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海に流された?連れさられた〈ヒルコ〉は立派な〈フゲキ〉となり。先々神として崇られる予兆をみる。そして、ヒルメは16才になった



「ええ、そうなんですか。私は小さい時から唐津(佐賀県)から半島へ行くのが一番と聞いていました」

「それはそうじゃが、我々の国の出雲よりも昔から往来が多かった所じゃ」

「ヒコミコ、もうそれぐらいにして,叔父上もフゲキ様達とお話が有るゆえ、館内の造りをよく調べて、先の足しにして来なさい」

「はい、分かりました父上。叔父様、又いろいろ教えて下さいね」

 父の言いつけに、ヒコミコはペロッと舌をだし、スサには礼を言って、急ぎ足で部屋を出ていった。

「ニニギ殿、良いではないか。ヒコミコももう十四才に近い年頃じゃ。自分でいろいろ考えるのには知識が大切じゃ。そなたが父親として、いつまでも子供扱いでは、大きく育たんぞ」

「ええ、分かっているのですが、幼い頃からやんちゃな子で、人の言うことを良く聞かないものですから、つい叱り口調になってしまうのです」 フゲキ達に

「皆様‥、是非宜しくお願いします‥、!」と。

「何々、ニニギ様。ヒコミコは、ああ見えてもなかなか研究熱心な子ですよ。何も案ずることはありません

「そうですよ。もう三年以上彼を見てきましたが、見るのも聞くのも、いつも珍しがって飛びつくのですがちゃんと自分で判断して、事の良し悪しを見極めていますよ」

 トヨウケジの二人目の娘、サヨリビメが弁護した。

「おおう‥、!貴女は、サルタビコ様の娘子じゃな」

 スサが驚いて横やりを入れた。

スサが八年前に筑紫に来て、宇美の里に寄った時サヨリビメは十才の旅立ちを間近に控えていた。

 その時、姪のヒルメ(後の卑弥呼)は五才になったばかりで、母のツクヨミに連れられて、宇佐から移って来ていた。

「叔父様、お久し振りです

‥、!」

 サヨリビメの方は、スサのことは良く知っている。旅立ちの時、母のトヨウケジからスサを紹介され、この男の人は母の愛人だと直感した。そして、五年の巡礼を終えて宇美の里に帰った時、スサと母のトヨウケジとの間に子供が出来ていることを知らされた。

「もう一人前のフゲキになって、又、なんと母親似で美しゆうになって‥?」

 スサは目を細めてサヨリビメに微笑んだ。

[こりゃあ‥、母親と同じで、男を狂わす面相じゃ]

「ヒコミコのこと宜しくお頼みします‥、」

 何となく、先の成り行きを匂わすように、丁重に礼をした。

「叔父様‥、安心して。うふふふ‥?」

[立派な男に仕立てておきますわ]と言っているようだ。

 全く末恐ろしいわい。スサは、ふっとトヨウケジと話しているかのような錯覚に陥っていた。

 フゲキ達は、スサの指示を受け、三日後に吉野ヶ里に向かった。


「ヒルコ様、もうそろそろ出雲に帰られたらどうなの‥?」

 三っの時、出雲からハニヤマ、ワクムスヒ夫婦に連れ去られて、三十年が過ぎようとしている。夫婦は、ヒルコが十才に成るまて、自分達の子のように大事に育てた。

 しかし、越後の佐渡(新潟県)に居た頃、出雲系の倭人でアヤカシ、オモダルという夫婦にヒルコを受け渡さなければならなかった。アヤカシは、ナミがお産の時にヒルコを取り上げた産婆の妹だったのである

 勿論、オモダル、アヤカシ夫婦は、ヒルコが七年前に海に流された事は、噂で知っていた。

 ところが、同じくフゲキとして巡礼していた顔見知りのは、ワクムスヒ夫婦が、子供を連れていたのを不思議に思い尋ねたところ、事の事情を打ち明けられ、結局、自分達が預かった方が、ヒルコの将来の為に成ろうと言うことで引き受けたのであつた。

