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ヒミコは、フゲキ達を年に一度出雲に全員集めることを将来考えていたその意義は‥?

「もう~~イヤだわ‥、貴女の強い霊力の怖さは経験済みよ。所で、〈出雲〉をどうする気なの‥?」

「そうねえ~~難しい事だわ‥、私が考えていることは‥、今、全国に散らばつている〈フゲキ〉様達が、そのままその地域の〈神〉に成って、村や国を守って欲しいの」

「ええ‥!〈神〉に成れって‥一体どういうこと‥!?」

「ええ‥正式には〈神の意思を伝える〉と言うことだけどね。私達人間は、ずつと生きて生活するのに、一人ではないわ。いろんな家族の集団の中の一人として存在するのだわ。個人の意思、家族の意思、集団の意思を全て一人一人が背負っているの。そして逆に、個人、家族、集団が、その一人一人一人に対して、存在を維持する責任が有るのよ。それらは皆、〈神〉の意思の元に出来上がってきた決まり事なの。例えば、一つの地域で困った問題が生じた時、〈神〉の意思に委ねなければ為らないわ。〈神〉の下した決定を、皆に伝えねばならないのよ。でも〈神〉は何にも言って

くれないわ」

「ではどうしろと言うの‥?〈神〉に成れ、〈神

の意思を伝えよ〉とか言っても、〈神〉が何も言ってくれなければ、その地に居着いた〈フゲキ達〉はどうすればいいの‥?」

「そうではないのよ。今までの私達が知っている〈神〉は、この世に存在する全ての物体に〈神〉が宿るということなの。それは〈精霊〉と言う物体の〈気〉が、私達が見えない所で変化し、人間を惑わす力を持っているからなの」

「それでは、どうすれば良いの‥?」

 オオゲツは、自分の知らない世界に入り、ヒルメの説明に不安と怖いもの見たさの心境に入って行った。

「そうねえ‥、それは新しい〈神〉の存在を作って行かなくては為らないと言うことなの」

「新しい神って、それ何

‥!信じられないわ、ヒルメの言ってること‥、」

「オオゲツ‥そんなにびっくりすることでは無いのよ。貴女の父や母。そして祖父や祖母を辿って行けば皆、それぞれ自分が育ったことに感謝しているはずよ‥、」

「そうよ‥、でも、私は幼い頃は悲しかった。父は早々と他の女性と一緒に、〈伊勢〉に行って戻って来ないし、母は滅多に〈宇美の里〉には来て呉れなかったわ‥、でも今は、母や父には感謝しているけどね‥、」

「でしょう‥、オオゲツ。

オオゲツ‥話しは変わるけど、貴女のお母様が〈宇美の里〉に来て、貴女の旅立ちを遠くで見ていたのを私は見たわ」

「ええ~~嘘‥、ヒルメ!

貴女、私の母など知らないんでしょう‥!?」

「そうよ‥その頃は知らなかったわ。でも宇美の里を旅立って六年後に、〈トヨウケジ〉様に出会ったのよ

‥、」

「ええ~~私の母の名まで知っているの‥?」

「オオゲツ、まだそんなに驚くのは早いわよ‥、」

「何々‥ヒルメ。一体何を隠しているの‥、なんなの‥私の身に何か起こりそうで心配だわ。体が震えだして来たわ‥、」

「オオゲツ‥、私の目を見て‥、」

「イヤだわ、貴女の世界は怖いの‥、」

 オオゲツは、両手で耳を押さえ、目をつぶって頭を下げた。

 〈ヒミコ〉は優しくオオゲツの両手を取って

「オオゲツ‥事実をちゃんと受け入れて、自分の次の行動に移すのよ。逃げては駄目、なの。何の解決にも為らないわ。私が別に隠していた訳じゃ無いわ。この事は私がたまたま知っただけで、今、貴女に伝えただけだよ。それでね、まだ貴女に伝えたいことがあったけど、追々話するので、今は我慢してね。

 それで先ほどの話に戻るわ。貴女のご両親に対する思いを見ても分かるように、両親、祖父母‥と私達人間は、特に祖先を大事に重んずる動物なのよ‥、全ての物体に存する〈精霊〉を崇めることも大事だけれど、もっと私達が身近に感ずる〈神〉が在るのだということを知って欲しかったの」

