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イワレヒコは、ヒミコ女王が姉、大物主のナムチが父であることを知らず三輪山へ

「ええ~~オシホミミ王の弟‥、!?」

 イワレヒコはびっくりして信じられぬ思いで問い返した。

 当時、伊都国王のオシホミミは、倭人が辰韓を排除する為に要請した二十隻ほどの船団を、伊都国としては協力しかねるので出せぬと要請を無視していた。倭人は辰韓が弁韓(釜山近辺を領有する朝鮮三国の一つ)を侵略しにかかっているので、弁韓を助けようと

していたのだ。それは、将来倭人連合国を設立するのにどうしても守らねば為らない、半島(朝鮮)の南端を拠点にしようという魂胆があった為だ。

 しかし、オシホミミはそこまで読みはなく、半島でのいざこざに巻き込まれる

のを嫌い、交渉に当たっていた〈スサ(イワレヒコの叔父)〉達に猛然と反発した。

 それでもスサは、伊都国にも大勢弁韓人の民達が在住し、弁韓が辰韓に侵略されると帰る所が無くなり、そして弁韓国にも大勢の倭人集団が各所に散在しているので、何とか協力してくれぬかと再三説得しようと試みたが、オシホミミは耳を貸さなかった。

 オシホミミも、同じ倭人として先祖伝来より列島(日本)に住み着き、弁韓にもかなりの縁者が居ると言うのに、余りにも優遇された現在の保身にしがみつく様に、スサ達は途方に暮れていたのだ。

 しかし、未だ女王にも成っていなかったヒルメ〈ヒミコ女王〉の霊感が、今、辰韓を討たねば弁韓の運命や、連合国を設立しようとする計画が台無しになると告げていると聞いたオオヒルメは、弟のスサに対して、やむ無き場合は最終手段に訴えても、伊都国船団を確保せよと指示を出したのだ。

 結局、スサはオシホミミ王や皇太子を暗殺し、伊都国王にニニギを据えようと

伊都国の民達を説得し了解を得た。そして陸と海から

辰韓を攻め勝利を収めた。辰韓を弁韓から追い出し、弁韓と協力して倭人連合国の半島の拠点〈(イ加-イ弥郡)かやぐん〉にする事に成功したのだ。

 そこまではイワレヒコも

少年時代であつたが理解していた。

 おまけに奴国の船団に母

(オオヒルメ)と乗り込み、辰韓船団を蹴散らした

母の勇姿が目に浮かぶ。

 そんな母のことだ。年を重ねても列島(日本)の将来を憂うきもちは、ちっとも変わらないのではないか

 それで少しでもヒミコ女王の手助けを‥、と。

イワレヒコは、益々母オオヒルメの今度の動きが心配になってき出した。

「イワレヒコ殿‥!」

「イワレヒコ様‥、」

 オオヒヒ王もホホデミも、オシホミミ王の弟と聞いて、イワレヒコがじっと憂いを持つた目で考え込んでしまったので、次の言葉を待ったが、なかなか口を開かないので、しびれを切らして声を掛けた。

「いや‥、申し訳ございません‥、」

 慌ててイワレヒコは両者に頭を下げ 

「実は、オシホミミ王一族を排除したのは〈叔父のスサ〉だと聞いていますが、その指示をしたのは母のオオヒルメだと私は思っていました。なのにその一族の男性との間にお子を授かっていたとは信じられないのです。しかし、母はその自分の子まで抹殺してもやむ得ぬと指示を出したのですから当時の心境、いや状況が逼迫していたのだと思います。ところが近年、その子が生存していたことを知って、何らかの接触をしたのではないか‥、と」

「ふう~~む‥、オオヒルメ様がのう‥、」

「すると‥、オオヒルメ様のお子はニニギ王、ニギハヤヒ、イワレヒコ様‥、と言うことになりますか

‥、」

 イワレヒコは俯いたまま

、二人の困ったような口調に詫びようがなかった。

 オオヒヒは昔、父のクニクル王から、倭人連合国の設立の際、国王はニニギ様

だと思っておったが孫のヒミコ様にとナギ王(ヒミコの祖父)が決定された時、

びっくりしたと話していたのん思い出していた。

 巫女(霊感のある女子)を含めての大王であるなら

、当時人気があり勇者としてその行動力の敏速さに誰もが絶賛していたオオヒルメ様が的確では無いかと、

連合国内部でも意見が別れていたのだ。

 おまけに主要地(首都)を筑紫(福岡近辺)でなく

大和(ヤマト、奈良)に設置しようとしていたことも連合国内では謎の一つでも

あった。

しかし、ナギ王の倭人の歴史と現実を捉えた巧みな説得力と、誰もが考えなかったこの列島(日本)の将来を、倭人を中心とした連合国設立の強力な信念と計画とで実現しようという覚悟

は、誰にも止める事が出来なかった。

 その時父は、オオヒルメ様のお子はニニギ様だけかと思ったら、まだ年端もいかぬ弟が居るそうじゃ‥、

どこぞで授かったのやら?