 その頃、ナギナミ夫婦は、出雲を去り朝鮮の慶州に行ったまま、出雲にいずれ帰って来るやも分からぬ状況だったのである。

 ハニヤマ、ワクムスヒ夫婦は、当時の出雲国人の倭人に対する警戒意識が高まるのに乗じて、ヒルコを連れ去った事を、ヒルコが成長するにつれ、夫婦で思い悩んでいたのだった。

 夫婦は、出雲に帰るに帰れず、佐渡で田畑の改良に務めながら、一生を送ることになってしまった。

 オモダル、アヤカシ夫婦は、ヒルコを倭人の子として、出雲国の教えを学ばせる為、東北の地を行脚し、各地域に稲作や畑の便宜を手助けして回っていたのだつた。


 三年前、陸奥白川郷(むつしらかわごう、福島県)のおさの娘、トヨオカビを娶り、この武蔵(むさし、埼玉県川越)の国までたどり着いた時だった。

 トヨオカビは、ヒルコの父である倭人の泣きが、出雲国の王になったと聞いて、もう遠慮することなく出雲に一度帰って、父母に会い安心させたらどうか、と思っていたので,思い切って勧めてみた。

「いや、もう出雲には戻れんだろう。幼い頃。私をどういう積もりで連れ去ったかは分からんが、ハニヤマ、ワクムスヒ夫婦は、私を大事に育ててくれたんだ。私が帰れば、彼らの親族や先の王のタカムスヒ様にも迷惑がかかるし、出雲先住の人達と倭人との諍いが起こってしまうだろう。今の父と母、オモダルとアヤカシ様もそうおっしゃっていたではないか」

とヒルコは、トヨオカビに言って聞かせた。

「でも,このままでは貴方様が可哀想すぎますわ。一生親に会えないなんて‥?

「そんな事はない。私を大事に育ててくれた、ハニヤマ、ワクムスヒ、オモダル、アヤカシという二組は親を持って幸せだと思っているよ」

「‥!?‥、」

 トヨオカビは、何と優しいお人なんだろうと,呆気に取られながらも感心してしまっていた。

「それより、陸奥の八戸から陸づたいに東の大海(太平洋)を下って東北の村むらを見て回ったが、何と厳しい地域だろう。そなたの村にたどり着いた時ほっとしたよ」

「父が言っていたわ。私達の先祖は、大海(太平洋)の中の島々(ハワイ諸島から八丈島)からこの列島(日本)に移り住んで、或る部族は南へ移動し、私達の先祖は北へ移動して,ある時期からようやく定着出来るようになったと聞いたわ。房総(ぼうそう、千葉)から常陸(ひたち、茨城)を経て陸奥(むつ、福島)に入ったものの、この白川郷より先は進めなかった‥、と」

[その頃、東京都内は海の中]

「そう私も聞いたが、何とかあの地域の手助けする方法は無いものかと、いろいろ考えてやってみたが、今の私の力ではどうしようもない所だな‥、」

「そうね‥、貴方が寄った頃は、十年前の大波(津波)の被害がまだまだ復旧出来ていなかった筈だから、手の施しようが無かったでしようね」

「そうだったよ。私が寄った村で聞いた話だが、村ごと人も田畑も竪穴式住居の屋根も海に流された所が、数多くあつたそうだ。かろうじて生き延びた人達が精を出して頑張っていたが、先行きは不安だろうね」

「大海が荒れたら住めない地域ですわ‥、」

「それはそうかも知れないが、海は魚が豊富だし、山には食材に成る草や木の実が豊富な地域なのだがなあ‥、今迄でも,かなり高所での住まいを心掛けていたらしいけど,想像もつかない大波が襲って来るらしいのだ‥、!」

「田畑がなければ、定住は出来ないでしょう」

「う~~ん‥それはそうだが‥、」

 答えが、すべて為すすべが無い自分を責めているようである。

 トヨオカビは考え込んでいるヒルコを見て

[何故この人は、そこまで、人のことばかり心配しているのか‥?と不思議がった。でも父は、こんな人を見て、私を嫁がせたのだわ。一所ひとところに落ち着く気もなく、この列島中を歩き回って人助けをしているこの人に、何故父は私を押し付けたのかしら]


