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ナムチ、三輪山の「大物主」に‥?

「なんじゃ、此処は‥、出雲の村か‥?」

 ナムチに会った途端ナギは、何とも言い難い顔付きで周りを見渡した。

「ナムチ‥、久し振りよのう。元気でおつたようじゃな。そなたの顔を見るまで、兄上と心配ばかりしておつたのじゃが‥」

 オオヤマツ(ナギの従弟

。ナギの父トコタチの弟の息子)は、ナムチが、以外と元気にこの地で頑張って要るのを知って安堵していた。

「そうなんじゃ。さっき兄上が言われたように、此処に来る道すがら、見知った者達がいて頭を下げるなり、道端に座って深く頭を下げて動かんのじゃ。一人一人にもう良いもう良い‥此処は出雲ではないから早う先に行きなされ‥、とまあ~ナギ王が難儀されてのう‥、ナムチ」

 叔父のオオヤマツがニコニコして、ナムチに抱きついてきた。

「叔父上‥、お久しゆうございます。お元気そうで‥何よりです‥、」

と体を離し、じっと叔父の顔を見た。

「ナムチ‥、ワシには挨拶が無いのか」

 父のナギが二人の様子を見て、恨めしげにナムチを促した。

「父上もお元気そうで何よりです」

とニタツと笑いながら挨拶した。

「何じゃ。ワシにはついでの挨拶か‥あははは

~~」

 互いに、やはり六年ぶりの再会であった。

 よく、此処まで来てくれた父の顔を見ながら、ナムチが、この村に出雲の人達が多く住み着いている訳を話し出した。

「この初瀬はつせの村(桜井市大神山の東側の麓の村)は、昔から名張(三重県)や熊野(三重県、和歌山)から流れて来た者が多く住み着いていたのですが、私が十年前にスクナヒコ(タカムスヒ前出雲国王の末息子-ナミの腹違いの弟)と来た時は、半分ほど葛城方面に移動してしまって、田畑を耕す手が足り無くなっていました。それで、六年前に出雲に帰った時、そんな話をしていると、二~三十人の者が付いて来て人手不足に協力してくれたのです」

 ナギは、ちょっと目を反らし

「う~~んそれで、今ではその連れの者の仲間達が多く出雲から移住して来た‥

というのか」

「父上に黙っていて申し訳ありません。以前から父上はよく言ってました。葛城の里に将来、力をいれねば‥、と。その意気込みに釣られて〈先行き投資〉ということで、勝ってに判断しました‥、お許し下さい」

「何々‥薄々知っておったわ。数年前から、出雲の村のあちこちで、旅支度の者を見掛けて、その内一つの村の長老に尋ねたことがある」

「はい、私も御一緒させて貰って聞いたことがあります」

「ええ!叔父上も承知なのですか‥?」

「いや、それでじゃ。その長老に、この出雲より魅力有る場所でもあるのか?と聞くと‥何の、この出雲より住みやすい所などありゃあせんよ。ナムチ様が、葛城という里でご苦労為さっていると噂になって、若い者が飛んで行きましたわ、とな。それで、こちらの手が手薄になって難儀せぬかと聞くと、なに、この出雲の国は昔から全国に旅歩き、仲間を作って来た種族じゃ。皆、子宝が自分を守ってくれると、男も女も良く知っとるわな。じゃから、子を沢山産むことに慣れとるで、人手が無くなるようにはしとらん。と何か怒っているのか自慢しとるのか良く分からん話を聞いて、改めて出雲の偉大さを

知った次第じゃ」いや~~あそうでしたか。もう今では五~六百人ほどに成っているので、私も出雲のことが心配し出して来た所なんですよ。実は父上が来たのもその件を含めてかと‥」

