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武装したオオヒルメ(天照大神)が五年前の決意を実行した。亡国寸前の〈西都原国〉を侵略同然に強奪した八代の馬韓将軍ヨンギジヨンの部下を将軍の留守に策を講じて

皆殺しにし抹殺し、ヨンギジヨンを韓国に追いやった。出雲から四年前に来たトヨウケジの努力が功を奏した



 フゲキ達の活躍の原動力は、半島(朝鮮)や大陸(中華)の進歩的な生活の知恵や田畑の育成の技術を踏まえたものだ。その為、大陸係や半島係の種族が、列島に根強く浸透している。倭人もその一部だが、ある時期から率先して、出雲国の中枢に入り込み、倭人集団としてフゲキ達をバックアップして来たのだ。そして倭人が王になった。

 ワタツミは、五年前の出雲の会議の時、ナギからスサ、ナムチ、オオヤマツと共に

[フゲキ達の使命は終わった。倭人国の強力な体制づくりに向かう]と、四人だけに告げられた。

[そして、各地域で根付いているフゲキ達の子孫を、巫女(神に仕える女性)として、その村を守らせるのだ。男子は巫女を補佐させ、その村の長(おさ、村長)に成れるよう推し進めていく。敵側につく者も出るやも知れん。構わぬ。説得出来ねば抹殺しても構わぬ。生き残った者達は保護していかねばならぬ]

 それでは、出雲国はどうなる。出雲国と共にでは無いのか。

その時、四人は暗に問うた。

[出雲国と共にでは、事は成し得ないのだ。逆に足でまといとなる。

これから、そなた達の判断で戦況に応じて、戦略を立て、戦術を皆に教え指示するように‥、!

 私は、その状況を見て動くようにする。何年かかっても良い。私達が生きている間に、確固たる列島のリ-ダ-シップを取っていなければ、この先、倭人の生きる道は無い‥、!]

 ワタツミは、その事の重大さと自分の責の重圧に、身体が震え上がってしまっていたのだった。

「オオヒルメ様には、私が先にいって、その件はお話しておく。取り敢えず今、西都原ではどうなっているのか早く知りたいのじゃ」

 フゲキ達の安否を気遣っているのでは無い。出雲国の動静で動揺するような倭人達では無い。それでもホホデミは、叔父の真意を聞きたかったが

「分かりました。私達も西都原に着きましたら、暫くは動かぬようにします」


 髪を結い上げてみずらに束ね、裾をからあげて袴とし、大きな玉を沢山緒に貫いたものを、髪や腕にまきつけ、背には矢を入れる

靫(ゆぎ、矢を入れて背負う武具)をつけ、肘には威勢のよい高鳴りする革丙(とも、弓を射る時、左の肘につける武具、弦が当たって音が発する)をつけて、剣の柄を握り締め、じっと前方の連なる山を睨み付けているオオヒルメに

「姫‥、ワタツミ様が、兵を率いて間もなく到着するとの報が入りました」

「うう-ん‥、」

じっと、前方の山々を見つめて、返事も動きも無い。

あの裾から峠を越えて、山五つを越えると八代(熊本県)だ。その地で馬韓の兵が集結していると聞く。いつ攻めて来るか。オオヒルメは、その時期がいつにならんか、その準備を自らが先頭に立って、西都原の兵の士気を高めようとしていた。

 半年前まで、当時西都原を牛耳って、有らん限りの無法を重ねていた、馬韓の武将ヨンギジヨンが八代に行って留守の隙をみて、隣国の清武村(宮崎市)クマノオシクマ王の力を借りて、ヨンギジヨンの部下六十人ほどを皆殺しにしたのだ。母や叔父や従兄弟が死に追いやられ、国の民達が多数追放されたり、王の祖父まで瀕死の状態にさらされている恨みは、計り知れ無いものがあったのだ。

しかし、八代から帰って来た無防備なヨンギジヨンだけは、倭人兵の護衛付きで、八代に送り届けた。馬韓との全面戦争を避ける為だ。

 八代には色々な人種の入り混じった大きな村が多数有り、筑紫(九州)西海地域の拠点であった。

 ヨンギジヨンの拠点である済州島(朝鮮半島南端の離島)へ戻って、再び攻め寄せるには一年近くかかるだろう。しかし、油断はならない。

 西海地域は、中華出身の子孫や中華係韓人の勢力が強い所で、倭人が筑紫の中でも一番微弱な地域でもあった。

「姫‥姫‥、!」

 ククノチが声を大きくして、再び呼んだ。

「うう~~ん‥!あい分かった。到着次第‥、此処に呼びおくように‥、」と

ククノチをカッと睨むように指示した。

 びくっと身を引きながら

「承知つかまりました」

 腰を上げ、踵を返して急ぎ足で、その場を去った。

 伝令の話では、ワタツミは高鍋の里から陸路でこちらへ向かって来るということだ。あと一時(いつとき、二時間)で西都原の境、新富村に着くはずだ‥、と。ふと後ろを振り返った。