「貴方がご自分のことを考えても、決して人の道を誤っているとは、誰も言わないわよ」

 もう少しだけでも、普通の生き方、幸せを考えてくれても良いのではないか。私も願いも少しは考えてくれてもいいのではないか。

トヨオカビは、ふつとヒルコに誘い掛けてみた。

「私は小さい時から、恵まれた出雲のことを幼いながら記憶していた事を思い出し、この列島のどこの地域もそうなって欲しい、安定した生活が送れるようになって欲しい。その為には、自分が出来る限りの手助けをして行きたい‥、そう思って生きて来たのだよ。決して不幸ではないよ」

「でも貴方一人で、いや、出雲の人達だけでこの列島を助けられる、という訳ではないのでしよう」

「勿論そうだが、大きな目的は、この列島の人達が、一つの大きな国づくりをしていく為のいしずえを、今やって行かなければならない。ということを、ただ、出雲の人達が一番早く、それに気づいということだけだよ」

「貴方はその一人なのね‥、いえ、私も含めた‥、!」

 トヨオカビは、ヒルコが余りにもとてつもないことを考えているので、自分が巻き込まれていくのを不安に感じ、様子を窺ってみた

「うん、そうなんだ。例え倭族がこの列島のリ-ダ-となっても、この列島の先住の人達が、虐げ(しいたげ)られないよう、生活の知恵を身につけるのも大きなことなんだ。

田畑の改良を勧めて、成功した時の村の人達の喜びの顔を見ると,本当に生まれて来て良かった。と何度も味わさせてもらったよ。ところが、先住の部族間どうしだけの生活の安定だけを頼りにしていれば、他の世界から来た優れた種族が、技術や文化を持っていれば、いづれかは自分達の生活を壊されてしまうんだ‥、」

 自分の村もそう成るのかしら‥?とトヨオカビは、ヒルコの熱意に押されていた。

「しかし、いろんな人達を見てきたが‥そなた達やこの武蔵の人達と西の大海(

日本海)の人達とは、大変違っているようにね‥」

「何が‥?」

「いや、貴女の父上もそうだが、男の人達は彫りが深くて毛深く、身体もがっちりしている人が多かったな‥、」

「そりゃあそうだわ。貴方もそのようだし、西の大海の人達は皆、寒い所からの人達だもの」

「ということは、西の大海の人のと東の大海の人達の先祖が違うと言うことか‥?」

「そうだと思うわ。年に一度、あの陸奥(青森)三内円山の大きな村から、私達の村へ来た人達も、貴方に似て細っそりしていたもの」

「ええ!そなたの村に年に一度来ていたのか。私は五年前に、その国で稲作を手助けして喜んでもらったんだ」

「そう‥?そうなの‥、それで私の父は貴方が私の村へ来た時には、もう、私を貴方に嫁がせようと必死だったもの‥、」

「ほほう‥、そういうことか。オモダル、アヤカシ夫婦‥いや父母が私に嫁を貰うように、説得しようと大変だったのは‥?」

「貴方は反対していたのね

‥、!」

「そりゃあそうさ。落ち着いて生活出来ないでいる私に、嫁など持てる訳がないだろうに」

「では、何故、今、私が此処に居るの‥、!」

 トヨオカビは、ヒルコを思いっきり困らせようと、笑いを抑えて詰問した。

「いやいや、それは嫁に成ると言う首長の娘さんが、私の生き様に感心を持っていて、是非一緒に旅に出たいと言っている‥と聞いたから‥、」

 ヒルコはたじたじになり、やはり、考えが甘かったかな。嫁を気楽に貰ったのは‥、と反省しだした。

 この三年間何も言わなかったのに、何故、今頃になって反発して来るのだろう。そろそろ、この生活に飽きが来た頃かな。今まで子供が出来なかったのは、

トヨオカビの意思からだったが‥、やはりそうか。様子を見ていたのだ。

 ヒルコなりに、自分の目標の実践や思惑とは遠い、実生活の厳しさを味わう羽目となった。

 じつとヒルコの狼狽えるうろたえるさまを見てトヨオカビはくすっと笑った。

「何が可笑しいのかね‥?貴女は‥、」

 ヒルコは、めったにない自分の慌てぶりに、嫁が面白がつているのを、思いっきり腹が立っているんだ!