「ナムチ、大丈夫だ。今日は、そういうことも含めてナギ様が来なすったのじゃ

「父上、倭人の国づくりに、何か新たな進展でもありましたか‥?」

「うん‥、いや、それは後で話そう。それよりもナムチ‥この大三輪山(おおみわやま、大神山)での修行で得たものが有ったのか

‥?」

「父上‥この初瀬を含めて、葛城の里は、七~八百年前までは、あちこちの里からいろんな種族が入っては出、又来ては去るという繰り返しでした。原地は広いのですが、何も無いのでは生きて行けません。せめて海に近ければ、貝などを食して何とかなったでしょうが、川魚だけでは限りがあります。種族によっては、畑を耕す者達も居たでしょうが、種が尽きればもう何年も持ちませんでした。稲作もひょんなル-トから入り込んで栽培したでしようが、この栽培はいろいろな条件があってこそ育成するものなので、簡単には育てきれず、常食に足る率はわずかであったに違いありません。しかし、それから二~三百年後に、民達の種族に変化が起こって来ました。今まで、生駒、葛城山地から越えることがなかった韓族からぞくや倭族がどっと入り込んで来たからです。彼らは、畑作や稲作を育てる知識を持っており、その耕具やそれを造る工具の技術を身に付けて居たのです。そして、彼らは、この葛城の地の土壌や、気候を調べながら計画的に一年の収穫を確保していったのです。稲作は特に難しく、遅れてですが徐々にある程度の収穫が出きるようにまで持っていったのだと思います。今でも、この地の半分も開墾出来ていませんが韓人や倭人の知識が大いに役立ったのでしょう。私が思うに、その頃が葛城の地の始まりと言っていいと思います」

「そうよのう‥、五百年前以前となると、この列島でそこそこの安定した生活を確保維持した部族など、数えるほどしか無かったろうのう‥、」

「その頃から、この三輪山を神のように崇め出したと思いますよ」

「うん‥、何ゆえに‥?」

「葛城の地の東に端然と聳える大三輪山から、後光が射すように朝日が姿を現すのですから、田畑に勤しむ者にとっては、まさしく〈神〉以外何者でも無いのです」

「その山が日を差し出すと‥、!」

「そうです。この地の民達はそのように考え、大事にこの山のいろんな物を崇めているのです。例えば、山の中に在る大きな岩とか大木などです」

「ふう~む‥、それで、そなたはそれを利用しようとしているのか‥?」

「いや、利用では無く、私がそれに成り切ると言うことです」

「‥、‥?」

 ナギはナムチの言っていることが良く分からなかった。

「修行というのは、その為のことか‥?」

「そうです。私がこの三輪山に成りきることなのです

「そんなことが有り得るのか‥?」

「分かりません。この山の〈大物主おおものぬし〉に成りきろうと思っています」

「‥、‥?」

 又してもナギは、ナムチの言っていることが出来ずに、じっとナムチの顔を半信半疑に見据えた。

[ヒルメの魔術は、この親有ってのことだったかも知れん‥、]

 ナギは気を取り直し

「実は、前にも言っていたように、倭人の連合国を造るのに〈王をヒルメ〉と決めたのだが、そなたには異存は無いな‥、」

「ええ!!ヒルメを!?」

 ナムチは父の言葉に驚き

、一瞬二の句告げなかった

「ヒルメでは無く、姉(ナムチの腹違い)のオオヒルメの間違いでは‥?」

「いや、そなたの娘のヒルメだ」

「まだ十七才の娘ですよ父上‥、そんな大それた役をヒルメに‥、!一国だけでは無く、沢山の国々を纏めるなど‥、出来るのでしょうか‥?」

「心配には及ばん。ヒルメは、そなたが望んでいるような平凡な娘では無い。政(まつりごと、政治)は、クニクル王に手助けして貰って、祭事を中心に全てを仕切ってもらう積もりじゃ。私もまだ元気じゃ。暫くは援護も出来よう」

「‥、‥?」

 余りにも唐突な話に、ナムチは考え込んでしまった。

「それで、この近くの巻向まきむくの地に、ヒルメの王としての館を作ってもらうよう、クニクル王に頼んで来たばかりじゃ」

「ええ‥、!」

 又してもナムチの顔が驚きに歪む。

「すると父上。連合国の中枢は、筑紫(九州)や出雲では無く、この葛城(奈良)に置くお積もりですか‥、昔からこの葛城の話をされていましたが、そういう積もりだったのですね