「それは、祖先を今まで以上にもっと崇めよ‥ということ‥?」

 オオゲツは頭を上げじっとヒルメを見た。

〈ヒミコ〉の目は光らず優しい眼差しでじっとオオゲツを見ていた。

「そうよ‥、人はいずれ皆死ぬわ。でも亡くなったら

、皆〈神〉に成るのよ。そうでしよう‥父や母、祖父や祖母が居なくなっても、何時までも彼らの仕草や言葉が残るわ。これから〈フゲキ〉様達に、その地域で

〈祖霊神〉を崇める活動をして欲しいということなのよ‥彼らに〈神〉に成れとは‥、」

 怖く無くなった〈ヒルメ〉をじっと見ていたオオゲツは、その〈ヒミコ〉の話に頷き、

「それは分かったわ。でも〈出雲の国〉はどうするの‥?」

「そうねえ~~‥」

 ヒミコは又、じっとオオゲツを見て

「全国のフゲキ様たちを、出雲に呼ぼうかしら‥?」

「ええ‥!?」

 オオゲツはびっくりして

「ヒルメ‥、!一体貴女は何を考えているの‥!?」

「いいえ。それはまだまだ

先の話よ‥、オオゲツ〈神〉に成った〈巫-巫頁フゲキ〉様達を見たいの‥ウフフ‥、」

 びっくりして目を白黒させているオオゲツに

「オオゲツ‥冗談よ。そんな不思議そうな顔で私を見ないで‥それはね、フゲキ様達が、地域、地域での悩みを相談出来る場を持ちたいということよ。政(まつりごと、政治)とは別の、民達の生活のことや、若い男女がスムースに結ばれて、子宝に恵まれているかなど、出雲に集まって、皆で話し合えば良い知恵が出るわ‥、年に一度集まって頂くのよ。そしてそれは〈倭人が制する〉ことが出来ない領域にして置くのよ。将来倭人がこの国を一つの大国に作り上げて行っても、私は〈出雲の威厳〉を保ちたいの、」

 オオゲツは呆気にとられ、〈ヒミコ〉の先を読む鋭さと。〈国や民を思う気持ちの深さ〉に驚き、この人こそこの国を発展させ守って行ける人だと、心底感じた。

 二人の付き添いの女性は、改めて〈ヒミコ女王〉に感服していた。出雲のことは良く分から無くても、出雲の〈フゲキ〉を代表するオオゲツという、田畑の耕作については右に出る者は無いと噂される女性を、

此処まで説得するとは‥、

祖父の〈クニクル王〉が、私達姉妹を〈ヒミコ女王〉の側近として仕えるよう配慮したのが、納得出来る思いであった。


「まあ~~何と広いの‥!?

オオゲツは、二上山の頂上に立って、大阪平野、奈良盆地をぐるり眺め回して、感嘆の声を上げた。


 長い砂浜が、大きな岩礁で途切れそうになつた先に、まだ少し砂浜が続いていた。

 若い娘が一人、浅瀬の海辺で戯れている。

少し泳いでは立ち上がり、上がったばかりの朝日に向かって、大きく手を広げて何かを語り、礼をするようにお辞儀して体を起こし、三拍すると又泳ぎ出した。それを何度も繰り返した後、疲れたのか砂浜に上がって、仰向けに寝て大きく両手を広げた。全裸であった。

「まあ~~何てはしたない‥!」

 娘から少し離れた所で、心配そうに様子を伺っていた、娘より少しばかり年が嵩んだ女性が呟いて

「ヨシ‥此を持って被せてきなさい!」

と隣にいた少女の奴婢に指示した。

 玄界灘を真向いに控えて、初夏の海は危険が伴う。何時波が強く押し寄せて来るか予測できない。今日は、いつもより早く「姫」が浜辺に上がったので安堵したが、余りにも奔放すぎるので、いつも冷や冷やさせられている。此処は志賀島(福岡)に近い末端の海辺である。

 確かにうら若い娘が真っ裸で泳ぐのは、物見の輩の餌食に成りかねないが、そこはそこ、地元の首長の「姫」ともなれば誰も近づかない。

 ただ今日は、少し離れた高台で、若い男が岩場に腰かけて、じっと此方を見たり、遠く水平線を眺めたりして、一人静かに佇んでいた。

「イワナガヒ様‥タキツビメ様は目をつぶっていますよ。お眠りに成ったのではございません‥?」

 タキツビメのお腹にぬのを被せて、戻ってきたヨシが心配そうにイワナガヒに伝えた。

「それに、後ろの高台から、若そうな男の人が此方を見ていますわ‥!」

 男の方には目を向けず、ヨシが[じっと姫を見ていて失礼な方だわ]と憮然とした顔でつげた。

「ヨシ!そちらを見ては駄目よ‥、」

 イワナガヒもどうしていいか分からず、取り敢えず、気付かなかつた振りをしようと思った。

 その時、浜辺添いに此方に向かって来る小舟が見えた。

「あら!ヨシのお父さんじゃないの‥、あの船は‥?」

とヨシを小突き、ほっと息をついた。[こんな時に来てくれて良かったわ‥]

 




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