という言葉を返した。

「いいえ~なにも~~」

 まだ、トヨオカビは緩め無い」

「やはり、貴女は私に嫁いだことを悔やんでいるのだね‥、」

「なんで‥?」

「そうじゃないか。嫁を貰う資格もない私が、嫁を貰ったのだから」

「そうかしら。貴方先ほど言ったじゃない。貴方の生き様に感心した娘がいると

‥、!」

「いいや、そう聞いただけで、貴女に直接聞いた訳ではないので,自信はなかった」

「でも,もう三年もご一緒よ‥、!」

「う~~ん‥そうだね‥!」

 トヨオカビの瞳がキラッとヒルコの目を盗んだ。愛する人への潤いの眼差しを

、まともに受け、ヒルコは

ビクッと身震いし、安心したように、ひしつとトヨオカビを抱き寄せた。


 「あら‥、叔父様‥!ワタツミの叔父様でしょう!!」

 日向の美々津(宮崎)の船着き場で、武装した十隻ほどの船団から、降りてくる兵士達の陣頭で指揮していたおさらしき人を見かけ、ヒルメは、懐かしさの余り、思わず人目もはばからず、駆けよって声を掛けた。

「ええ‥!?」

振り返った武将は、見たことも無い、美しい女性に声を掛けられ、後の言葉が出ず。呆然と彼女を見つめた。

 フゲキの装束姿が、今まさに天から降りた天女のように見えた。

「ヒルメです。ナムチの娘のヒルメです。お久し振りです!」

「ええ‥、!ヒルメ様。ナムチ様の姫のヒルメ様ですか‥!?なんと美しゆうご立派に成られて‥、」

又しても声が出ない。もう十年以上にもなろうか。あの時はまだ四、五才だったはず。その子今、自分の目の前に居る。

 半島の慶州からこの列島(日本)へ、ナギ様と郷里に移住を決行した時ナムチ様と私達五隻は潮に流され、行き先の出雲から遠く離れた筑紫の宇佐へ漂流し渡った。

 ナムチ様は、宇佐の国の王ミナカミヌシ様の孫娘のツクヨミ様を娶られ、可愛いい姫様を授かった。その時の子が、今私の目の前にいるのか‥、!ワタツミは、懐かしさの余り思いっきり抱き寄せたかったが、さすがに、それは思いとどまった。

 ナムチ様は、子が生まれるとすぐ、又旅に出られた。私は、ナムチ様に頼まれ、ずっと母子を見守っていた。

 奥様のツクヨミ様が、出雲の筑紫の本拠地宇美の里に姫様を連れて宇佐を離れられた。ヒルメ様は、もう四、五才になっていた。

あの時以来と言うことになる。

「姫様‥、どうして私のことがすぐ分かつたのですか‥?」

「当然でしよう。ずっと小さい頃はワタツミ様が私の父だと思っていたもの‥、忘れる訳がないでしょう。ねえ~~お父様‥、!」

「いえ、とんでもない‥、もう姫様私をからかって‥

‥?でもまあ‥大きくなられて、こんな美しゆうご立派に成られ‥、!」

 ワタツミは、自分の娘が成長したように、涙ぐんでしまった。


「おお~~おう‥!?ナムチ様のお姫様じゃと‥!」

周りで口々に騒ぎ出した。昔、ナムチとワタツミと一緒に宇佐にまで来た仲間達も何人かいた。

 船から降りた時から、美しい二人連れの女性が、こちらの様子を伺っているのを、兵士達は気にしてそわそわしていたが、その一人がナムチの娘と聞き、驚きと嬉しさの余り、歓喜のどよめきとなったのだ。

「皆の者、此処に居られるのは、あのナムチ様の姫、ヒルメ様じゃ‥、!これから先、良く見守っておくように‥!!」

「おおう‥、!?」と歓声が湧く。



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