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ほんとうはこわい異世界転移  作者: 紫苑 翠
2/11

#2 異世界転移、はじめの一歩! 踏み出す大地がありません!

 仮称女神様からいくつかの注意を受けた俺は、早速新たな世界へと旅立つことになった。

 うーん、おらワクワクすっぞ。


 残念ながらチートは貰えなかったけど。

 ダメ元でいくつか提案したチートだけど、いずれも世界のバランスを壊しちゃうからダメなんだって。

 ちょっと残念だけど、まあ異世界転移だけでもありがたいからね。

 欲をかくとロクなことにならない。テンプレ大事。


『では、新たな世界での活躍を期待していますよ』


 女神様、いろいろとありがとうございます。

 救われた命で、異世界生活を満喫したいと思います。


 そこまで考えたところで、俺の意識はすうっ……と何かに吸い込まれるように……。



 ◇



 目が覚めた。ぱっちりと。


 一瞬見えたのは、漆黒の闇の中、点のような僅かな明かりが無数に。


 お、夜空かな? と思った瞬間。

 俺の全身が引き裂かれるような感触。

 ぐおおお! めっちゃ痛ぇ! 死ぬー!?


 そのまま、俺の意識は爆散した。



 ◇



 気が付くと、再び真っ白い空間に戻っていた。

 え、何? なにが起きたの?

 もしかして、お試しで一瞬だけ異世界が見えた感じ? お星さましか見えなかったけど。


『おや、もう死んでしまったのですか、第三界の方? いくら何でも早くありませんか?』


 はい?

 死んで戻ってきたっていうこと?

 まだ何もしてないんですけど?


『では、状況把握のため映像を再生してみましょう』


 ビデオ判定付きかよ! とか突っ込みそうになったのを辛うじて回避。

 いや、思考を読まれてるんだから無駄なんだろうけど。

 女神様なんだから何でもあり、いいと思います。

 うん。いきなりトラブル発生なんだから、ここは謙虚に行こう。


 真っ白い世界に枠らしきものが浮かび上がったと思ったら、そこに映像が再生され始めた。

 おー、フレームレスの大画面8KTVみたい。贅沢だね。

 これで映画を見てみたいぜ。


 いや、そうじゃないだろ。

 何が起きたのかをしっかりと見極めなくては。

 もし何かやらかしちゃってたなら、同じ間違いはしないように気を付けないとね。

 ぼんやり仕事してるとクソ上司のキレ芸の餌食にされちまうからな。

 社畜の処世術をなめんなよ。


 まず映し出されたのは、満天の夜空。

 改めて見ると、星がはっきりクッキリと見えるね。異世界の夜空って感じ?


 そこにビカビカッと光が発生して、俺、登場。おおっ、なんか恰好いいぞ!

 っていうか、あれ? 地面はどこ? 空に浮いてるの?


 そして、光が収まった次の瞬間、俺のニューボディーはボコッと無様に膨れあがり、そのまま破裂した。

 はっきり言ってグロい。みせられないよ! のマークが欲しいところだ。


『なるほど。第三界の物理体は、宇宙空間には耐えられないのですね』

 ポン、と手を打つような音も響いてきた。


 おーなるほど、宇宙だったのかー。


 って、ちょっと待てい。

 宇宙に放り込むとか、殺る気マンマンじゃないですか!

 膨れ上がって破裂したのは、身体の内圧のせいだったのね。


 地球の大気圧に対抗するために、身体は膨らもうとする力を持っている。

 ちょうど釣り合うのが、いわゆる一気圧っていう地表の大気圧だな。

 これが、例えば深海に素潜りしたら圧力に耐えられずに圧殺されるし、宇宙なんかの真空空間に放り出されたら圧力を押さえてもらえなくなって破裂する。


 俺はFラン卒だけど、こういうのはくわしいんだ。未知の世界は読んでて楽しいからな。

 細かい理屈は正直わからんけど、雰囲気が判ればオッケーだ。

 ちなみに、実際に宇宙空間に放り出された場合は、他にも極度の低温により一瞬で凍り付くとか、太陽光線を直に浴びて一瞬で黒焦げになるなんてのもあるらしい。

 仮に肉体が生存できたとしても、酸素が無いとすぐに意識を失ってオシマイらしいし。

 怖いね宇宙空間。


『行き先の星系を選べるようにと宇宙空間に転移させたのですが、どうやら無駄になりましたね』


 うっ。

 善意だったんですね。

 それなら仕方ない、かな?


『全く、脆いにも程があります。そんな貧弱な物理体では転移先を厳選しなくてはならないじゃありませんか。ああ面倒くさい……』


 女神様、聞こえております。

 選べるようにじゃなくて、面倒くさかったからが本音なんですね。

 そもそも、仮に宇宙空間で生存できたとしても移動手段がありません。大地の上でお願いします。


『……コホン。仕方ありません、第三界の方が居住していた世界と似たようなところへ送り届けることにしましょう』


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