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オオヒルメ「天照大神」危うし‥、馬韓のヨンギジヨン将軍、高千穂の「岩戸」へ突撃体制に入る

「それで‥ヨンガン殿、洞窟までの地図が有ればお借りしたいのだが‥、」

「ええ‥それはもう~~。ヒヨンイン‥、ヒヨンイン

此方へ来なさい‥」

 ヨンガンの声は自然にト-ンが落ちる。

家の裏で田を耕している息子を呼び寄せた。

 ヨンギジヨンは、未だ腕を組んで考え込んでしまっていた。

「この方達が、西都原の女王様の所へ行く地図が欲しいとおっしゃっているのだが、何か書き付けた物をそちは持っておったな」

「ちょっとお待ち下さい‥

 慌てて外に飛び出し、少し離れた縦穴式の住まいから竹で丸めた筒を持って来た。

それを広げて次席の男に説明し出した。

 うんうんと頷きながら、その男は険しい数ヶ所の山道の上り、下りを自分なりの印をつけて

「どうだろう二時(ふたとき。四時間)ほどでいけそうかな‥?」

「そうですね‥もう半時(はんとき。一時間)は見ておきませんと‥、」

「そうか、そうか良く出来た地図なのでびっくりしたわな。少しキズをつけてしまったが‥、借りても良いかな」

「はい、どうぞ。父上のお知り合いの方達だそうで‥

難所が多い所ですのでご無事でお行き下さい。ただ、

西都原に知り合いでも居らぬ限り、女王様にはお目にかかれませんよ」

「そうか、そうか。忠告ありがとう」

「そう言えば‥、昨年の今頃ですか、吉野ケ里(佐賀県)から五~六人の人達が

お見舞いに来られていましたが、小父様方はどちらからのお越しですか‥?」

「うん‥、!そなた今何と言った。吉野ケ里からの客

と申したのか‥、?」

 ずっと考え込んでいて、今まで側の会話には無頓着を決め込んでいたかのようであったヨンギジヨンが、突然目を開けて、ヒヨンインを睨み付けた。

 ヒヨンインは驚いて、びくっと後ずさりし

「はい、確か吉野ケ里と申しておりました」

「う~~ん」

と又目を閉じて考え込んで

しまった。

 ヨンガンは、息子に首を振って目で合図した。

 ヒヨンインは、そっと母屋を出て、大きく口を開けて息を継いだ。

「もう~~急に睨まれたので、びっくりしたわな‥、

もう~~」


 ヨンギジヨンは、犬死にした部下達の恨みに一矢いつしを報わねばあの世で合わす顔が無い。そんな切羽詰まった思いで、今の部下達を説得し、オオヒルメへの襲撃を企ててこの

高千穂まで来た。

 しかし、当のオオヒルメは瀕死の状態ではないか。遠からずこちらから手を出さずとも消え失せてしまうような女に、死を覚悟してまで戦う必要が有るのだろうか。我はもう二度も死を逃した。我はどうでも良い。付いて来て居る部下まで、我は自分の死の為に道連れにしようとしているのか‥、