  朝日がまだ上らぬつかの間、物静かな高台に立ったオオヒルメが、炎のように輝いて見えた。なんとその景色は、誰にも近寄れない厳かな世界に感じた。

 ククノチは、ワタツミとは少年時代からの親友だ。

 慶州からの決行の時は、同じく宇佐への漂着仲間だ。自分は宇佐から一年後、西都原のオオトノジ王の元へ来たのだ。

 まだ日が上がらぬ先から、広い大地に村人達の住まいのあちこちから煙が立ち上がり始めた。

 ほとんどが、五~六人くらい住める竪穴式の作りだが、所々に高床の建物群がちらほら見える。村人達の中でも位ある人達の住まいだ。

 広い台地の中には、水路を設けたり、環壕(かんごう、堀)で周囲と隔離した場所もある。台地の東と西の端には十メ-トルもあろうか物見櫓やぐらが立ててある。物見に上がって四方を眺めると、東の方は地平線で遮ぎらられているが、先には海が広がり、西その方は山々が連なって山裾には、段々の畑が所々に広がっている。土を耕すというより、木の実の成る木を集めた植林地域と言った方が理にかなっている。

 台地から平地に三方に広がる水田は、今、稲作の準備に取りかかっている。

 昨年の秋に収穫した稲を石カマで切った後の地株を細かくして土と混ぜ、等間隔で盛り土のように貫らしていくのだ。その作業の為、いそいそと遠く離れた場所を受け持つた村人が、ちらほら見える。夏の始まる前までには籾を咲かせ、一定の水量を貯めた畑を水田と化し、苗を植えていくのだ。梅雨時には、しっかりした根付けが成されていなければならない。少々の雨くらいで、へこたれ無いようでなければならない。


 七~八年前までは、稲の収穫は田の全面積の四割にも満たなかった。半分近くは、水田としての土壌になっていなく、まんべんなく踏み土をして、水が溜まる畑になっていなかった。それに、全体の水量不足の為に稲が育たなかったのだ。

 川が近くに流れているのだが、窪地に川の水を流し込ませたが、溜まらない。池としての土壌でない所が多いからだった。

 四年前に出雲からトヨウケジが来て、池になる地を探し求め、数ヵ所の地を溜め池として成功させた。

 それから、ほとんどの地が収穫出来るようになり、民達の生活が安定しだしたのだった。


 オオヒルメは、その潤いを利用し、民達の団結を固め、倭人達を叱咤激励して、馬韓人を追い出す策を練り、半年前に成功させたのだった。

[ワタツミが来たか‥?遅いではないか。半年前、要請が今になったか‥、!]

 しかし、それでもまだ遅くはなかった。

「オオヒルメ様‥、只今到着しました」

 ワタツミは、二人の副将ヨンソン、ヨンムを連れ、後ろ姿のオオヒルメに声をかけた。

 オオヒルメは、三時間以上もじっとその場に立詰めであった。

遠くから、その姿を見ていた村人は、遠目ながらも、山々の向こうの馬韓人達を睨み付けるようにしている勇壮な姿に、益々の信頼と慈愛を深めて行った。

 振り返り

「おお‥、ワタツミ殿、遠路よく来たのう‥、!しかし、少々遅くはないかえ‥?」

 五年振りに会う彼に、懐かしさと嬉しいたは別に、言葉はきつかった。

「はい。それが‥、」と、言い訳を話そうとしたが

「いやいや、そうではない。よく来られました。有り難く思っているのよ。取り敢えず、私の部屋でゆっくりお休み下さい。後でいろいろお話するわ」

 ククノチに

「ご案内して上げて‥、」

 勇壮な身なりから出る言葉とは思えぬ、女性の艶めかしい瞳に変わって、にっこり笑った。

「いや、遅くなって申し訳ありません。後でごゆりとお話をお伺いしたいと思います。では‥、」




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