‥、と笑っていた。その時

、自分は余り関心無く黙って聞いていたが‥まさか

‥、イワレヒコ殿も‥!」

 オオヒヒは、自分の勝手な想像にびくっと体を振るわして、チラッとホホデミを見た。

 ホホデミも、若き頃フゲキ〈巫(フ、女)-巫頁

(ゲキ、男)。出雲国が各地に配した巫達〉としてヒルメ(ヒミコ女王)達と西都原国へ行ってオオヒルメと会った時のことを思い出していた。

 あの時、叔父の〈ワタツミ(連合国海軍大将)〉が

オオヒルメ様とお会いして

[何と妖艶で美しいお方じゃのうオオヒルメ様は‥]

とまだ独身であった叔父にとっては度肝を抜かれたようであった。甥の前なので

、気恥ずかしそうに[ナムチ様(ヒミコの父)が虜になってしまったのが分かるような気がするなぁ‥、ツクヨミ様(ヒミコの母)には申し訳ない話だが‥、あっはははあ~~]

と、ごまかし笑いで話を変えようとした。

[ええ~~ヒルメのお父上のナムチ様がオオヒルメ様の虜になったって‥、どういうことですか‥、叔父上

‥?]

[いや、何でも無い‥ナムチ様が若い頃フゲキとしてあちこち巡っていた時、この西都原に寄った時の話を聞いただけよ‥、どうということではないよ‥ホホデミ]

と、その時それで話を切ってしまわれたが‥もしかして‥、

と、ホホデミはイワレヒコに目を向けようとした時、

オオヒヒがチラツと自分を

見るのに相づちを打って欲しそうな目付きだったので

「オオヒヒ王‥何か‥、?」

と様子を伺うように小声で

尋ねた。

 イワレヒコが、急に小声になったホホデミを不思議そうに見た。

 オオヒヒはホホデミの問いには答えず、うんうんと小さく頷き

「ところでイワレヒコ殿

‥先ほど女王が三輪山の

〈ナムチ大物主様〉にお会いするように指示された

‥、と聞いたが、何か特別な趣があってのお話だったのかね‥、」

「いや‥何とも特別には理由はおっしゃっりませんでしたがナムチ叔父の若かりし頃の武勇伝でもお聞きになったら‥というぐらいで‥何故こんな時期に‥、と私も真意は分かりませぬ」

「何と、女王が大物主様にお会いしに行かれよと‥!」

 ホホデミはびっくりして、オオヒヒの顔を見た。

 オオヒヒは、今度は大きくうんうんと頷いた。

「何か有るのですか‥ナムチ叔父の話とは‥?」

 イワレヒコは、二人が何かを隠しているのでは無いかと不思議そうに尋ねた。

「いやいやイワレヒコ殿。

女王は、そなたの母上が今度の件で関わりが有るのか

と、そなたが案じ、気落ちしているのを見て、大物主様のお話でも聞いて心を静めよ‥、そういうご配慮でのご指示だと思ったんだが、ホホデミ殿もそのようなお考えのようだったので

相づちを打ったまでなんだ

‥イワレヒコ殿」

「ははあ~~恐れ入ります‥、」

 ホホデミが深々と頭を下げた。


 「全く‥困ったことに相成りました。〈フツヌシ達

〉の話では、オオヒルメ様からはニギハヤヒ様の件は

、当時高千穂でお会いした時には一切お話は出なかった、と聞いています」

 黙って聞いていたヒミコが

「私は、伯母様オオヒルメとニギハヤヒという方との関り合いが分からぬから気になっているのです。

それがはっきりしないと対処の仕方次第で大きな過ちを犯すか分からないのですよ‥、オオヒヒ様は、どのようなお考えだったのですか?」

 ヒミコは、7年前の中華(中国)での「赤壁せきへき」での戦いで、大軍を持つ〈曹操〉が大敗した

原因の一つに「奇門遁甲きもんとんこう」という術を〈諸葛孔明〉という敵方の軍師に使われて敗走した話を聞き、当時のヒミコ自身の「連合国」の行く末に対する活動に不安を覚えたのだ。