 しかし、十年もの長きに渡って難病に伏していると

というのも妙な話だ。西都原に居れば薬師(くすし。

医師)も居るし薬草も豊富なはずだ。う~~ん分からん‥、この高千穂にしか

その難病に効く薬草が無い

ということか。いやいや薬草

だけなら、畑に張番を付けて定期的に採集しに来れば良いことだ。う~~ん益々分からん‥、その時、ヨンガンの息子が〈吉野ケ里町

〉と言ったのが耳に入った

 ヨンギジヨンは急に頭に閃くものがあった。吉野ケ里と言えば、筑紫(九州

)南部を監視する「倭人連合国」の重要な拠点だ。

 オオヒルメは病では無かったのだ。姪の〈女王ヒミコ〉の援護をする為に何らかの画策をしているに違い無い。

 う~~ん‥、これは飛んだ芝居を考えたものだ。

「ヨンガン‥悪いが家族の

者達に早急に旅支度をするよう知らせてくれ‥、!」

「はあ~~?将軍‥、!?」

 ヨンガンは、ヨンギジヨンが目を開いて厳しい目付きで指示してきたので、後の言葉を失ってしまった。

 昔のあの頃の威厳のある

口調だ。

「昔、夜討ちで攻撃された時、全滅したと聞いた。しかし、最近になって全滅ではなく、その内で数人生き延びたと知らせが入った時は、自分の不甲斐なさで、

部下達を犬死にさせた悔しさで死んでも死にきれなかった日々に、僅かな光を与えてくれたような気がしたものだ」

 ええ~~!自分達のことを言っているのだ。ヨンガンは身体がびくっと震え

「それで将軍‥、!我々の

罪をどのようにして贖え

‥、と」

 ヨンガンは恐る恐る尋ねた。罪は罪‥、今の不運とは別ものだ。復讐の為のお膳立てぐらいでは収まらないだろう。

「何を馬鹿なことを言って

おる。お前達が十八もかけて作って来た生活を、又ワシが潰しにかかっているの

だぞ。そんなこと気にぜず

、早く皆に伝えよ!明日になれば必ず、そなた達に危害が及ぶに違い無いのだ

‥、それと最後に頼みたいのだが、日が暮れるまで二時(ふたとき。四時間)ほどある。女房に頼んで早急に飯を握ってくれまいか」

「分かりました‥、では

早急に!」

 外に出るなり足がふらついた。

やはりそうだつたのだ

‥、ヨンガンの頭は真っ白に為った。何をどう皆に話して良いのやら。取り敢えずチユンナミとユンミンに

相談しなくては。ヨンガンの足取りは、ヨタヨタで宙

をさ迷っているようにしか見えなかった。


 「チョンギル!皆を集めてくれぬか」

母屋の中でヨンギジヨンの

鋭い声が聞こえてきた。


 ヨンガンの嫁ユンヒと息子のヒヨンイン、娘のヨンファは、急な父の指示で

飯の炊き出しに大忙しだ。

 ヨンガンは、近くに住むチユンナミとユンミンの家族に、それぞれ四人分づつの握り飯を作らせ、終わった後すぐに旅支度の準備を

するよう指示した。

 チユンナミとユンミんは

、いよいよ来るべき時が来たか‥、と腹立たしさと悔しさで、胸が張り裂ける思いだった。

 ヨンガンが帰った後、両家の家族達は、それぞれの

父親に何が急に起こったのか、何故村を夜逃げのように離れなければ為らないのか問い詰めようとした。しかし、父達自体も突然の来訪者に顔が真っ青に為って怯えていたのを思いだし、

父が涙を流しながらも毅然として、突然の不幸を許してくれ‥、と頭を下げられると、もう何も聞かずに急いで支度の段取りに取りかかった。

 それぞれ散らばって待機していた部下達がヨンガンの母屋に集まった。総勢十二名だ。

「皆の者よお~く聞け!いよいよ我々の本願を遂げる時が来たようだ。今夜日が落ちたら、三名づつ四組に別れて出発するのだ。月が出ぬはずだから闇夜の行動となる。足下に充分注意しながら三人助け合って進んでくれ。途中別れ道に成るところは、白い布を枝に巻き付けて印を付けておく故、チョンギルが地図を持っているので、全員今から良く見て目に焼き付けておくように。虎の刻(とらのこく。午前二時)には岩戸の近くの番小屋(見張りの小屋)辺りに着くはずだ。夜明け寸前には、護衛の者達と奴婢がそれぞれの田畑作業に向かうのをよく見届け、何ヵ所の田畑があるか分からぬが、それぞれ一組(三名)づつ覚られぬよう

後を追え。

「それで、何時なんどき攻撃をかけたら‥、?

 一人が固唾を呑んで尋ねた。

「分からぬ。ただ明日は

日中に月が日に重なる為、

寸刻夜に為ってしまう日なのだ。徐々に日が欠けて真っ暗に為った一瞬を狙うのだ」

 チヨンギルが地図を拡げた。順番に三人づつ食い入るように指で道程を追いながら、気になる所はチヨンギルに質問して、頭に叩きつけようとしていた。

 その様子を見ながら

「決して何が有ろうと慌てるでないぞ。全滅しようが

誰かが生き延びようが、捕らえられようが慌てるでないぞ。犬死にした仲間達への弔い合戦だ。戦って勝つことが目的ではない。

西都原国を蔑ろ(ないがしろ)にしたのは我々の方だ

。オオヒルメが、我々を追い出したことは至極当然だが、部下達を有無も言わせず皆殺しにしたのはやり過ぎだ。殺るのならこのヨンギジヨンを八つ裂きにした方が、今までの屈辱的な目に合った思いに、胸の粋が落ちるのではなかったか

‥、我は二度も死から見放された。そなた達を道連れにする事は非常に心苦しい限りだが、今更言い訳はすまい。オオヒルメに一泡吹かせねば、あの世で犬死にした者達に会わす顔が無いのだ。それで‥、もし生き延びてもこのヨンガンの家族達には近寄らずにやって欲しい。彼らは我らが岩戸に向かうと同時に八代方面へ逃げ延びる筈だ。彼らを自由な身にさせてやりたいのだ。それは、最後の我の願いでもある。そして、彼らに、我々の夜食として握り飯を頼んでおいた。‥、

皆の者ありがとう‥、!」

 皆、小声で

「お~~!」と叫び、ヨンギジヨンに涙を流しながら、

それぞれ抱きついて来た。





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― 新着の感想 ―
[良い点] とりあえず参考までに……神武天皇実在論者諸氏は『記紀』の伝承の「古さ」を立論証していることが理由です。それは当該伝承が、いわゆる後世の造作ではないことを立論証していることでもあります。…
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