驚きながらも、どこかで安堵感を覚えたのか、ツクヨミの身体の震えが止まったようにタマヨリは感じた。

 そして、よく見るとツクヨミが驚いた割には目が狼狽えていないのを見てとった。

 タマヨリは互いに抱き合いながらも、後ろで唖然と佇んでいる若い二人に目を向けた。

 ツクヨミもタマヨリの気遣いに気付き、涙を拭いながら、タマヨリの肩越しに二人を見た。

「ええ~~!」

 二人ともツクヨミの顔を見るなり、驚きの顔になり小さく呟いた。

 イスズビメの面影がそのまま残っている‥、とイッセイはびっくりしながら横にいるイスズビメをちらっと見た。

 イスズビメもその気配に気付き、兄に何か言いたそうに不思議そうな顔をして

、もう一度ツクヨミをじっと見た。

 タマヨリがそっと二人に近付き

「ヒミコ女王の母上様ですよ‥そしてオオヒルメ様の妹君なの‥、」

 何故、この宇佐に立ち寄ったかの理由を告げた。

 当初は、西都原から筑紫の伊都国王、オオヒルメの長男のニニギに母の死を報告し、霊位(たましろ、位牌)をお渡しして、ヤマトのヒミコ女王の元へ行く予定であつたのだ。当初は宇佐に寄る計画はなかった。

 ところが国東(くにさき

)半島(大分県)を越える頃に為って、ククノチ大臣の次男アマツクメにタマヨリは宇佐に寄ることを指示したのだ。

 宇佐国については誰も知識はなかったが、イッセイだけは、ヒミコ女王の生家で有ることを知っていた。

 イッセイとイスズビメは

、慌ててツクヨミに駆け寄り

「大叔母様‥!イッセイと申します」

「妹のイスズビメと申します」

と二人ともはきはき挨拶した。

「そう~~お二人とも仲の良いご兄妹ですこと‥、私

、ツクヨミと申しますの‥

遠路はるばるここまで来られるのに大変だったでしょう。お疲れ様です‥、それより‥お祖母様が亡く為られお寂しいでしょう。私の姉ですけど若い頃、数回お会いしただけなのよ私達。

でも私にとつては頼もしい姉でしたわ。私が引っ込み思案だった為、よく、〈文〉で励ましていただいたのよ‥、」

と、昔を懐かしむかのように、二人からちょっと目を反らして思い浮かべる仕草をした。

「ツクヨミ‥!皆様、お疲れのようでしよう。早くお家の中へ入っていただいたら‥」

 後ろからいつの間にか、母の〈ナキワサメ〉が来てツクヨミを急かせた。

「まあ~~お婆あ~様。ご無沙汰しておりました。昔、お世話になったタマヨリです」

と挨拶に向かおうとした時、ナキワサメの側にいる姥見て

「まぁ~~トシ様も‥!」

急いで二人の前に行き、何回も頭を下げた。

「タマヨリ様、ご無沙汰しております。本当にお元気そうで‥嬉しいですわ‥」

とトシもタマヨリの動きを止めて、代わりに自分が何度も頭を下げた。

「タマヨリ殿‥本当にお元気そうで‥、」

 ナキワサメも涙ぐんでいるようにタマヨリの顔をじっと見て嬉しそうに言った。

「さぁさぁ~~皆様‥、早くお家にお入りに為って

‥!」

 ツクヨミが今度は自分が

皆を元気づけなければ、と

テキパキと奴婢(召使い、奴隷の身分)達に膳の仕度と来訪者の疲れを癒すよう各部屋の段取りを指示した

「タマヨリ様‥あのイスズビメ達の後ろにいる精悍な若者は何方かしら‥?」

 ツクヨミは、決してイスズビメがヒルメの娘であることは告げられない寂しさはあったが、こんなに立派な女性に為っているのを見ると、タマヨリに感謝こそすれ、娘のヒルメを恨むことも一切しないと決心していた。

 しかし、何気なくイスズビメの存在を確めようと、自然に目が行くのは仕方がないことであった。

「ええ~~この旅を指揮されて、皆様を面倒見て頂いているアマツクメとおっしゃいます。西都原で大臣をされているククノチ様のご次男ですわ‥、確か息子のイッセイより四~五才上だと思いますわ‥」

「ええ‥、ククノチ様もご健在で居られるのですね

‥?」

「ええ‥、ククノチ様をご存知でしたの‥ツクヨミ様

‥、」

「ええ‥主人のナムチが昔、この宇佐に迷い来んで来た時に、その船団の半分は〈ワタツミ〉様達が居残り、あとの半分は確かククノチ様が皆を引き連れて西都原国へ行かれたのですわ。私の祖父のミナカミヌシが西都原のオオトノジ王に〈文〉を書いてナムチに

渡していたので、よく覚えているの‥、その時は、ナムチとは夫婦ではなかったけど、姉のオオヒルメの

国へ行くんだわ‥、と懐かしく思っていたのでよく覚えているのよ」

「そうでしたか‥そのククノチ様は、トヨウケジ様とご一緒に私達より一月遅れで、ヤマトの三輪山に居られるナムチ様に、オオヒルメ様の【霊位】(たましろ

、位牌)をお届けに行かれる筈ですわ‥、」

「そうですか‥、」

 ツクヨミは、ナムチとオオヒルメのこととなると、昔、苦々しく悔しい思いをさせられていたので、未だしっくりしていないが、あの妖艶で輝くような美しさは、地の民達が天から舞い降りた天女に見えていたに違いない。夫のナムチは初めて会った時、きっとそう

思ったに違いないのだ。おまけに、いざとなると男顔負けの行動力と残虐さを持って相手を威圧するものだから、味方にとっては勇者そのものなんだわ。しかし

、三十年近く前に父(ナギ

)が出雲国王に推挙された大会議の席で

「ナムチ‥イワレヒコが五才に為ったのよ‥!」

と人目も憚らず、嬉しそうに話した時には、私はびっくりして思いっ切り姉の膝をツネツテしまったんだ。姉は痛そうな顔をして睨んでいたけど、その時が私の唯一の仕返しだったんだわ

‥、

 何となくニンマリしているツクヨミを見て

「ツクヨミ様、何か楽しい事でも思い出されたんですか‥?」

 タマヨリは始め、ツクヨミが難しそうな顔をしていたのが、急にニンマリしたのでびっくりして尋ねた。

「いえ‥タマヨリ‥い~~

何でもないのよ‥」

と恥ずかしそうに笑った。

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