「そうだ‥、ようやく念願が叶って行きそうなのだ。ナムチ‥協力してくれまいか‥、」

 ナギの目には、事を成し遂げた時の自信に溢れた満足感が滲み出ていた。


 稲の茎が笹のように成長して、もう一メ-トル近くまで達していた。田植えしてから、二ヶ月以上も経とうかというに、未だ稲穂の芽が出て来る気配も無い。知らない人が見ると、ただの雑草に過ぎないと見過ごすだろう。勿論、アメノホヒ(ナミの腹違いの兄)は出雲で稲作に従事していたので仕組みは分かっている。日照りと、常時水を絶やさないようにしなければ、育たないのがこの稲作の一番難しい所だ。

 人が手を付けないでいた頃は、湿地帯でしか見掛けなかったろう。いつ頃から、この稲の実(米)を食物として作り出したのだろう。

 そんな事を頭に思い巡らせながら、目の前に広がる稲畑の畦道を、三人の付人を後に従え、先に見え出した低い丘に向かって、もう温な田園風景も目の前から消え、気もそぞろ、心もそぞろに自然と早足となった。

[ようやく会える。ナギ、ナミ様達の長男ヒルコ殿にやっと会える日が来たのだ]

 出雲国での会議から、もう七年が過ぎ去ろうとしていた。アメノホヒは、その時にナギ王から指示された、但馬から姫川までの海上ル-トを調べ防備や連絡網に時を費やした。特に狼煙のろしの設置場所を確保するのに苦労した。

 主要三ヶ所、但馬(京都府丹後半島)、輪島(能登半島)、姫川(新潟県糸魚川付近)に各々の責任者を置き、互いの連絡がいち早く行える方々を探し求めた。

 それは、海を隔てた半島(朝鮮)の責任者〈辰韓〉からの攻撃を防御する為と、倭人が連合国を作ってこの列島(日本)を支配した時の先住民の反発を恐れた為である。

 そして、出雲から最北端の姫川までの地域に、どれだけの倭人集団と出雲国の民の集団があるのか‥?これも、各村々に寄って、そのおさ達に協力を求め、確約して寘かねばならなかった。

 まさに、五年ほどでおおよそのメドが付けられたのは、彼らが奔走して努力した結果であった。

 但馬には〈ハニヤス〉、輪島には〈ミカハヤヒ〉、姫川には〈オオトマト〉と〈イワサク〉を残して、アメノホヒはいざ、〈ヒルコ〉を八年前に見掛けたという、武蔵(むさし、関東一帯)の秩父(埼玉県)に向かおうとした。

 ヒルコを探すことは、ナギ王のたつての願いでもあったのだ。

 ところが、姫川の里で、ヒルコが飛騨の高山(岐阜県)に一年前に滞在していたことを知る人物に出会った。

 その男の話によるとヒルコは武蔵から諏訪(長野県)、安曇野(あずみの、長野県)を経て高山に来たのだと。そして、連れの女性は奥様であったと。

 アメノホヒは、少し遠回りにはなるが、ヒルコの足取りを追う為に高山に向かった。

 そこで聞いた話によると、ヒルコは熱田(あつた、名古屋市)に向かい、その後の行き先は決めていなかったということだった

。ただ、三年後には秩父に戻りたいと話していた‥、と。

 熱田からの行き先となると、四方八方掴み所が無い。淡海(おおみ、琵琶湖)を越えて出雲(島根県)に向かうか、伊賀の先の葛城から難波津(大阪市)へ行くのか。はたまた、海沿いに伊勢、熊野(三重県)から木の国(紀伊-和歌山)へ向かうのか。何処にしても〈ヒルコ〉にとっては向かいたい場所で有るはずだ。筑紫や出雲国などと比べると、まだまだ未開発の地域だと、ヒルコは考えているに違い無い。

 しかし、一年前に〈ヒルメ〉いや今は〈ヒミコ〉と名乗っていると言っていたな‥、そのヒミコ女王が

葛城(奈良)の館に移り住んで連合国を統括している

、と数ヶ月前に連絡が入っている。ヒルコもその報を受けていれば、これらの地域は、いずれ連合国の館内として開発されていくはずだ。彼にとって、無駄な努力んする事になる。