「政(まつりごと、政治)」を自分が主体になって動いてはいけない。自分は「民」の日常の不安を、少しでも和らげる役割であらねばならない。

 そんな思いからこの何年間、ずっと空を見上げて、

日・月・星・雲の動きに自分が入っていけるか‥、という難解な修行に取り組んでいた。

 その事情は、ホホデミも

よく承知していた。

「その事でございます女王‥、」

「ええ~~ニギハヤヒという方の素性か分かったのですか‥、!」

「はい。五年前に女王様から〈月〉の動きがおかしい

‥、と言う話から〈日蝕〉が早まったのではないかと懸念されて、〈フツヌシ〉達三人を高千穂の岩戸へ送られるよう指示されました

。実に女王が予言した「日蝕」が起こり、それに乗じて無頼漢がオオヒルメ様を襲撃しました。三人の力でオオヒルメ様には危害はなかつたのですが、オオヒルメ様が信頼し娘のように可愛いがっていたワカヒルメ様が殺害されました。その

無頼漢の長が〈ヨンギジヨン〉という、元西都原国を貶めた馬韓の将軍であった

ことが、大きな問題に為りました」

「その話は報告にあったはずよ」

 ヒミコは、早く結論を話すよう指示する目付きになった。

「はい。ニギハヤヒ様は、オオヒルメ様のお子なのです」

 意地悪く、ホホデミは何の説明も無く結論を突き出した。

「ええ‥、伯母様のお子ですって!?」

 もうヒミコは、今までの温和な顔から、火が出たように真っ赤な顔になった。

「はい‥、これは〈ナンシヨウメ〉殿からのお話で、

海軍副将軍の〈ヨンソン〉から聞いた話です」

「ナンシヨウメが、帰って来ていたのですか‥、?」

 ナンシヨウメの名が出たので少し落ち着いたのか、ホホデミの戦法に惑わされないよう構えたのか、真っ赤な顔がまだ正常に戻らぬうちに、穏やかに尋ねた。

 ホホデミもそれを察し、ゆっくり話し始めた。

「7、八年前に、伯済(ペクチエ、後の百済くだら)の仇首クス王の皇子沙伴サホウ王の息子の〈オンソ〉王子とトヨタマジ(ホホデミと又従兄妹)が、又、仇首王の実弟の古而コニ王の孫娘〈ウネ〉様とナンシヨウメ殿が、それぞれ同時期に結婚されたのは、女王もご存知でしが、この高千穂の事件の当時、ヨンギジヨンが筑紫の八代(熊本県)でかくまわれていたというので、沙伴王とヨンソン副将軍と伴にナンシヨウメ殿が、八代の民達に説得に行ったらしいのです」

「確か‥八代には馬韓兵は

置かないと聞いていますが‥、」

 ヒミコは二十数年前に西都原の騒動の処理で倭国連合国の海軍大将〈ワタツミ〉と馬韓扶余プヨ国のチヤンドク将軍との話し合いでの決着を聞いていたので不思議に思って聞いて見た。

「確かにそうなのですが、八代の民達が事実馬韓兵を

匿まっていたことに、同じ馬韓の伯済ペクチエ国が、兵を置かなくとも、管理は伯済国が行うという話し合いだったそうです。

 それでナンシヨウメ殿は

二人よりも先に帰路に向かったのですが、伊都国(福岡県)の手前に位置する倭人連合国の大国である吉野ケ里(佐賀県)に寄った時に、当のニギハヤヒ様に会われたということらしいです」

「ニギハヤヒという方は吉野ケ里に居たのですか‥?」

「ナンシヨウメ殿と挨拶を交わしてニギハヤヒ様が、自分の生い立ちからの素性を話されていくのを聞いているうちに、ナンシヨウメ殿はどうしても気に為ることが頭に残った。それは、

オオヒルメ様が馬韓のヨンギジヨンに襲われる前年に

、ニギハヤヒが高千穂に会いに行ったことだ。

[オオヒルメ様のご意志からですか‥?オオヒルメ様に会いに行かれたのは‥]

[はいそうです。〈母上〉からはその五年前に、どうしても相談したいことが有るので、是非近々に高千穂へ来るよう〈文〉が有りました]

「ええ‥、!母上様ですと

!!]

[ええ、オオヒルメ様は、私の母なのです。昔、オシホミミ王が皇太子の頃の弟

〈ミカハヤヒ〉とオオヒルメとの間に出来た子なのです‥、私は]

 ナンシヨウメは、何がどうなっているのか頭が混乱しながらも

[オオヒルメ様は当時、奴国(福岡市)の皇太子〈アシナカツ〉様とはご夫婦であった筈ですが‥?」

 どうしてもミカハヤヒと

オオヒルメが結びつかない

ので実態から探った。



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