 となると‥考えられるのは、熱田から焼津(静岡県)へ向かうのが順当だ。しかしその足取りを追うより、ヒルコが秩父から高山に来た道筋を探索した方が

、秩父に行った時でも迷うことも無いかも知れない。

まだ二年ある。

 アメノホヒは、確かな情報を得る為に安曇野に向かった。

 ところが、その探索は容易では無かった。

諏訪に着く頃には情報は錯綜し、秩父へ向かって良いのか、陸奥(福島県)や常陸(ひたち、茨城県)下総(しもふさ、千葉県)かさっぱり分からなくなった。

 それは、秩父は仮住まいで、いずれ嫁の実家である白川郷(福島県)に戻るはずだ、とか、鹿島(かしま、茨城県)や香取(千葉県)では〈ヒルコ〉は神のように崇められているので

、旅が落ち着けば、その地域に安住してもらう話も出来ているとかで、この先何処へ行ってヒルコ殿を探せば良いのか‥?ホヒ(アメノホヒ)は、もう目の前にまで来て、当初の勢いを削がれさせられてしまっていた。

 おまけに、諏訪に着くまでの各村々では、ヒルコの教えで田畑が潤っていたが、一年ごとに田畑の育成は改良しなければ成り立たないのが現状であった。ホヒも出雲の〈フゲキ〉の出

でおる。見逃す訳には行かない。いくつかの村々でその手助けの為、高山を出てもう二年も過ぎてしまっていた。

 もう迷っても致し方無い。高山で聞いた[三年後には秩父に戻りたい]という話を信じて、秩父に向かったのだつた。

[ああ~~あの時、迷いに迷ったが、此処に来て良かった。〈ヒルコ殿〉の里親

オモダルとアヤカシ夫婦が

、このすぐ先の山手に住んでいる‥、と。おまけに、息子夫婦が一ヶ月ほど前に旅から帰っておられる。という話を秩父に着いた途端に聞いたのだから‥、]

 もうホヒの目から涙が出んばかりに、顔がくしゃくしゃになり、急ぎ足が駆け足に変わりそうな勢いで丘に向かった。従者達もホヒの気持ちが痛いほど分かっている。三人ともゆっくりした駆け足に成っていた。

 数件のちらほら見える茅葺きの竪穴式住居の入り口の家に尋ね、オモダル達の住まいを教えてもらった。

「御免‥!オモダル様は御出か‥!?」

大きな声でホヒは訪問を告げた。

 何事かと中でごそごそしていたが、暫くして白髪の混じった背の低い男が出て来て

「何方かな‥、」

と、目の前のホヒを見上げた。

「オモダル様‥、私じゃ。出雲のアメノホヒじゃ‥

!」

 じっとホヒを見つめながら、何かを思いだそうとする目付きになりながら、突然

「ええ‥、!あのタカムスヒ王の、ご長男のホヒ王子様ですか‥!?」

「はい。貴方に幼い頃、海辺の魚の取り方や弓矢を教えて貰ったホヒです‥、」

 すると、ガサガサっと家の中から飛び出して来て

「ええ‥、!ホヒ王子様が御出になったって‥!?」

 亭主にぶつかりそうになりながら、目の前に居る背の高いホヒの顔を見るなり跪き、泣きながら

「王子様‥、王子様‥、お久しゆう御座います」

「アヤカシ様も、ご一緒でご無事何よりです」

 オモダルは若い頃、ナギの父トコタチの重鎮であったが、トコタチが辰韓に行った後、〈フゲキ〉として

出雲の教えを全国に広める為、妻アヤカシを連れて旅立っていた。

 アヤカシは、アメノホヒ乳母(めのと、実母に代わって乳を与える婦人)

 その時、少し離れた住まいから女が出て来て、何事が起こったのか、びっくりした顔でこちらを見つめていた。

 それを見て従者の一人が

「ホヒ様‥、」

と声を掛けた。

 ホヒは、チラツと横を向いて女を見た。

 アヤカシが直ぐ様

「トヨオカビ‥、ヒルコを呼んで‥、!」

「はい‥、!

 トヨオカビも慌てて住まいに戻った。









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